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カーボンニュートラルとは?意味や取り組みについてご紹介します
Smart Workコラム vol. 49

カーボンニュートラルとは?
意味や取り組みについてご紹介します

2024 3/22
SDGsやESG (環境・社会・ガバナンス) といった持続可能性を考慮した取り組みに注目が集まるなか、カーボンニュートラルはあらゆる企業が正しく理解しておきたい用語となりつつあります。この記事では、カーボンニュートラルの意味や求められる背景、カーボン・オフセットとの違いや達成期限、実現に向けた具体的な取り組みとその課題などをご紹介します。

1.カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、地球温暖化とその先にある気候変動食糧危機などの問題を防ぐための、温室効果ガス排出削減目標です。まずは、その意味定義背景世界日本の取り組みをみていきましょう。


1.1 カーボンニュートラルの意味・定義

カーボンニュートラルは、CO2に代表される温室効果ガス排出量を、植物光合成などで減る吸収量との差し引きで実質的ゼロにする目標です。2020年10月、菅総理 (当時) が「日本は2050年までにカーボンニュートラル目指す」と宣言したことで、国内でも注目されるようになりました。

カーボンニュートラル特長は、排出量吸収量の差し引きでゼロ (ネットゼロ) を掲げている点です。温室効果ガス排出完全になくすのではなく、どうしても削減できない排出量吸収量増加 (例: 植林活動推進) で実質的ゼロにする、という柔軟方針採用されています。

なお、カーボンニュートラル対象とする「温室効果ガス」とはCO2だけではありません。CO2と同じく地球温暖化につながるメタンフロンガス一酸化二窒素なども「温室効果ガス」に含まれています。


1.2 カーボンニュートラルの背景

カーボンニュートラルが求められる背景には、地球温暖化進行があります。
環境省によれば、2020年時点世界平均気温は、1850年~1900年ごろと比べておよそ1.1℃上昇しています。背景には工業化進行があり、このまま温室効果ガスへの対策を進めない場合、さらなる温暖化が続くと予想されています。

地球温暖化豪雨猛暑などの異常気象を引き起こし、生態系破壊農作物凶作といった食糧危機原因となります。
また、海面上昇による可住地 (人が住める地域) の減少懸念されており、カーボンニュートラルに取り組むことは地球に住むすべての人々にとって喫緊課題です。


1.3 世界各国の取り組み

カーボンニュートラル日本独自の取り組みではありません。2021年11月時点で154カ国・1地域賛同 (注1) しており、そのなかにはアメリカ中国などCO2排出量の多い大国も含まれています。経済産業省 資源エネルギー庁によれば、世界全体のCO2排出量の約79%に相当する国・地域カーボンニュートラル賛同している計算です。

2020年から運用が始まり、国際的地球温暖化対策指針とされている「パリ協定」では、世界平均気温上昇について、「産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること (注2)」を目標としています。

この目標達成のためには、2050年ごろまでのカーボンニュートラル達成が欠かせないとシミュレーションされており、今後ますます世界各国での取り組みが加速していくものと期待されます。


1.4 日本の取り組み

日本では、2050年カーボンニュートラル宣言のあと、自治体の取り組みが進み始めています。

環境省によると、2023年12月28日時点で、2050年までのカーボンニュートラルに取り組むことを表明したのは1,013自治体
例えば東京都では、2030年までに「都内販売される新車のすべてをEV (電気自動車) かHV (ハイブリッド車) にすること」を掲げています。ほかにも、意欲的目標を持ちカーボンニュートラル推進している自治体は多くあります。

また、最近では、企業でもカーボンニュートラルに取り組み、その成果を「サステナビリティレポート」や「ESGレポート」として社外公表する動きも見られるようになりました。ブランドイメージ向上金融機関投資家からの信頼獲得につながるとして注目されています。

2.カーボン・オフセットとの違い

カーボンニュートラル名称の似た用語に、カーボン・オフセットがあります。
農林水産省によるカーボン・オフセット定義以下のとおりです。

カーボン・オフセットとは、市民企業、NPO/NGO、自治体政府等社会構成員が、自らの温室効果ガス排出量認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減困難部分排出量について、ほかの場所実現した温室効果ガス排出削減吸収量等クレジット)を購入すること、または他の場所排出削減吸収実現するプロジェクト活動実施すること等により、その排出量全部又一部を埋め合わせるという考え方です。”

上記は、温室効果ガスの差し引きで排出量ゼロ目指カーボンニュートラル思想そのものです。
つまり、両者事実上ほとんど同じものを指していますが、文脈により「カーボンニュートラル目標で、カーボン・オフセット手段」とみなされたり、カーボンニュートラル完全な埋め合わせ (ネットゼロ) だが、カーボン・オフセット一部だけの埋め合わせも含むものとして扱われたりすることがあります。

3.カーボンニュートラルの目標達成期限

前述したとおり、日本カーボンニュートラル目標達成期限は2050年です。しかし、翌年の2021年に、菅総理 (当時) は2030年も中間目標となる年だと説明しています。

ここでは、2030年と2050年それぞれの達成目標について説明していきます。


3.1 2030年

2021年4月の地球温暖化対策推進本部にて、2050年のカーボンニュートラル達成整合する目標として、「2030年度に (2013年度比較して) 温室効果ガスを46%削減すること」を目標に掲げました。

この46%という数字は、当時目標を7割以上も引き上げる野心的なものでした。
2030年が近づくなか、目標達成できるのか注目されています。


3.2 2050年

先ほど述べたとおり、日本カーボンニュートラル達成期限は2050年です。
菅総理 (当時) は、2020年10月26日の国会における所信表明演説のなかで以下のように宣言しました。

”「我が国は、2050年までに、温室効果ガス排出量全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル脱炭素社会実現目指すことを、ここに宣言いたします。」 ”

諸外国では、アメリカイギリス、EU各国などが日本と同じく2050年をカーボンニュートラル達成目標としています。
なお、CO2排出量の多い大国の一つである中国は2060年を達成期限に掲げています。

4.カーボンニュートラル実現に向けた取り組み

では、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。


4.1 再生可能エネルギーの活用

特に重要となる取り組みが、温室効果ガス排出量が多い化石エネルギー消費を減らし、再生可能エネルギーに切り替えていくことです。再生可能エネルギーとは、地球資源一部として存在しており、枯渇せず、CO2を排出せず、場所を問わず存在するエネルギーを指します。代表的なものは下記のとおりです。

【代表的な再生可能エネルギー】

太陽光発電 バイオマス 地熱発電
水素エネルギー 洋上風力発電

このような電力利用拡大することで、温室効果ガス排出量削減目指します。


4.2 ゼロエミッションの取り組み

ゼロエミッションとは、リサイクルなどを通じて廃棄物を限りなくゼロにすることを目指す考え方です。
エミッション (Emission) は「放出物」「排出物」を意味し、温室効果ガスだけでなく、あらゆる廃棄物ゼロにすることを目的としています。

ゼロエミッション具体的な取り組みとしては、ある食品製造業者生産過程発生する廃棄物をほかの企業肥料として活用するなど、分野を超えた協業可能性を探る取り組みが代表的です。カーボンニュートラル注目が集まるにつれ、近年ゼロエミッション意識する自治体企業も増え始めています。


4.3 カーボンリサイクル

カーボンリサイクルとは、CO2の排出量削減を進めるだけでなく、どうしても排出が避けられないCO2は資源として有効活用しようとする取り組みです。

環境用語では、CO2を回収貯蓄する技術を「CCS (Carbon dioxide Capture and Storage)」、CO2を有効活用する技術を「CCU (Carbon Capture and Utilization)」、この2種類を合わせて「CCUS (Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」と呼びます。カーボンリサイクルはこのCCUSの一種で、CO2を化学品燃料鉱物などを生産する資源として役立てようとする試みです。

現時点
ではまだ研究試作段階ですが、2030年ごろには社会浸透するアイテム登場するのではないかと期待されています。


4.4 創エネルギー

エネルギーとは、発電事業者ではない企業自治体一般家庭などが自らエネルギーを創り出すことです。
温室効果ガス発生しないクリーンエネルギーを用いるのが主流で、ソーラーパネルによる太陽光発電などが代表例に挙げられます。創エネルギー確保は、燃料費高騰など社会情勢によるエネルギー供給不安解消にもつながります。


4.5 サプライチェーン排出量の削減

企業視点では、サプライチェーン全体排出量削減にも目を向けなければなりません。

前提として、企業カーボンニュートラルに取り組む際の温室効果ガス排出量は、「GHGプロトコル (温室効果ガス排出量国際的算定基準)」と呼ばれる基準により、以下の3種類分類されて計算されます。

Scope 概要説明 具体例
Scope1 自社が直接排出する温室効果ガス 自社製品の製造時に発生する温室効果ガス
Scope2 自社が間接排出する温室効果ガス 他社から供給された電気や熱の使用時に発生する温室効果ガス
Scope3 Scope1,Scope2以外のサプライチェーン内で排出される温室効果ガス 原材料の仕入れや購入者による商品の使用・廃棄時に発生する温室効果ガス

ポイントとなるのはScope3です。サプライチェーン内の他社活動発生した温室効果ガス種類によっては自社責任判断されるため、その把握削減に取り組む必要があります。

5.カーボンニュートラル実現の障壁

カーボンニュートラルの実現はあらゆる人々にとって喫緊課題ですが、そこには懸念事項問題点もあります。


5.1 排出基準設定が難しい

カーボンニュートラル排出基準設定に難しさがあります。

例えば、各国二酸化炭素排出量生産過程ベース計測されていますが、本来消費基準とするべきだとする指摘があります。これは、先進国人件費の安い発展途上国工場を建てることで、発展途上国二酸化炭素排出量不当に高く計算されてしまう (先進国排出量肩代わりする形となる) ためです。

しかし、消費基準とするためには精密データ測定必要であり、現時点では実現が難しいと考えられています。


5.2 実質的な「排出量削減」にならないことがある

企業にとってカーボンニュートラル実務上問題となりやすいのが、「ネットゼロ (温室効果ガス排出量吸収量の差し引きでの実質ゼロ)」を意識するあまり、排出削減努力を怠ってしまいやすいことです。

カーボンニュートラルネットゼロとは、温室効果ガス排出量削減策可能な限り実行したうえで、どうしても削減できない部分吸収量で埋め合わせることを指しています。最初から吸収量ありきのカーボンニュートラル目指しては、消費者から「グリーンウォッシュ (環境配慮している企業だと見せかけること)」と判断され、ブランドイメージ毀損される可能性があります

6.まとめ

人々の環境保護への関心が高まるなか、カーボンニュートラルに取り組むことは企業にとって欠かせない課題となりつつあります。しかし、実際効果検証を行うとなるとサプライチェーン温室効果ガス排出量まで把握する必要があるなど、作業多岐に渡り、どこから手を付けるべきか迷ってしまうのが実情です。

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