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GPU (Graphics Processing Unit) は、主に画像や映像の描画を高速化するために設計された専用プロセッサです。複数の計算を同時に実行できる並列処理能力に優れており、3D描画や動画再生のような大量データ処理で真価を発揮します。
近年、GPUは演算負荷の高い作業にも活用が広がり、映像処理と高度な計算処理の双方を支える重要な装置として注目を集めています。
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GPUの主な役割は、大量のデータを同時に処理することです。具体的には、以下の分野で活用されています。
GPUは膨大な計算処理を効率的に実行することで、システム全体の処理能力を大幅に向上させます。特に、先端技術分野での計算処理の基盤として不可欠な存在です。
GPUとCPUはどちらも計算装置ですが、得意分野は異なります。
| 項目 | GPU | CPU |
|---|---|---|
| 主な役割 | 定型かつ大量の計算処理 | 汎用的な計算処理 |
| 得意分野 | 画像描画、AI学習、大規模数値計算 | アプリ動作、OS管理、計算の順次処理 |
| コア数 | 多数 (数千コア) | 少数 (数コア) |
| 処理方式 | 並列処理 | 直列処理 |
GPUは、同じ種類の計算を同時かつ大量に実行する「並列処理」に優れ、画像描画やAI学習などで真価を発揮します。一方のCPU (Central Processing Unit) は、OSやアプリケーションの制御、分岐処理など多様なタスクを順序立てて処理するのが特徴です。
例えば、動画再生やビジネスアプリ稼働はCPUの得意分野ですが、3Dグラフィックの描画やディープラーニングの学習はGPUが圧倒的に効率的です。このように、GPUとCPUはよく比較されますが、実際は役割を分担し、互いの機能を補い合う関係にあります。
GPUは、大きく以下の3種類に分けられます。
内蔵GPUは、CPUやマザーボードに組み込まれたGPUです。
追加のハードウェアが不要なため、省スペースかつ低消費電力という特徴があります。主にノートPCやビジネス向けPCに搭載され、軽量な画像処理、動画再生、事務作業などに適しています。一方で、3Dゲームや高度な映像編集、AI学習など負荷の高い処理には不向きです。
内蔵GPUは、基本的な処理を効率的に行うための装置として活用されます。
グラフィックボードは、専用のGPUチップを搭載した独立型カードです。高い描画性能と並列計算能力を持ち、3Dゲーム、動画編集、AI学習といった高負荷作業で威力を発揮します。
冷却装置や安定した電力供給が必要なため、主にデスクトップPCやワークステーションで利用されます。内蔵GPUよりも性能が圧倒的に高く、クリエイティブ作業や研究開発の現場では欠かせない存在です。
GPUクラウドは、インターネット経由で高性能GPUを必要なときに利用できるサービスです。
高性能GPUを自社で購入・維持する必要がないため、高額な費用をかけずに利用できます。AI学習、ビッグデータ解析、シミュレーションなど一時的に大規模な計算リソースを活用したい場合に最適です。
クラウドサービスの強みでもある「スケーラブル (拡張可能)」かつ「従量課金制」であるため、効率的かつ経済的に高性能処理を実現できます。
近年、GPUは単なる画像処理装置ではなく、AIやデータ解析、科学技術計算の基盤としてますます重要な役割を担っています。
高速な並列処理能力は、AIの学習や生成モデルの開発、ビッグデータ解析に欠かせません。また、5GやIoTの普及によるリアルタイム処理の需要増や、メタバース・VRコンテンツの高度化もGPUの活用を促進しています。特に、AIデータセンターでの活用は、企業や研究機関に大規模な生成AI開発を支える高性能な処理能力を提供しています。
このように、GPUは映像処理の高度化に加え、データセンターを通じて社会全体のデジタル基盤を支える重要な技術要素となっています。
最新の動向についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
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GPUは、その高い並列処理能力により、さまざまな領域で活用されています。特に以下の分野では、GPUの特性が有効に機能しています。
スーパーコンピューターは、膨大なデータを短時間で処理するために設計された計算機であり、GPUの並列処理性能が最大限に活用されています。具体的には、以下のような高度なシミュレーションが可能です。
これらは従来のCPUでは莫大な時間を要しましたが、GPUによって飛躍的な時間短縮が可能となりました。結果として研究の効率性が高まり、社会課題解決に直結する革新的な成果が生み出されています。
AIの学習や推論では膨大なデータを繰り返し処理しますが、その計算を効率化するためにGPUの高い並列処理能力が活用されています。
例えば、ディープラーニングの学習では、数百万から数千万規模のパラメーターを持つモデルを短時間で訓練するためにGPUが不可欠です。また、自然言語処理や画像認識、生成AIの分野においても、GPUは高精度かつ高速なモデル開発を実現します。
GPUとクラウドサービスを組み合わせれば、必要な演算リソースを柔軟に拡張できるため、初期投資の抑制が可能です。そのため、スタートアップから大企業まで、幅広い業種でAI開発を支える中核的なインフラとなっています。
VRは仮想空間での没入体験を実現する技術であり、リアルタイムで高解像度かつ立体的な映像生成が必要です。GPUは並列処理により数多くの描画命令を瞬時に処理できるため、滑らかなフレームレートや低遅延を維持し、ユーザーの違和感を軽減します。
例えば医療現場では、精密な手術シミュレーションや解剖学的構造の3D可視化など、高精度かつリアルタイムな映像処理が不可欠です。GPUの高速処理機能は、ゲーム用途にとどまらず、VRの活用範囲を飛躍的に広げています。
ゲームにおけるGPUの役割は、単なる映像描画を超え、ユーザー体験そのものを左右する要素となっています。
最新の3Dゲームでは、現実世界と見間違うほどの写実的なライティングやリアルな物理演算、高解像度テクスチャをリアルタイムで処理する必要があります。これはGPUの膨大な並列演算能力でこそ実現可能です。さらにeスポーツ分野では、安定した高フレームレートが競技の公平性や成績に直結するため、高性能なGPUが必須とされています。
GPUの進化は、光の反射や水面の揺らぎ、布の質感、群衆の動きといった繊細な表現を可能にし、プレイヤーの没入感や快適性を支える基盤となっています。
GPUを搭載することで、映像編集や3Dモデリング、AI学習といった高負荷な処理において、膨大なデータを効率的かつ高速に扱えるようになります。
例えば、動画編集ではエフェクトの適用やレンダリングにかかる時間を短縮でき、クリエイターの作業効率が大きく向上します。また、AIや機械学習では大量のデータを短時間で学習できるため、研究や開発の進行が加速するでしょう。さらに、VRや最新のゲーム分野では、リアルタイムで滑らかな映像を描画でき、没入感のあるユーザー体験を実現します。
このようにGPUは幅広い分野でパフォーマンス向上に寄与し、業務や体験の質を高める重要な存在です。
GPUを搭載しても、必ずしもメリットを得られるわけではありません。
一般的な文書作成やインターネット閲覧、メールなどの軽い作業はCPUだけで十分処理可能です。高性能GPUを導入してもコストや消費電力が増えるだけで、得られるメリットは多くありません。また、GPUは発熱量が多く、冷却装置や電源容量の確保が必要なため、小型PCや省電力志向の端末には不向きです。
導入コストも高額になるため、利用用途が限定的な場合は、投資対効果が見合わない可能性もある点に注意しましょう。
GPUを選定する際には、用途や予算、運用環境に合わせた性能を見極めることが重要ですが、さらに以下のポイントも重視することで、長期的に安定した利用が可能になります。
GPUは高負荷処理時に大量の熱を発生させるため、冷却性能の確認が重要です。冷却が不十分な場合、GPUの動作が不安定になったり、寿命が短くなったりするおそれがあります。
ファンの性能、ヒートシンクの設計に加え、PCケース内のエアフローも
含めた総合的な検討が必要です。特に高性能GPUでは、冷却方法 (空冷または水冷) の選択が安定稼働の重要なポイントとなります。
GPUは消費電力やサイズによって設置環境が制約されるため、利用するPCケースや電源ユニットとの相性を確認する必要があります。
小型PCでは大型GPUを搭載できない場合があるほか、電源容量が不足すると動作不良を引き起こします。また、長時間稼働させる用途では、周辺温度や通気性の影響も考慮しなければなりません。
自社の運用環境に合ったGPUを選定することが安定稼働につながります。
高性能GPUは消費電力が大きく、電源ユニットの出力不足や電気代の増加につながる可能性があります。そのため、導入前にGPUが必要とする電力量を確認し、余裕を持った電源を用意することが重要です。
特にデータセンターや研究機関などにおいて、複数台の高性能GPUを同時かつ長時間稼働させる場合は、トータルの消費電力や冷却にかかるコストも考慮する必要があります。
効率的な運用を実現するには、性能と消費電力のバランスが鍵となります。
GPUは高い並列処理性能を備え、AIや映像編集、VRなど多様な分野で活用が進んでいます。一方で、文書作成や軽作業など負荷の小さい用途では、コストや消費電力に見合わない場合もあります。
導入を検討する際は、冷却性能、動作環境、電力量といった観点から、自社に最適なGPUを選択することが重要です。GPUを適切に活用することで、業務効率や研究開発の成果向上を実現できるでしょう。
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