※ 記事制作時の情報です。
GPUクラウドサービス (GPU as a Service) とは、クラウド事業者が保有するGPUリソースを必要な分だけ利用できるサービスを指します。従来のオンプレミス環境のように高価なGPUを自社で購入・管理する必要がなく、インターネット経由で高性能なGPUを即座に利用可能です。
このサービスは、AI開発、ディープラーニング、3Dレンダリング、ビッグデータ解析など、GPUを必要とする幅広い用途に対応します。また、クラウドならではの高い拡張性により、急なプロジェクトや需要変動にも柔軟に対応できる点が大きな特徴です。
GPUクラウドサービスは、コスト最適化や柔軟性、即時性を兼ね備えたGPUの新しい利用形態であり、今後のAI・データ活用を支える重要なインフラとなっています。
GPUクラウドサービスでは、ユーザーはインターネット経由で、クラウド事業者が持つGPUサーバーを利用します。
利用者はクラウドサービスにログインし、必要な設定を行うだけで、仮想化技術によって物理GPUの一部または複数を割り当てられます。1台の物理サーバーを複数ユーザーで効率的に共有でき、利用状況に応じた柔軟なリソース配分が可能です。
また、各ユーザーの処理領域は分離されているためセキュリティ面も確保されており、他の利用者とリソースが干渉することはありません。これにより、AIモデルの学習や画像処理、シミュレーションなど、高負荷な計算を安全かつ効率的に実行できます。
GPUクラウドサービスは、仮想化技術とクラウドの柔軟性を組み合わせることで、「いつでも・どこでも・安全に」GPUを活用できる環境を実現し、企業の開発スピードと運用効率を大きく向上させます。
関連サービス: KDDI GPU Cloud
GPUを利用する主な方法は「クラウド (GPUクラウドサービス)」と「オンプレミス」の2つです。これらは初期費用、運用管理、拡張性の3つの観点で、明確な利点が分かれます。
| 観点 | クラウド (GPUクラウドサービス) | オンプレミスGPU |
|---|---|---|
| 初期費用 | ・一部設定費用が発生する場合もあるが、基本的に初期投資は不要 ・大規模投資なしで最新GPUを活用できる |
・GPU購入費やサーバー構築費など、初期投資が高額 |
| 運用管理 | クラウド事業者がハードウェア管理やセキュリティ対応を代行 | ・自社でハードウェアの保守・セキュリティ対応が必要 ・運用エンジニアが必要で、障害対応の負担も大きい |
| 拡張性 | ・利用状況に応じて即時にリソースを拡張・縮小可能 ・短期案件や急な需要にも柔軟に対応できる。 |
・物理設備に依存し、拡張には時間とコストがかかる ・リソースの増設や変更が容易ではない |
このように、クラウド (GPUクラウドサービス) は初期費用が抑えられ、運用負担を軽減しつつ高い拡張性を実現できるのが大きな特徴です。
一方でオンプレミスは、自社の要件に応じて細かくカスタマイズや制御ができる一方、コスト面と柔軟性に課題があります。
オンプレミスGPUを導入・運用する際には、主に以下の3つの課題に注意が必要です。
オンプレミスでGPUを導入する際の最大の課題は、高額な初期投資と維持コストです。
自社でGPU環境を構築する場合、高性能GPUやサーバー機器の購入費だけでなく、冷却・電源・設置スペースなどインフラ全体の整備が必要です。さらに、機器の老朽化に伴う交換や保守、セキュリティ対策といった運用面の負担も発生します。
例えば、最新のハイエンドGPUは1枚当たり数十万~数百万円にもなり、大規模システムの場合は数千万円規模の初期投資が必要です。さらに、GPUは発熱量が大きいため、冷却設備や空調コストが増加します。常時稼働に伴う莫大な電力消費も、無視できない電気代として発生します。
これらのコストは企業にとって大きな負担となり、投資回収に長い期間を要するケースも少なくありません。
オンプレミスGPU環境の運用には、高度な専門知識を持つ人材が不可欠で、人材面・運用面での負担が大きいことが大きな課題です。
GPUサーバーを安定稼働させるには、ドライバ更新、ファームウェア管理、OSやセキュリティパッチの適用など定期的なメンテナンス作業が必要です。また、障害発生時に即時対応できる体制を整えるため、専門的なエンジニアの人件費がかかります。GPUに精通した人材の確保は難しく、採用や育成にも時間とコストを要する点が、企業にとって大きな課題です。
結果として、インフラ管理にリソースが割かれ、本来注力すべき業務の効率が低下するおそれがあります。
オンプレミス環境では、需要に合わせてGPUリソースを増減する柔軟性に課題があります。
例えば、繁忙期にGPUの需要が急増しても、物理的なGPU増設には発注・設置・設定といった手間と時間がかかります。一方、閑散期には高額なGPU資源が遊休状態となり、コスト効率が著しく低下します。また、ラックスペースや電力容量、冷却設備といった物理的な制約がある点にも注意が必要です。
このように、需要の増減に応じてリソースを最適化できない点は、事業スピードが求められる現代において大きな制約となります。
GPUクラウドサービスを導入する主なメリットは以下の3点です。
GPUクラウドサービスは、専用機材の購入やサーバールームの整備といった高額な初期投資が不要です。必要なときに必要な分だけ課金される従量課金制のため、稼働時間や使用量に応じてコストを最適化できます。
例えば、AIモデルの開発段階で数十台のGPUを短期間だけ集中的に利用し、稼働が落ち着いたら利用を最小限に抑えるといった柔軟な運用が可能です。突発的なプロジェクトや短期間の利用でも、設備投資リスクを負わずに導入できるため、予算を効率的に活用できます。
GPUクラウドサービスの導入により、自社の運用・保守にかかる負担を大幅に軽減できます。
GPUサーバーのハードウェア管理、保守、障害対応はすべて事業者が代行します。また、GPUドライバやソフトウェア環境も常に最新の状態に維持されるため、セキュリティリスクの低減やパフォーマンス低下の防止につながるでしょう。
結果として、社内のエンジニアはAIアルゴリズムの改良や新規ビジネス企画など、より付加価値の高いコア業務に注力できるようになります。これにより、人的リソースの最適化が進み、組織全体の生産性向上が実現します。
GPUクラウドサービスは、ビジネス環境の変化に合わせてリソースを即座に調整できる柔軟性を備えています。
オンプレミスでは新たなGPU導入に数週間から数カ月を要するのに対し、クラウド環境なら数分から数時間で追加リソースを確保することが可能です。新規サービスの立ち上げや大型プロジェクトで急激に演算能力が必要になった際でも、短期間で大規模なGPUを確保し、開発スケジュールの遅延を防げます。逆に需要が落ち込めばすぐに縮小できるため、遊休リソースによるコストの無駄を抑制できます。
繁忙期・閑散期といった需要変動への対応はもちろん、予期せぬ市場変化や新しい事業機会にも柔軟かつ即座に追随できるため、企業は俊敏な経営判断を実現可能です。
自社に最適なGPUクラウドサービスを選ぶためには、次の3点を意識することが重要です。
GPUクラウドサービスを導入する際は、まず自社の利用目的を明確にすることが欠かせません。
AIモデルの学習や推論、ビッグデータ解析、映像・3Dレンダリング、シミュレーションなど、用途ごとに必要とされるGPUの性能やメモリー容量は異なります。例えば、AIモデルの学習には大規模な並列演算性能とメモリー容量の大きいGPUが求められます。一方で、映像・3Dレンダリングのようなグラフィック処理では、GPUコアの演算性能やVRAM容量が重視されます。
利用目的を整理することで、過剰な性能への投資を避け、必要十分なGPUの選択が可能です。
GPUクラウドサービスは、多種多様なGPUモデルをラインアップしており、それぞれ得意分野が異なります。
例えば、NVIDIA H100 (外部サイトへ遷移します) のようなハイエンドGPUはAIの大規模学習や高度な科学計算に、NVIDIA T4 (外部サイトへ遷移します) などのGPUは推論処理や軽量なワークロードに向いています。GPUの特徴を踏まえ、選定時には演算能力 (TFLOPS)、メモリー容量、対応するソフトウェアとの互換性などを基準に検討することが重要です。
自社の業務に見合った性能を選ぶことで、コストと効率のバランスを最適化できます。
関連記事: 大阪堺データセンター1月稼働開始
GPUクラウドサービスの料金体系は大きく「従量課金制」と「長期契約 (予約)」に分かれます。
従量課金制は、必要なときだけ利用し、その分だけを支払うため、短期プロジェクトや利用頻度が変動する場合に適しています。一方の長期契約は、一定期間の利用を前提に割引が適用され、安定的にGPUを利用する企業に適しています。ただし、料金比較の際には、データ転送費やストレージ利用料などの隠れコストにも注意が必要です。
それぞれの総費用を試算した上で、自社の利用パターンに適した料金体系を選ぶことが、コスト最適化の鍵となります。
主要なGPUクラウドサービスプロバイダーはAWS、Google Cloud、Microsoft Azureなど大手クラウドベンダーが挙げられます。各サービスは特徴が異なるため、自社の目的や予算に応じて、どの要素を重視するかを整理した上で比較検討することが重要です。
| サービス | 特徴 |
|---|---|
| Amazon Web Services | ・最新GPUを搭載したインスタンスを提供 ・EC2 UltraClusters (外部サイトへ遷移します) など大規模仮想クラスターに対応 ・大規模AIモデルなどに対応できる高い演算性能 |
| Google Cloud Platform | ・多種多様なGPUを利用可能 ・課金が秒単位のため無駄なコストを削減できる ・AI/ML開発、科学計算、3Dレンダリングなど幅広いワークロードを効率的に処理可能 |
| Microsoft Azure | ・エンタープライズ向けや既存Microsoftソフトウェアとの親和性が高い ・企業システムとの統合、ID管理・アクセス制御、契約・サポート体制などに強み ・信頼性や安定稼働を重視する用途に適している |
GPUクラウドサービスは、高額な初期投資や運用負担、拡張性の不足といったオンプレミスGPUの課題を解決する有効な選択肢です。クラウドの活用により、コスト最適化、業務効率化、柔軟なリソース活用が可能となり、AIやデータ分析といった成長分野での競争力を高められます。
自社に最適なGPUクラウドサービスを選び、ビジネスのスピードと柔軟性の両立を実現しましょう。
KDDIは、NVIDIA社の高性能GPUを採用したGPUクラウドサービス「KDDI GPU Cloud」を提供します。キャリアグレードのネットワーク環境下で最新のガバナンスが担保されたセキュアな環境により機密情報を用いた学習が可能です。セキュアで安定した環境でモデル開発に集中いただけます。「KDDI GPU Cloud」に加え、多彩なサービスをご用意しておりますので、お客さまの用途や目的に合わせて、最適なAI開発環境をご提案します。お気軽にKDDIへご相談ください。