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「ゼロトラストを検討せよ」と言われたら第 3 回:グランドデザインはどう描く?
ゼロトラストブログ vol. 21

「ゼロトラストを検討せよ」と言われたら
第 3 回:グランドデザインはどう描く?

2025 1/8
お客さまへKDDIのゼロトラスト導入事例をご紹介する際や、ITインフラのコンサルティング依頼をいただく際、お客さまから「ゼロトラストを導入したいがどのように検討を進めればよいか分からない」「ゼロトラストを導入中だが今の進め方で問題ないのか自信がない」といったご相談をいただくことがあります。本記事では、ゼロトラストの検討・対応を進めていく際、何から取り組めばよいか、進め方の一例をゼロトラスト推進部の茶木が会話形式でご紹介します。今回は「グランドデザイン作成(構想策定)編」です。
本記事をご覧いただくことで、ゼロトラストを検討する際の一助となれば幸いです。

登場人物紹介

グランドデザイン作成 (構想策定) は必要?

Aさん先日実施したKDDIの『ゼロトラスト成熟度アセスメント』によって、ゼロトラストの考え方に基づいたサイバーセキュリティリスク現状評価ができ、対策のおおまかな優先度実施後効果が分かりましたね。

B課長:『ゼロトラスト成熟度アセスメント』の結果をC部長報告し、当社サイバーセキュリティリスクについてご理解いただいたよ。
特に、ランサムウェア感染経路の8割がVPN機器リモートデスクトップ (注1) で、リモートワーク利用しているVPN機器脆弱性が狙われる点は、優先して対策必要だとおっしゃっていたね。

ただ、ゼロトラスト移行の取り組みに関する社内稟議はC部長から却下されてしまってね。C部長から「当社において、なぜゼロトラスト移行必要であるかの理由当社事情を鑑みた優先順位整理サイバーセキュリティリスク観点だけでなく利便性コスト観点でも検討必要」とご指摘いただいたよ。

Aさん:なるほど。
ゼロトラスト移行というとサイバーセキュリティ観点のみを考えてしまいがちですが、利便性等にも視野を広げた検討必要なのですね。

B課長経営層訴求するうえで「現場視点による課題解決策検討はもちろん、経営視点として経営方針やIT戦略に紐づけた検討必要」ともおっしゃっていたね。

また、稟議申請においては、今後も踏まえた投資である旨の説明必要だね。今後ロードマップと併せて、複数年度にまたがるゼロトラスト移行超概算提示したいかな。今後検討方法について、何かアイデアはあるかな?

Aさん:『ゼロトラスト成熟度アセスメント』の結果報告会でも、無駄投資手戻りが発生するリスク軽減回避するためにも、今後見据えて検討し、ありたい姿・グランドデザイン策定すべきアドバイスがありました。

IPA  (情報処理推進機構) の『ゼロトラスト移行のすゝめ』(注2) の、ゼロトラスト構成移行するための全体的な流れにあるように、ゼロトラスト導入後のあるべき姿を定め、そこに向けて対応するべく、「グランドデザイン作成 (構想策定)」を進めるのはいかがでしょうか。

[図 2-1 ゼロトラスト構成へ移行するための全体的な流れ] Phase1:As-is分析 ありたい姿の検討、Phase2:グランドデザイン作成、Phase3:投資判断、Phase4:環境構築、Phase5:検証・改善

B課長:そうだね、次のステップとして、グランドデザイン作成  (構想策定)  を実施しよう。稟議のためだけでなく、今後我々が進めるうえでもロードマップ策定しなくてはね。
ゼロトラスト移行は、我々情報システム部以外も巻き込んでいって、関係者間共通認識醸成する必要があるからね。

Aさん:おっしゃるとおりですね。
KDDIの『ゼロトラスト成熟度アセスメント』で簡易ロードマップ提示されましたが、我々情報システム部以外関連部署も巻き込んで検討を行い、サイバーセキュリティ以外課題加味した形で更新していきたいと思います。

グランドデザイン作成 (構想策定) はどう描く?

B課長先週、次のステップとしてグランドデザイン作成 (構想策定) 実施することになったけれど、その後の進捗はどうかな?自社で進められそうかな?

Aさん:『ゼロトラスト成熟度アセスメント』で提示された簡易ロードマップ参考に、社内でも整理を試みたのですが、ゼロトラスト移行ネットワークセキュリティ運用といった複数領域にまたがり、また1つのソリューション導入すれば実現できるものではないため、担当者間意見が割れたり、自身担当範囲のみ検討を進める方がいたり、うまく話がまとまらず悩んでおります。

B課長:それは困ったね。社内対応しきれないのであれば外部コンサルティングサービス検討しようか。
提案ありきの恣意的コンサルティングは避けたいけれど、よいサービスはあるかな?

Aさん外部コンサルティングサービス検討ですね。特定ソリューション提案限定されないサービス検討するのであれば、KDDIの『次期ITインフラ構想策定 (コンサルティングサービス)』(注3) がよいのではないかと考えています。

先日KDDIに、ゼロトラスト全社導入した自社事例 (※外部サイトに遷移します)紹介してもらいましたが、KDDIはゼロトラスト移行グランドデザイン作成構想策定)の実績や、国内外のさまざまな業種に対するゼロトラスト導入実績多数あるようです。

ネットワークデバイス、ID、セキュリティソリューションから運用まで、さまざまなプロダクトサービス一気通貫で扱っているため、ゼロトラスト移行におけるナレッジも聞きやすいかと思います。

B課長特定ソリューション限定されないコンサルティングはよいね。ソリューションベンダーコンサルティング具体的でよいのだけれど、まずは、フラット視点コンサルティングしてほしいからね。
KDDIの『次期ITインフラ構想策定 (コンサルティングサービス) 』は、どういったサービスなのかな?

Aさん:IT環境全体見直し、目指す姿を見据えた具体的構想策定 (グランドデザイン作成) を支援しているようです。
現状ネットワーク構成課題整理する現状把握フェーズ施策やTo-Be像、ロードマップといったグランドデザイン策定する構想策定フェーズに分かれ、最終的には、検討結果構想策定書の形で取りまとめるとのことです。


『次期ITインフラ構想策定 (コンサルティングサービス) 』の流れ

現状把握フェーズ

構想策定フェーズ


B課長実施期間はどのくらいかかるのかな。

Aさん:3~6カ月程度標準的なようですが、検討対象とするスコープ検討する粒度で変わり、こちらの要望に応じて柔軟対応可能なようです。
我々は、すでにゼロトラスト勉強会、『ゼロトラスト成熟度アセスメント』を実施済みなので、3カ月で実施できればと考えています。

B課長:3カ月であれば、次年度予算化までに間に合うのでよいね。早速、KDDIに提案してもらおう。
コンサルティングにあたっては、我々情報システム部の管轄であるネットワークデバイスセキュリティ以外に、コミュニケーションツール所管している総務部参加必要かな。
該当する課題施策検討時に入ってもらうよう調整しておくよ。

Aさん:ありがとうございます。
それでは、私からKDDIに対して、我々の要望を伝え、『次期ITインフラ構想策定 (コンサルティングサービス)』の提案依頼しておきます。

グランドデザイン作成 (構想策定) のその後

Aさん:KDDIによる『次期ITインフラ構想策定 (コンサルティングサービス)』を終えて、課題に対する施策や、目指すべきTo-Be像、優先度加味したロードマップ整理できました。

よかった点をまとめると次の3点が挙げられます。

ノウハウに基づいた課題整理

KDDIのノウハウに基づき、他企業から収集された一般課題を踏まえて課題インタビューされたため、我々で把握済みの課題以外にも、検討すべき課題整理できました。

中期経営計画外部環境変化トレンド・技術動向をふまえたコンセプト

現場目線課題だけではなく、中期経営計画と紐づけたコンセプト定義され、我々が一丸となって目指すべき、次期ITインフラ方針認識合わせができました。
コンセプト外部環境変化トレンド・技術動向もふまえた検討であったため、経営層向けの説得力も増したと考えます。

施策優先度自社固有事情段階的展開考慮されたロードマップ

施策優先度定性定量的評価するだけでなく、当社固有事情ソリューションごとの依存関係、PoC・段階的展開加味されたロードマップ策定され、現実的ロードマップとなりました。

B課長目指すべき姿・方針全体の流れが整理関係者間共通認識醸成できたね。
いったん、構想策定 (グランドデザイン作成プロジェクトとしては完了したけれど、今後、RFPの各社回答結果や、関係各部署要員作業計画加味して、継続的ブラッシュアップしていこう。

Aさん継続的見直し・改善する旨、承知しました。今後に向けて、まず何から対応すればよいでしょうか?

B課長:まずはC部長から指摘があった社内稟議について、経営層意識した再整理必要だね。利用者管理者目線課題施策整理や、経営層説得する材料 (注4)提示されたから、この構想策定書を基に、経営層向けの稟議資料作成しよう。

社内稟議が通り次第各社次年度対応分に向けたRFPを発出したいから、社内稟議並行してRFP発出に向けた整理もしようか。構想策定書がRFPのインプットとなると思うけれど、細かな要件については整理しておいてくれるかな。

Aさん承知しました。ロードマップにて次年度対応整理された優先度の高い施策について、RFPの準備に取り掛かります。

グランドデザイン作成 (構想策定) の重要なポイント

ゼロトラスト検討を進めるにあたり、グランドデザイン作成 (構想策定) のイメージは湧いてきましたか?
続いて、グランドデザイン作成 (構想策定) を進める中で特に重要ポイントを2点ご紹介します。

1. ゼロトラスト移行にあたり、グランドデザイン作成 (構想策定) を実施すべき

ゼロトラスト移行は、以下の理由からグランドデザイン作成 (構想策定) したうえで進める必要があります。


  • 経営戦略・IT戦略と紐づけたゼロトラスト移行の目的整理
    ゼロトラスト移行はサイバーセキュリティ強化の手段であり、目的ではありません。なんのためにゼロトラストへ移行するのか、サイバーセキュリティ強化にとどまらず、ビジネスを下支えするITインフラとして、IT戦略、ひいては経営戦略との関連付けが重要です。例えば、リモートワークを可能・快適に行う働き方改革、M&A・海外含めた拠点改廃を柔軟に迅速に対応可能とする、ITインフラやセキュリティの管理・運用負荷を軽減し社内IT人材がビジネスDXへシフトする、といった観点で関連付けされます。
  • 単年度ではなく先を見据えた検討を実施
    ゼロトラストは単一のソリューションで実現とはならず、多くの場合、複数年度にわたり段階的に移行していくこととなります。無駄な投資や手戻りが発生するリスクを軽減・回避するため、単年度ではなく先を見据えた検討をする必要があります。
  • 関係者間で共通認識を醸成
    ゼロトラスト移行は複数の部署にまたがった対応となり得るため、関係者間で共通認識を醸成する必要があります。複数部署にまたがった関係者と、複数年度にわたり関係者が一丸となって取り組むためには、複雑なゼロトラスト・ジャーニーを歩む道標、共通の地図・指針が必要です。

2. グランドデザイン作成 (構想策定) プロジェクトの目的・ゴールを明確にすべき

ゼロトラスト移行において、グランドデザイン作成 (構想策定) は重要である一方、対象範囲を広げすぎて検討が進まない、具体化・詳細化にこだわりすぎて全体感が整理できなかった、抽象的すぎて次のアクションがとれずグランドデザイン作成 (構想策定) した時点で止まってしまうといった事態に陥らないように、グランドデザイン作成 (構想策定) プロジェクトの目的・ゴールを明確にする必要があります。
グランドデザイン作成 (構想策定)プロジェクトの目的・ゴールを明確にすることで、例えば、以下が決定できます。


  • 社内関係部署をどの程度ひろげるか
  • プロジェクト終了後、いつまでにどういったアクションをとるのか
  • 社内の検討体制、かけるべき期間・コスト、社外へ依頼する場合の業者選定基準をどうするか
  • 検討対象 (スコープ) として、海外やグループ会社を含めるべきか、領域としてネットワーク、ID、デバイス、クラウド基盤、運用アウトソースなど、どこまでを検討対象とするか
  • 検討のレベル感 (自身の担当範囲に傾注し、各論の議論に終始してしまう事態や、反対に、構想を描いたものの実現性がなく、要件定義以降のフェーズに移れないといった事態を防ぐ)

グランドデザイン作成 (構想策定プロジェクト目的・ゴール明確にできない場合は、グランドデザイン作成 (構想策定) の前に、ベンダー主催勉強会ディスカッションワークショップ形式検討会から取り組み始めることも一考余地があります。

最後に

ゼロトラスト移行を含め、ITインフラサイバーセキュリティ強化次期ITインフラ検討する際には、KDDIの『次期ITインフラ構想策定 (コンサルティングサービス) 』を利用することで、IT環境全体見直し、目指す姿を見据えて、具体的グランドデザイン作成 (構想策定) を行うことが可能です。

また、グランドデザイン作成 (構想策定) の次ステップとして、お客さま社内上申資料のご支援や、RFP作成のご支援可能です。ゼロトラストをこれから検討される方、今の進め方に不安を抱えられている方など、何かお困りごとがあるお客さまは、弊社までお声がけください。

全3回でお送りした『「ゼロトラスト検討せよ」と言われたら』は今回最終回です。
詳細解説よりも、分かりやすさやイメージのしやすさを心掛けましたが、みなさまのゼロトラスト検討する際の一助となれば幸いです。

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執筆者プロフィール

茶木 隆輔 (ちゃき りゅうすけ) [関連する保有資格:CISSP (注5)、CCSP (注6)]
アプリケーション開発、サーバー構築など幅広くIT・サイバーセキュリティ関連業務に従事後、2022年3月にKDDIへ入社。現在は、ITインフラの構想支援やゼロトラスト導入に関するコンサルティング業務、セキュリティのアセスメントサービスの企画・実施業務を担当。大手総合電機メーカー、大手専門商社等、業界問わずITインフラのコンサルティングを実施。
  • 注5) CISSP (Certified Information Systems Security Professional)
  • 注6) CCSP (Certified Cloud Security Professional)

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