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災害時に役立つBCP(事業継続計画)とは ? 策定の流れと対策のポイント

災害時に役立つBCP(事業継続計画)とは ? 策定の流れと対策のポイント

2025 12/16
地震や豪雨など、企業の活動を止めかねない災害は年々増えています。突然の被害を完全に防ぐことは難しいため、どのように守り、どう復旧するかを事前に準備しておくことが大切です。その計画がBCP(事業継続計画)です。本コラムでは、BCPの基本となる考え方から策定の流れ、災害別の対策ポイントまでわかりやすく紹介します。さらに、発災時の行動を支える安否確認システムの活用方法も解説していきます。

※ 記事制作時の情報です。

1.災害時におけるBCP(事業継続計画)とは

BCPを理解することで、災害時企業が取るべき行動明確になります。まずは、

  1. BCPが果たす目的役割
  2. 防災計画やBCM(事業継続マネジメント)との違い

から詳しく解説していきます。

1-1. BCPの目的と災害対策で果たす役割


BCPの目的は、災害が起きても重要業務をできるだけ止めず、迅速再開できるように備えておくことです。被害完全に避けることは難しくても、事業を続けられる体制を整えることで、大きな混乱を避けられます。まず守るべきは従業員安全であり、安全確保のうえで必要要員拠点確保し、業務を続ける仕組みを準備します。また、取引先顧客への影響を抑えることもBCPの大切役割です。サービス長期間止まると信頼低下につながり、社会全体活動にも影響がおよびます。BCPは事業継続のみならず、従業員顧客、そして地域社会を守るための計画でもあり、平常時から整えておくことで非常時行動スムーズになります。

BCPの目的と災害対策で果たす役割のイメージ画像

1-2. 防災計画・BCMとの違い

BCPは、防災計画やBCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)とは目的対象が異なります。防災計画は、建物耐震化避難方法など、主に人命を守るための準備重点があり、BCPは事業継続するための手段重点が置かれた計画です。

さらにBCPを継続的運用する仕組みがBCMで、BCPで計画を示し、BCMで運用改善プロセスを行います。

防災計画 BCP BCM
目的 人命・設備の被害低減 重要業務の継続と早期復旧 BCPの運用・改善
対象 人・建物・設備 事業全体・業務プロセス 組織全体の管理体制
範囲 物理的・安全面中心 経営・業務・体制 組織運営・改善

2.企業の災害対策でBCPが必要な3つの理由

BCPを策定する必要性は大きく3つあります。

  • 経営損失防止災害業務が止まると、売上減少取引停止など大きな損失発生します。BCPがあれば重要業務維持し、損害を抑えられます。
  • 安全確保従業員安否確認安全確保スムーズに進めることで、混乱を防ぎます。また、顧客へのサービス提供継続できれば信頼も損なわれません。
  • 社会的信頼企業混乱せず迅速復旧できれば、取引先地域社会からの評価にもつながります。

BCPは企業を守るだけでなく、社会全体回復力強化にも貢献します。

関連サービス: 副回線サービス

3.災害時に有効なBCP策定・運用の7ステップ

BCPは作成して終わりではありません。次のステップ体系的に進めることで、実効性の高いBCPを構築できます。

  1. 基本方針決定
  2. 重要業務特定
  3. リスク分析被害想定
  4. 代替戦略検討復旧目標設定
  5. BCP発動運用体制構築
  6. 訓練実施教育
  7. 定期的見直しと改善

3-1. ステップ1:基本方針の決定

BCP策定最初ステップは、経営層中心となって基本方針を決めることです。災害時企業として何を守り、どこまで事業継続するのかを明確にすることで、判断基準統一されます。基本方針には、対象とするリスク優先すべき重要業務従業員安全確保方針復旧目標時間(RTO)の考え方などを含めます。

まず、自社事業影響を与える可能性のある災害を洗い出し、それぞれのリスクの大きさを評価します。例えば、地震発生頻度が高い地域であれば耐震性確保重視し、豪雨被害が多い地域であれば浸水対策優先するといった判断必要です。

さらに、経営層主体となってBCPの重要性社内発信することで、従業員一体となって取り組む土台が生まれます。

3-2. ステップ2:重要業務の特定(事業影響度分析)

事業影響度分析(BIA)は、BCPの精度を大きく左右する重要プロセスです。災害が起きたとき、どの業務が止まると企業深刻影響が出るのかを明らかにし、優先順位をつけるために行います。まずは社内業務をすべて書き出し、それぞれが停止した際の影響を「売上」「法令順守」「顧客対応」「ブランドイメージ」といった視点評価します。

例えば、受注業務顧客サポート停止するとすぐに影響が表れるため優先度が高くなります。一方短時間であれば停止しても致命的影響が少ない業務存在します。

さらに、業務がどれだけの時間停止しても許容できるのか(許容停止時間)も設定します。これにより、限られた資源をどの業務優先的に割り当てるべきかが明確になります。分析丁寧に行うことで、災害時に守るべき業務がはっきりし、BCP全体がより現実的実効性のあるものになります。

3-3. ステップ3:リスク分析と被害想定

重要業務整理できたら、自社直面する災害リスク具体的に洗い出します。自治体公開するハザードマップ非常有効で、地震浸水土砂災害火災など、どの災害自社所在地影響しやすいのかを把握できます。自社だけでなく、主要取引先物流拠点仕入れ先などについても確認すると、サプライチェーン全体弱点が見えてきます。

次に、災害が起きた場合重要業務へどのような影響が生じるかを想定します。例えば、地震オフィスが使えなくなれば在宅勤務に切り替える方法を考える必要がありますし、浸水が起きればサーバー機器破損によって業務全面停止するおそれがあります。

こうした具体的想定を行うことで、災害ごとに備えるべき対策がはっきりし、BCPの実効性が高まります。

3-4. ステップ4:代替戦略の検討と目標復旧時間の設定


代替戦略の検討と目標復旧時間の設定のイメージ画像

災害時重要業務を止めないためには、あらかじめ代替手段用意しておく必要があります。まず、オフィス使用できない事態想定し、サテライトオフィス別地域事務所など代替拠点検討します。同時に、特定担当者出社できないケースに備え、業務複数人で引き継げる仕組みを作っておくことも大切です。

ITシステムについては、クラウドサービス利用や日ごろからのデータバックアップによって復旧スピードを大きく高められます。

さらに、「目標復旧時間(RTO)」の設定も欠かせません。RTOとは「業務何時間以内再開する必要があるか」を示す指標で、BIAでの分析結果をもとに定めます。短時間再開必要業務ほど、代替策バックアップ体制手厚く整える必要があります。

3-5. ステップ5:BCPの発動・運用体制の構築

BCPを実際機能させるには、緊急時に誰が何を判断し、どのように対応するかを明確にする運用体制必要です。まず、災害発生時指揮命令系統を定め、トップから現場担当者までの役割整理します。次に、全従業員確実情報を伝えるため、緊急連絡網安否確認手段を整えておくことが欠かせません。

さらに、通信手段確保重要です。大規模災害では、通常回線が使えなくなる可能性があります。そのため、衛星通信サービススターリンク」の活用や、副回線サービス、IoTを活用した機器冗長化ソリューションを組み合わせることで、通信断リスクを大きく減らせます。

また、これらの仕組みを整えることで、災害時混乱最小限に抑え、迅速にBCPを発動できる運用体制構築できます。

3-6. ステップ6:訓練の実施と教育

BCPは作成しただけでは意味がありません。実際に使える計画にするためには、定期的訓練教育必要です。まず、計画内容机上確認する「机上訓練テーブルトップ演習)」を実施し、災害シナリオに沿って各担当者行動確認します。これにより、役割分担不明点改善点発見できます。

次に、より実践的な「総合訓練」を行います。避難訓練代替拠点への移動連絡網運用テストバックアップデータからの復旧演習など、実際の流れを体験することで、従業員行動精度が高まります。

また、新入社員向けのBCP教育や、部署ごとの訓練効果的です。繰り返し訓練を行うことで、緊急時でも迷わず行動できる体制が整うため、BCPの実効性向上します。

3-7. ステップ7:定期的な見直しと改善


BCPは一度作って終わりではなく、事業内容組織変化災害リスク変動に合わせて見直必要があります。年1回程度目安に、計画全体評価更新しましょう。

この際、PDCAサイクル計画実行評価改善)を活用し、訓練で見つかった課題災害対応で得た教訓反映させます。継続的改善を重ねることで、BCPが形骸化せず、常に最新状態に保たれ、いざというときに確実機能する計画になります。

定期的な見直しと改善のイメージ画像

4.【災害別】BCP策定のポイント

災害には、それぞれ異なる特徴があるため、BCPでも災害種別に応じた対策必要です。

  • 地震建物設備安全確保発災直後行動
  • 水害浸水リスクを踏まえた設備書類保全
  • 感染症感染防止人員減少時業務継続

これら3つに焦点を当て、その災害特性に合わせたBCPの要点紹介します。

4-1. ①地震

地震予測が難しく、発生した瞬間から業務に大きな影響を与えます。そのため、物理的対策初動対応準備が欠かせません。まず、建物耐震診断を行い、必要に応じて補強工事実施します。さらに、サーバーラックや棚、OA機器転倒防止金具固定し、書庫キャビネットの扉には耐震ラッチ地震の揺れを感知して自動ロックする金具)を取り付けて飛び出しを防ぎます。

また、安否確認できなければ、適切配置ができず業務再開判断も遅れます。安否確認システム導入は、こうした混乱を防ぐために有効です。

また、オフィス使用できない可能性想定し、サテライトオフィス在宅勤務体制を整えておくことで、建物損傷した場合でも重要業務維持しやすくなります。

4-2. ②水害

水害は、事前にある程度予測可能災害です。まず、自治体公開しているハザードマップを用いて、自社所在地浸水区域に含まれるかを確認します。浸水リスクが高い場合は、重要書類サーバー機器高層階移動させたり、防水ラック止水板導入したりするなど、物理的対策を講じます。

豪雨時には停電設備故障が起きる可能性があるため、バックアップ電源確保クラウドサービス活用によってシステム継続性を保つことも有効です。

さらに、社員出社できない状況に備えて、リモートワーク実施できる環境遠隔から操作できる管理体制整備しておくと、洪水時でも業務継続しやすくなります。

4-3. ③感染症

感染症流行は、従業員出社制限人員不足を招くため、事業継続深刻影響を与えます。まずは、手洗いやマスク着用消毒といった基本的感染防止対策徹底し、社内衛生環境を整えます。

続いて、感染拡大を防ぐため、リモートワーク体制構築不可欠です。業務必要システムデータ安全アクセスできる仕組みを整えることで、出社できない状況でも業務継続できます。

また、人員減少した場合に備え、業務複数人担当できる体制をつくるなど、作業標準化マニュアル整備重要です。感染症BCPでは、「人が減っても続けられる業務体制」を構築することが鍵となります。

5.災害時にBCPの実効性を高める安否確認システム

BCPを迅速かつ確実実行するためには、従業員安否素早把握することが欠かせません。安否確認システム自動メッセージ配信し、回答リアルタイム確認できるため初動の遅れを防げます。これによるメリットには、

  • 初動対応迅速化
  • 管理者負担軽減
  • 確実情報伝達

があります。クラウド電話併用すれば、拠点が使えない状況でも連絡手段確保できます。

5-1. 安否確認システムの役割と主な機能

安否確認システムは、災害発生時従業員状況迅速把握し、必要初動対応につなげる役割を担います。災害直後電話がつながりにくくなることが多いため、自動一斉配信できる仕組みが非常有効です。従業員スマートフォンパソコンから簡単回答でき、管理者一覧画面回答状況リアルタイム確認できます。

主な機能として、災害発生時自動通知回答結果集計自動リマインド緊急連絡網管理などがあります。位置情報活用して従業員所在地把握したり、部署ごとの回答状況可視化したりする機能搭載されているシステムもあります。

これらの機能によって、企業混乱発生しやすい災害時でも、正確かつ迅速状況把握し、必要対策判断できます。

5-2. システム導入による3つのメリット

安否確認システム導入には、多くの企業にとって大きなメリットがあります。まず挙げられるのが「初動の早さ」です。災害後すぐに従業員状況把握できれば、事業再開判断必要支援手配迅速に進められます。

次に、「管理負担軽減」です。回答自動集計されるため、未回答者確認個別連絡にかかっていた時間削減できます。担当者負担が減ることで、ほかの対応集中しやすい体制が築けます。

さらに、「情報確実に届く」点も重要です。メール・アプリ通知音声通話など複数手段を組み合わせて配信できるため、通信環境不安定状況でも連絡途切れにくくなります。クラウド電話併用すれば、拠点が使えない場合でも柔軟連絡体制維持でき、災害時コミュニケーション力を大きく向上させられます。

6.まとめ

災害はいつ起きるか分からず、企業事業に大きな影響を与えます。そのため、平常時からBCPを整えておくことが事業継続の鍵になります。計画を作るだけでは不十分で、訓練見直しを繰り返し、実際に動かせる体制にしておくことが重要です。

中でも安否確認システムは、災害直後混乱を抑え、従業員状況迅速把握するうえで欠かせない存在です。状況が早く把握できれば、初動判断スムーズになります。BCPを継続的改善し、災害に強い組織づくりを進めていきましょう。

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