※ 記事制作時の情報です。
――まず、法人お客さまセンターの業務について教えていただけますでしょうか?
菅野 法人お客さまセンターは、KDDIのサービスをご契約いただいている法人のお客さまからのお問い合わせを受ける窓口です。お電話でのお問い合わせのほか、ホームページ上のお問い合わせフォームからご連絡をいただく場合もあります。お客さまからのご相談やご不明点など、さまざまなお問い合わせに対応しています。
――具体的にはどのようなお問い合わせが多いのでしょうか?
菅野 ご利用中のサービスに関する契約内容や料金、各種手続きについてのご質問を多くいただきます。「新規で申し込みたいけど、どんなプランがあるか」といったご相談も寄せられます。また、部署の引っ越しや新しい支店・営業所の開設に伴う電話やインターネットの設定などの、固定通信に関するお問い合わせも多くあります。
一つひとつのお声に真摯に向き合い、お客さまにとってより良いご提案や回答を差し上げるよう心がけています。
――お客さまから日々寄せられる声は、さまざまな改善につながっていると思います。具体的な取り組みについて教えていただけますか?
菅野 お客さまからいただくお問い合わせの中には、「こうしてほしい」というご意見やご要望も多く含まれています。そのようなお声に応える取り組みとして、「お客さまの声改善活動」を進めています。お問い合わせ対応の中でいただいたご意見やご要望はもちろんのこと、「おそらくこうした方がいいのではないか」とこちらで想像できることも含め、本当の潜在ニーズを探りながら応対しています。そして、コミュニケーター (現場スタッフ) から声を拾い上げて、改善につながると思われるものについては関係部署と連携し、改善につなげています。
「お客さまの声改善活動」は以前から行っていましたが、2023年ごろからさらに力を入れて推進しています。「お客さまの声は大事だ」という意識はあったものの、なかなか着手できていなかった部分があったんです。近年、サービスに対するお客さまの期待はより高度化・多様化しています。その声を迅速に反映するため、改めてお客さまのために何ができるかをセンターで話し合った結果「きちんとお客さまの声を積極的に拾い上げてサービス向上につなげていこう」という機運が高まり、改善活動に本腰を入れ始めました。
――潜在ニーズをキャッチするというのは、お客さま自身も言語化できていないニーズをつかむということで、とても難しいのではないでしょうか?
世戸 確かに、お客さまのご要望の真意、潜在ニーズを探るのは課題の一つです。日々のお客さま対応では、改善要望に限らず「本当にやりたいこと」を言語化できていないケースがよくあります。そんなとき、「本当はこういうことをおっしゃりたいのかな?」と考えながら、地道にヒントを拾っていくしかないと思っています。
菅野 さらに、コミュニケーターが残す履歴を読み返し、「実は裏にこんなニーズがあるのでは?」と推測しながらコミュニケーションを図ることもあります。「こういう内容のお問い合わせが来たときには、ここまで踏み込んでお伺いしてみよう」といった指導を行い、コミュニケーターを育成していくんです。もちろん個人の経験やキャリアによって差はありますが、潜在ニーズを掘り起こすスキルはデスクごとの育成の中で根付かせています。そのため、センター全体としてそのスキルは比較的培われてきていると思います。
――今年度から新たに取り組まれていることについて、具体的に教えていただけますか?
菅野 今年度から「お客さまの声改善活動」の改善件数をKPI (重要業績評価指標) として設定し、今まで以上にお客さまの声を意識して対応するようスタッフに促しています。数値目標を明確にしたことで、スタッフにとっても分かりやすいですし、モチベーションの向上につながっていると思います。
世戸 KPI化したことで大きく変わった点があります。管理者側では、お客さまの声が「どれくらい上がっているか」「似た内容がどれだけあるか」「解決率・実現率はどの程度か」といったことを数値で可視化して把握できるようになりました。コミュニケーターも「お客さまからいろいろなご意見を聞いてみよう」という意識が高まりますし、管理者も「ただ聞いて終わり」ではなく「どう改善につなげるべきか」「こういう提案の仕方ならより改善できるのではないか」といった発想で動けるようになりました。KPI化によって組織全体の意識が変わり、実際の行動もだいぶ変わってきたと感じます。
藤川 KPI設定の効果は運用現場でも感じています。お客さまの声を起点に「お客さまと一緒に学んでいく」という姿勢が強まりました。たとえ難しいことを言われても一緒に考えてみる。その積み重ねで業務の幅も広げていけますし、実際にそれが現場の運用改善につながったケースもありました。
――では次に、実際にお客さまの声をどのように改善につなげているのか、そのプロセスについて教えてください。
菅野 基本的な流れとしては、まずコミュニケーターがお電話を受ける中で、お客さまのご意見やご要望と思われるものをキャッチし、その内容を管理者に共有・報告します。管理者は各コミュニケーターから上がってきた声を具体的にブラッシュアップし、関係部署に共有します。
坂野 コミュニケーターはお客さまと同じ画面やホームページを見ながら対応するため、「この表現はわかりにくい」「確かにこういう書き方も分かりやすい」という気づきが生まれます。お客さまと直接やり取りしているコミュニケーターだからこそ、「お客さま目線」での改善点を見つけやすいと思っています。
――お客さまの声を改善へつなげていく中で、特に意識されていることはありますか?
世戸 新しい運用や変更について社内から案内があった際、現場としては「そういうものなんだな」と受け入れてしまいがちです。でも、いざエンドユーザーであるお客さまの立場で考えてみると、それが不便だったり「もっとこうしてほしい」というご要望が出てくるケースがよくあります。業務に従事している人は気づかないことがよくあり、お電話でお客さまからご指摘を受けて初めて、改善すべき点に気づかされる場面がよくあるんです。
ですから、そのような声をいただいたときにはお客さまの立場に立って真摯に受け止め、必ず上に提案として上げるようにしています。その場限りで終わらせず、きちんと改善につなげる。そしてお客さまの声がたくさん集まれば集まるほど改善の可能性も高まりますから、一つのご意見も軽視せず、全ての声を確実に拾い上げるよう現場に伝えています。
藤川 私も「固定観念にとらわれない」ことが大事だと思っています。どうしても長く業務に携わっていると「これはできないものだ」と思い込んでしまうことがあります。しかしお客さまはサービスの制約にとらわれず、率直に「こうしてほしい」というご要望を伝えてくださるので、新たな改善のヒントにつながります。まずは背景も含めてしっかり耳を傾け、まずはできる方法を考え、難しい場合も理由をきちんとご説明することで、ご納得いただけると考えています。
――実際に、改善につながった事例があれば教えてください。
坂野 au端末不具合の対応に関する改善です。以前は、法人契約のお客さまは電話対応のみで、auショップでは対応できませんでした。「法人契約でも直接auショップで対応してほしい」という声は以前から多く寄せられていたため、法人のお客さまもauショップで一部対応できるように改善しました。
菅野 もう一つ、画面共有サポートの導入によるサービス改善についてご紹介します。これは「お客さまのためになるだろう」という現場発案で実現した取り組みです。従来、お電話口で口頭のみのご案内をする際、お客さまの操作画面が見えない状態なので、言葉だけは伝わりにくいケースがありました。一部のサービスで画面共有サポートを導入してからは、お客さまの画面を確認しながら案内できるようになったので、対応がスムーズになりました。お客さまとコミュニケーター双方にとって大きな効果があった改善だと思います。
――そうした改善活動をやっていて「よかった」と実感する瞬間はどんなときでしょうか? お問い合わせ件数の変化やお客さまからのポジティブな反応など、人それぞれだと思います。ぜひ教えてください。
坂野 やはりお客さま自身が不便に思っていることに対応できるようになるのは大きいです。以前は「申し訳ないな」と感じていたことでも、改善によって「できますよ」と当たり前に答えられるようになる。対応する側として、「もちろんその対応は可能です」と自信を持って言える場面が増えるので、コミュニケーターにとっても業務がやりやすくなります。
藤川 法人対応ならではのことですが、同じお客さまから繰り返しお問い合わせをいただくことがよくあります。ある企業のご担当者さまから以前いただいたご意見をもとに改善を行い、再びそのお客さまからお電話をいただいた際に、「変わったね!」と気づいていただけたことが何度かありました。お客さまご自身に変化を実感してもらえるのは、大きなやりがいにつながっています。
世戸 直接「よくなったね」と声をいただくこともありますし、アンケートの中で喜びを伝えてくださるお客さまもいらっしゃいます。そういったフィードバックを目にするたびに「ああ、やってよかったな」と感じます。それから、現場で日々電話対応してくれているコミュニケーターたちに、「皆さんが上げてくれた意見のおかげでお客さまの役に立つ改善ができましたよ」と伝えられることも嬉しいです。もし意見を上げて何も変わらなければ、現場のモチベーションが下がりかねません。お客さまの役に立つことが現場の人たちにとって一番の喜びでもあるので。
菅野 お客さまの声を受け止めて改善し、それによってコミュニケーターもその先のお客さまも「声を上げてよかったな」「電話をかけてよかったな」と思える環境を作ることが、何より大事だと考えています。法人お客さまセンターは、auショップと並んでお客さまの生の声を最も聞ける場所です。その貴重な声をしっかり受け止めて改善につなげる。そしてそれが次の活動にもつながっていく。そんなよいスパイラルを回していけるのが理想ですね。どこかでこの流れが途切れてしまうと、せっかくの声も活かされず意味がなくなってしまいます。そうならないように、これからも継続して取り組んでいきたいと思います。
――改善活動のお話を中心に伺ってきましたが、応対品質の向上にも力を入れて取り組まれていると思います。具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか?
菅野 品質向上の取り組みとして「 AmiVoice(R) Communication Suite (以下 アミボイス) (注)」というツールを導入しました。コンタクトセンター業界では広く使われているツールで、通話内容を自動でテキスト化し、コミュニケーターの対応がよかったかどうかをAIで自動評価できるのが特長です。
弊社の法人お客さまセンターでも数年前から導入していますが、今後、すべての通話音声データをアミボイスで評価できるようになったため、改善点をすぐに見つけ対応することで、さらなる品質向上につなげていく予定です。
世戸 例えば、敬語の使い方や説明の分かりやすさに課題がある場合、コミュニケーターは「何がよい対応なのか」を明確に理解でき、自己改善がしやすくなっています。
これにより、どのデスクでも、どのコミュニケーターでも、同じレベルの丁寧さと分かりやすさで対応できるようになっています。
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。法人お客さまセンターとして、これから目指していきたいことは何でしょうか?
菅野 法人お客さまセンターの重要な役割は、お客さまから直接いただいた声をきちんと形にすることだと考えています。最近ではお電話以外にもチャットやボットで解決するケースが増え、24時間対応ということでお客さまにも便利にご利用いただいています。それでもお電話で話したいというニーズは残っています。特にホームページなどを見ても解決できなかったお客さまがお電話をくださるわけですから、その方たちの最後の拠り所として、安心して問題を解決できる窓口であり続けたいと思っています。
また、法人のお客さまの場合、その先にはエンドユーザーがいらっしゃるケースも多いですよね。「KDDIと契約いただいている法人のお客さまが、その先のお客さまにも安心してサービスを提供できるようにサポートする」という視点が大切だと日々感じています。
藤川 今後DXが進んでいく中でもお電話によるサポートのニーズは一定数あると感じています。だからこそ、現状の品質を維持するだけでなく、さらに引き上げていくことが今後も重要だと思っています。お電話だからこそできる寄り添ったサポートを強みに、引き続き頑張っていきたいです。