※ 記事制作時の情報です。
まちづくりとは、地域に住む人々が自らの暮らしをよりよくするために、行政や企業、NPOなどと協力しながら進める取り組みです。道路や建物の整備を中心とした従来の都市計画と比べ、暮らしの質を高めることを目的に、住民の意見や地域特性を反映させる点が大きな特徴といえます。
そのため、まちづくりには次の3つの基本要素が欠かせません。
これらの要素を組み合わせることで、地域が持続的に発展するまちづくりが実現します。
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まちづくりを成功させるには、地域の主役である住民が中心となって取り組むことが欠かせません。外部の組織や行政だけでは、本当の課題や暮らしの実情を把握できないため、住民の声を反映させることが重要です。
各地では、地域協議会の設置や公開ワークショップの開催を通じて、住民が意見を出し合い、将来像を共有する取り組みが進められています。これにより、地域への愛着が深まり、継続的な活動につながります。
まちづくりは一部の主体だけで進めるのではなく、行政・企業・NPOが連携することで大きな効果を生み出します。行政は制度や予算を担い、企業は資金や技術を提供し、NPOは地域課題に即した活動を展開するなど、それぞれの強みを生かせる点がメリットです。
具体的な手法としては、民間の資金とノウハウを公共事業に活かすPFI (民間資金等活用事業) や、公共施設の運営を民間に委託する指定管理者制度があります。これらは、事業の効率性とサービスの質を高める有効な仕組みです。
まちづくりでは、地域に眠る歴史や文化、自然、人材といった資源を見直し、新たな価値への転換が求められます。観光資源として活用するだけではなく、日常生活や地域経済に結びつけることで、持続的な発展につながるのです。
例えば、空き家をリノベーションしてカフェやコミュニティスペースに変える取り組みは、各地で成果を挙げています。地域の雇用を生み出すだけではなく、住民や来訪者の交流の場となり、新しいにぎわいを創出しています。
まちづくりにはさまざまな立場から関わることができます。代表的な職種は以下の5つです。
企業の立場からまちづくりに参画し、新しい街の価値創出に寄与します。プロジェクトメンバーとして参加する社員は、都市開発や地域活性化に関わる企画立案、ICTを活用したサービス導入、地域との協働など幅広い役割を担います。
KDDIは都心部での大規模開発に参画し、先端技術を活用したまちづくりを進めています。通信インフラの整備やスマートサービスの導入を通じ、持続可能で快適な都市空間を実現する取り組みです。
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行政や企業からの依頼を受け、第三者的な立場で専門職として参画します。地域の現状を調査・分析し、課題に応じた解決策を企画・提案するのが主な業務です。人口動態や交通状況、地域資源の調査を行い、その結果をもとに具体的な事業計画を立案します。
業務フローは、現状把握→課題整理→解決策の企画→実行支援の流れで進みます。その過程では、統計データを扱う分析力と、将来像を描く企画力が欠かせません。地域の特性を踏まえた提案を行うことで、実効性の高いまちづくりを後押しします。
住民・行政・企業の間に立ち、意見や立場の違いを調整する役割を担います。まちづくりでは多様な主体が関わるため、橋渡しをする存在が不可欠です。
具体的には、地域イベントの企画・運営を通じて住民同士の交流を促したり、会議やワークショップで合意形成を導いたりします。そのため、単なる調整役にとどまらず、対話を重ねて信頼関係を築く高いコミュニケーション能力が求められます。地域の声をつなぎ、活動を円滑に進める要となる役割です。
行政の立場からまちづくりを推進する中心的な役割を担います。都市計画課では、道路や公園などのインフラ整備、用途地域の指定など都市機能を高める施策を実施します。地域振興課の役割は、観光振興や移住支援、商店街の活性化といった取り組みを通じて、地域のにぎわいを生み出すことです。
また、国や県の補助金制度を活用し、地域資源を生かしたイベントや産業振興事業を企画することもあります。公務員の活動は、住民の暮らしを基盤から支える、まちづくりの重要な一端です。
市民活動を担う団体として、地域に近い立場で地域課題の解決に取り組む実践的な役割を担います。子育て支援、環境保全、福祉 (高齢者・障がい者支援)、見守り活動といったテーマごとに活動し、行政や企業では手が届きにくい分野を補完します。
活動を継続するためには資金調達が欠かせないため、クラウドファンディングや助成金の獲得、企業との協賛、会員制度や自主事業収益を通じて資金を集め、効果的な広報で活動の意義を広く発信します。市民に寄り添いながら課題解決を進める姿勢が、地域に信頼を生み出しています。
ここでは、IT活用・住民参加・官民連携の3つの視点から、まちづくりの成功事例を紹介します。
人口5,000人弱の地方自治体では、過疎化に直面する中で、ICT関連企業を積極的に誘致するサテライトオフィス誘致戦略を進めてきました。2005年に町内全域へ光ファイバー網を整備したことを契機に、デザインや映像制作などの企業が進出し、2023年度までに22社・約130人の雇用を創出しています。
この取り組みにより、2014年度には転入者が転出者を46人上回り、若年層の定着も進展しました。空き家を活用したカフェやコワーキングスペースなど40件を越える創業が生まれ、地域資源を生かした持続的なまちづくりの成功事例として高く評価されています。
住民主体で運営する「集落活動センター」を設置し、地域の拠点を再生しました。旧小学校や集会所を改修し、飲食スペースやイベント会場として活用することで、住民同士の交流や世代間のつながりを育んでいます。
各世代が参加する協議会やワークショップを通じて、合意形成を重ねながら拠点運営を進めた点が成功の要因です。現在、町内に複数のセンターが設置され、地域の雇用やサービス維持にも貢献しています。
駅前エリアの再生を目的に「エリアプラットフォーム」を設立し、行政・企業・住民・学生が協働する体制を整えました。民間の発想を活かしながら、行政が制度や支援を提供し、地域全体で将来像を共有しています。
ここでは、実証実験や地域イベント、空間再編などが段階的に展開され、初期の行政と民間が協働するフェーズを経て、現在は地域主体での自走を目指す体制に移行しています。官民が連携して持続可能なまちづくりを進める好事例です。
まちづくりは地域に新しい価値を生み出す一方で、次のような課題に直面することが多くあります。
まちづくりにおいてデジタル技術の導入は欠かせませんが、導入コストや専門人材の不足、住民のITリテラシー格差が大きな壁となっています。特に高齢者が多い地域では、利用者教育の仕組みが不十分であることが課題です。
導入に際しては、まず地域課題を明確にし、その解決に直結するサービスを選ぶことが重要です。例えば、情報発信の不足には「まちアプリ」を導入し、住民一人ひとりの嗜好や行動に合わせた情報提供を実現します。都市運営に必要な膨大なデータは「データダッシュボード」で一元管理し、人流シミュレーションや防災計画などに活用できます。
こうしたサービスを小規模に導入・検証し、説明会やワークショップで住民の理解を深めながら段階的に拡大していくことが、障壁を乗り越え、技術を定着させるための鍵です。
KDDIはICTを活用し、都市や地域の課題解決を支援するスマートシティを推進しています。先進的なソリューションの詳細は、以下のページをご覧ください。
まちづくりでは、企画立案や運営を担う専門人材の不足、さらに活動資金の確保が大きな課題となります。特に人口減少が続く地域では担い手が限られ、長期的な取り組みを続けることが困難な状況です。
対策としては、多様なスキルを持つ人材を地域外から呼び込むとともに、クラウドファンディングで広く資金を募る方法があります。また、国や自治体が提供する補助金制度の活用や、企業が寄附を通じて税額控除を受けられる「企業版ふるさと納税」も有効です。これらを組み合わせることで、まちづくりを持続的に進める基盤が整います。
まちづくりにおいて、住民の参加が思うように進まないケースは少なくありません。背景には「忙しさから会議や活動に時間を割けない」「参加しても意見が反映されないのでは」などがあります。特に若年層や子育て世代では、長時間拘束される活動は参加しにくい傾向があります。
参加を促す工夫として、SNSを活用した情報発信により、住民が気軽に意見を共有できる仕組みを整える方法があります。また、休日に1~2時間で参加できるワークショップや、子ども連れで参加できるイベントを企画することも効果的です。参加のハードルを下げることで、幅広い世代の参画が期待できます。
まちづくりには行政、企業、NPO、住民など多様な主体が関わりますが、立場や目的の違いから連携が難航することがあります。行政は公共性や公平性を、企業は収益性を、NPOは社会的課題の解決を優先するなど、価値基準の差が調整を難しくしています。
円滑な連携のためには、まず全関係者で共有できる明確な目標を設定することが不可欠です。そのうえで、定期的に協議の場を設け、意見交換や進捗確認を行うと相互の信頼関係が築かれます。こうした仕組みを整えることが、多様な立場を超えた協働を実現する鍵となります。
まちづくりは、従来の都市計画とは一線を画し、住民主体の活動や多様な連携、地域資源の活用を組み合わせて進める点に特徴があります。本記事では、基本要素や代表的な職種、目的、成功事例、そして直面する課題と解決策を紹介しました。
安心で快適な暮らしと持続可能な社会を実現するには、地域の人々が自ら考え、行政や企業と協力しながら継続的に取り組むことが欠かせません。小さな工夫の積み重ねが、未来につながるまちづくりを形づくっていきます。
KDDIは、点在するデータを収集・分析し、AIを活用することで街や人、業種業態をまたがる企業をつなぎ、街の持続的な発展を推進します。ICTやIoTを活用したソリューションを通じて、地域の課題解決と新しい価値創出を支援しています。都市空間の設計からデジタルインフラの導入まで、まちづくりを総合的にサポートし、住民が安心して暮らせる持続可能な地域づくりを推進しています。
詳細は以下のページをご覧ください。