※ 記事制作時の情報です。
BCPを理解することで、災害時に企業が取るべき行動が明確になります。まずは、
から詳しく解説していきます。
BCPの目的は、災害が起きても重要な業務をできるだけ止めず、迅速に再開できるように備えておくことです。被害を完全に避けることは難しくても、事業を続けられる体制を整えることで、大きな混乱を避けられます。まず守るべきは従業員の安全であり、安全確保のうえで必要な要員や拠点を確保し、業務を続ける仕組みを準備します。また、取引先や顧客への影響を抑えることもBCPの大切な役割です。サービスが長期間止まると信頼低下につながり、社会全体の活動にも影響がおよびます。BCPは事業継続のみならず、従業員や顧客、そして地域社会を守るための計画でもあり、平常時から整えておくことで非常時の行動がスムーズになります。
BCPは、防災計画やBCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)とは目的や対象が異なります。防災計画は、建物の耐震化や避難方法など、主に人命を守るための準備に重点があり、BCPは事業を継続するための手段に重点が置かれた計画です。
さらにBCPを継続的に運用する仕組みがBCMで、BCPで計画を示し、BCMで運用・改善プロセスを行います。
| 防災計画 | BCP | BCM | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 人命・設備の被害低減 | 重要業務の継続と早期復旧 | BCPの運用・改善 |
| 対象 | 人・建物・設備 | 事業全体・業務プロセス | 組織全体の管理体制 |
| 範囲 | 物理的・安全面中心 | 経営・業務・体制 | 組織運営・改善 |
BCPを策定する必要性は大きく3つあります。
BCPは企業を守るだけでなく、社会全体の回復力強化にも貢献します。
関連サービス: 副回線サービス
関連サービス: IoT向け冗長化ソリューション
BCPは作成して終わりではありません。次のステップを体系的に進めることで、実効性の高いBCPを構築できます。
BCP策定の最初のステップは、経営層が中心となって基本方針を決めることです。災害時に企業として何を守り、どこまで事業を継続するのかを明確にすることで、判断基準が統一されます。基本方針には、対象とするリスク、優先すべき重要業務、従業員の安全確保の方針、復旧目標時間(RTO)の考え方などを含めます。
まず、自社の事業に影響を与える可能性のある災害を洗い出し、それぞれのリスクの大きさを評価します。例えば、地震の発生頻度が高い地域であれば耐震性の確保を重視し、豪雨被害が多い地域であれば浸水対策を優先するといった判断が必要です。
さらに、経営層が主体となってBCPの重要性を社内に発信することで、従業員が一体となって取り組む土台が生まれます。
事業影響度分析(BIA)は、BCPの精度を大きく左右する重要なプロセスです。災害が起きたとき、どの業務が止まると企業に深刻な影響が出るのかを明らかにし、優先順位をつけるために行います。まずは社内の業務をすべて書き出し、それぞれが停止した際の影響を「売上」「法令順守」「顧客対応」「ブランドイメージ」といった視点で評価します。
例えば、受注業務や顧客サポートは停止するとすぐに影響が表れるため優先度が高くなります。一方、短時間であれば停止しても致命的な影響が少ない業務も存在します。
さらに、業務がどれだけの時間停止しても許容できるのか(許容停止時間)も設定します。これにより、限られた資源をどの業務に優先的に割り当てるべきかが明確になります。分析を丁寧に行うことで、災害時に守るべき業務がはっきりし、BCP全体がより現実的で実効性のあるものになります。
重要業務が整理できたら、自社が直面する災害リスクを具体的に洗い出します。自治体が公開するハザードマップは非常に有効で、地震・浸水・土砂災害・火災など、どの災害が自社の所在地に影響しやすいのかを把握できます。自社だけでなく、主要取引先や物流拠点、仕入れ先などについても確認すると、サプライチェーン全体の弱点が見えてきます。
次に、災害が起きた場合に重要業務へどのような影響が生じるかを想定します。例えば、地震でオフィスが使えなくなれば在宅勤務に切り替える方法を考える必要がありますし、浸水が起きればサーバーや機器の破損によって業務が全面停止するおそれがあります。
こうした具体的な想定を行うことで、災害ごとに備えるべき対策がはっきりし、BCPの実効性が高まります。
災害時に重要業務を止めないためには、あらかじめ代替手段を用意しておく必要があります。まず、オフィスが使用できない事態を想定し、サテライトオフィスや別地域の事務所など代替拠点を検討します。同時に、特定の担当者が出社できないケースに備え、業務を複数人で引き継げる仕組みを作っておくことも大切です。
ITシステムについては、クラウドサービスの利用や日ごろからのデータバックアップによって復旧スピードを大きく高められます。
さらに、「目標復旧時間(RTO)」の設定も欠かせません。RTOとは「業務を何時間以内に再開する必要があるか」を示す指標で、BIAでの分析結果をもとに定めます。短時間で再開が必要な業務ほど、代替策やバックアップ体制を手厚く整える必要があります。
BCPを実際に機能させるには、緊急時に誰が何を判断し、どのように対応するかを明確にする運用体制が必要です。まず、災害発生時の指揮命令系統を定め、トップから現場担当者までの役割を整理します。次に、全従業員に確実に情報を伝えるため、緊急連絡網や安否確認の手段を整えておくことが欠かせません。
さらに、通信手段の確保も重要です。大規模災害では、通常回線が使えなくなる可能性があります。そのため、衛星通信サービス「スターリンク」の活用や、副回線サービス、IoTを活用した機器の冗長化ソリューションを組み合わせることで、通信断のリスクを大きく減らせます。
また、これらの仕組みを整えることで、災害時の混乱を最小限に抑え、迅速にBCPを発動できる運用体制を構築できます。
BCPは作成しただけでは意味がありません。実際に使える計画にするためには、定期的な訓練と教育が必要です。まず、計画内容を机上で確認する「机上訓練(テーブルトップ演習)」を実施し、災害シナリオに沿って各担当者の行動を確認します。これにより、役割分担の不明点や改善点を発見できます。
次に、より実践的な「総合訓練」を行います。避難訓練や代替拠点への移動、連絡網の運用テスト、バックアップデータからの復旧演習など、実際の流れを体験することで、従業員の行動精度が高まります。
また、新入社員向けのBCP教育や、部署ごとの訓練も効果的です。繰り返し訓練を行うことで、緊急時でも迷わず行動できる体制が整うため、BCPの実効性が向上します。
BCPは一度作って終わりではなく、事業内容や組織の変化、災害リスクの変動に合わせて見直す必要があります。年1回程度を目安に、計画全体を評価・更新しましょう。
この際、PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を活用し、訓練で見つかった課題や災害対応で得た教訓を反映させます。継続的に改善を重ねることで、BCPが形骸化せず、常に最新の状態に保たれ、いざというときに確実に機能する計画になります。
災害には、それぞれ異なる特徴があるため、BCPでも災害種別に応じた対策が必要です。
これら3つに焦点を当て、その災害特性に合わせたBCPの要点を紹介します。
地震は予測が難しく、発生した瞬間から業務に大きな影響を与えます。そのため、物理的な対策と初動対応の準備が欠かせません。まず、建物の耐震診断を行い、必要に応じて補強工事を実施します。さらに、サーバーラックや棚、OA機器は転倒防止金具で固定し、書庫やキャビネットの扉には耐震ラッチ(地震の揺れを感知して自動でロックする金具)を取り付けて飛び出しを防ぎます。
また、安否を確認できなければ、適切な配置ができず業務再開の判断も遅れます。安否確認システムの導入は、こうした混乱を防ぐために有効です。
また、オフィスが使用できない可能性を想定し、サテライトオフィスや在宅勤務体制を整えておくことで、建物が損傷した場合でも重要業務を維持しやすくなります。
水害は、事前にある程度の予測が可能な災害です。まず、自治体が公開しているハザードマップを用いて、自社の所在地が浸水区域に含まれるかを確認します。浸水リスクが高い場合は、重要書類やサーバー機器を高層階に移動させたり、防水ラックや止水板を導入したりするなど、物理的な対策を講じます。
豪雨時には停電や設備故障が起きる可能性があるため、バックアップ電源の確保やクラウドサービスの活用によってシステムの継続性を保つことも有効です。
さらに、社員が出社できない状況に備えて、リモートワークが実施できる環境や遠隔から操作できる管理体制を整備しておくと、洪水時でも業務を継続しやすくなります。
感染症の流行は、従業員の出社制限や人員不足を招くため、事業継続に深刻な影響を与えます。まずは、手洗いやマスク着用、消毒といった基本的な感染防止対策を徹底し、社内の衛生環境を整えます。
続いて、感染拡大を防ぐため、リモートワーク体制の構築が不可欠です。業務に必要なシステムやデータへ安全にアクセスできる仕組みを整えることで、出社できない状況でも業務を継続できます。
また、人員が減少した場合に備え、業務を複数人で担当できる体制をつくるなど、作業の標準化やマニュアル整備も重要です。感染症BCPでは、「人が減っても続けられる業務体制」を構築することが鍵となります。
BCPを迅速かつ確実に実行するためには、従業員の安否を素早く把握することが欠かせません。安否確認システムは自動でメッセージを配信し、回答をリアルタイムで確認できるため初動の遅れを防げます。これによるメリットには、
があります。クラウド電話と併用すれば、拠点が使えない状況でも連絡手段を確保できます。
安否確認システムは、災害発生時に従業員の状況を迅速に把握し、必要な初動対応につなげる役割を担います。災害直後は電話がつながりにくくなることが多いため、自動で一斉配信できる仕組みが非常に有効です。従業員はスマートフォンやパソコンから簡単に回答でき、管理者は一覧画面で回答状況をリアルタイムに確認できます。
主な機能として、災害発生時の自動通知、回答結果の集計、自動リマインド、緊急連絡網の管理などがあります。位置情報を活用して従業員の所在地を把握したり、部署ごとの回答状況を可視化したりする機能が搭載されているシステムもあります。
これらの機能によって、企業は混乱が発生しやすい災害時でも、正確かつ迅速に状況を把握し、必要な対策を判断できます。
安否確認システムの導入には、多くの企業にとって大きなメリットがあります。まず挙げられるのが「初動の早さ」です。災害後すぐに従業員の状況を把握できれば、事業再開の判断や必要な支援の手配を迅速に進められます。
次に、「管理負担の軽減」です。回答が自動で集計されるため、未回答者の確認や個別連絡にかかっていた時間を削減できます。担当者の負担が減ることで、ほかの対応に集中しやすい体制が築けます。
さらに、「情報が確実に届く」点も重要です。メール・アプリ通知・音声通話など複数の手段を組み合わせて配信できるため、通信環境が不安定な状況でも連絡が途切れにくくなります。クラウド電話と併用すれば、拠点が使えない場合でも柔軟に連絡体制を維持でき、災害時のコミュニケーション力を大きく向上させられます。
災害はいつ起きるか分からず、企業の事業に大きな影響を与えます。そのため、平常時からBCPを整えておくことが事業継続の鍵になります。計画を作るだけでは不十分で、訓練や見直しを繰り返し、実際に動かせる体制にしておくことが重要です。
中でも安否確認システムは、災害直後の混乱を抑え、従業員の状況を迅速に把握するうえで欠かせない存在です。状況が早く把握できれば、初動判断もスムーズになります。BCPを継続的に改善し、災害に強い組織づくりを進めていきましょう。
災害に強い企業をつくるには、BCPの策定だけでなく、通信手段や業務継続の仕組みを平常時から整えておくことが重要です。KDDIでは、災害時にも安定した通信を確保できる衛星通信サービス「スターリンク」をはじめ、モバイルの副回線サービス、IoTを活用した冗長化ソリューションなど、多様なBCP対策を提供しています。
さらに、現在の自社体制を簡単に診断できる「BCPシミュレーション」も公開しており、どの部分を強化すべきかを確認できます。
まずはBCPの見直しから始めてみませんか。