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NaaSとは回線、ルーター、ファイアウォールなどのネットワーク機能をクラウド上で提供する仕組みです。企業は物理機器を自社で購入・管理する必要がなく、利用したい機能や通信量をサブスクリプション型のネットワークサービスとして契約します。サブスクリプション型ネットワークサービスの主な特徴は以下のとおりです。
これにより、初期投資を抑えながら、事業規模や利用状況の変化に応じて柔軟にネットワーク環境を構築・変更できる点が大きなメリットです。
関連サービス: ネットワーク
NaaSは、SDN (Software Defined Networking) やNFV (Network Functions Virtualization) といったネットワーク仮想化技術を基盤として提供されるサービスです。
SDNによりネットワーク制御を集中管理し、NFVによってルーターやファイアウォールなどの機能をソフトウェアとして提供することで、物理構成に依存しない柔軟なネットワーク運用が可能になります。
また、NaaSではオンデマンドで帯域を調整できます。例えば、月末処理やキャンペーン期間など、通信量が一時的に増える場合でも、管理画面から必要な分だけ帯域を拡張可能です。利用後はすぐに元へ戻せるため、常に余剰な回線を確保する必要がありません。
さらに、従量課金制を採用している点も特徴です。使用した帯域や期間に応じて料金が発生するため、繁忙期のみコストが増え、通常時は抑えられます。これにより、通信需要の変動に対応しながら、無駄のないネットワーク運用が可能になります。
関連サービス: KDDI SD-Network Platform
NaaSと混同されやすいものに「SASE (Secure Access Service Edge:サシー)」があります。NaaSがネットワーク基盤そのものを柔軟に提供するサービスであるのに対し、SASEはネットワークとセキュリティを統合して安全なアクセス環境を実現する考え方です。
両者は補完関係にありますが、以下のように目的が異なります。
NaaSの主な目的は、拠点間通信やクラウド接続などのネットワークインフラを、柔軟かつ効率的に提供することです。回線や帯域の構成変更を迅速に行えるようにすることで、ネットワーク運用の複雑化やコスト増大といった課題を解決します。
一方でSASEの目的は、ユーザーや端末が社内外のどこからアクセスしても、業務システムを安全に利用できる環境を整えることです。VPN集中による遅延や、拠点ごとに異なるセキュリティ対策といった課題を解消し、ゼロトラストを前提としたアクセス制御を実現します。
NaaSの主な機能は、SDNやSD-WANを活用した通信制御、帯域最適化、ネットワーク構成の一元管理です。拠点追加や通信量増加にも柔軟に対応でき、安定したネットワーク基盤を提供します。
一方でSASEは、SD-WANを基盤としつつ、SWG、CASB、ZTNA、FWaaSといったクラウド型セキュリティ機能を統合して提供します。SD-WANは両者に共通する要素ですが、NaaSはネットワーク基盤の機能を、SASEはセキュリティ機能を中心としている点が大きな違いです。
昨今、働き方改革やIT利用形態の変化により、従来型ネットワークでは対応が難しくなり、柔軟に構成を変更できるNaaSが注目されています。本章では、NaaSが注目されている背景を詳しく解説します。
NaaSが注目される理由の一つとして、コロナ禍や働き方改革の一環で急拡大したテレワークが挙げられます。
現在、多くの企業でリモートワークが導入され、従業員が自宅や外出先から業務システムへアクセスすることが一般化しました。従来のネットワークは、社内から閉域網を通じてシステムに接続する前提で構築されていたため、VPN装置へのアクセス集中による遅延や障害が課題となりました。その結果、データセンター経由ではなく、クラウドサービスへ直接接続する構成へ移行する企業が増加しています。
こうした環境変化に対し、柔軟に帯域や接続方式を調整できるNaaSが有効な選択肢として注目されています。
クラウド利用の拡大に伴う通信トラフィックの増大も、NaaSが注目される要因です。
昨今はSaaSやIaaS、PaaSを組み合わせたマルチクラウドや、オンプレミスとクラウドを併用するハイブリッドクラウドの導入が進んでいます。これにより、クラウド間通信や拠点からの通信が増え、ネットワークトラフィックは複雑化し、増大し続けています。Web会議やクラウド上でのデータ分析といった大容量のやり取りが増えたことで、既存回線の帯域がひっ迫し、業務アプリの応答速度が低下するケースも少なくありません。
NaaSを活用すれば、トラフィックの可視化や優先制御に加えて、オンデマンドでの帯域拡張が可能です。通信量増加による性能低下を抑え、安定した利用環境を実現できます。
拠点増加やテレワーク対応によりネットワーク管理が複雑化していますが、これらの一元管理を可能にする手段としてNaaSが活用されています。
ネットワーク運用の複雑化は、情報システム部門の大きな負担となっています。拠点、クラウド、リモートアクセスなどを個別に管理する場合、それぞれ異なるツールや設定が必要です。
また、障害発生時には回線・機器・クラウドのどこに原因があるのか切り分けるだけでも時間を要します。例えば、通信遅延が発生すると回線事業者、セキュリティ機器、クラウドサービスを順に確認しなければならず、対応が後手に回るケースもあります。
NaaSではネットワーク全体を一元的に可視化・管理できるため、設定変更や障害対応の工数を大幅に削減し、限られた人員でも安定運用を実現できます。
NaaSはネットワークを柔軟かつ効率的に提供するために、以下の3つの機能を組み合わせています。
SDN (Software Defined Networking) は、ネットワークをソフトウェアで一元制御する技術です。
ネットワーク機器ごとに分散していた制御機能を切り離し、中央のコントローラから集中管理します。これにより、ルーターやスイッチを一台ずつ設定する必要がなくなり、設定ミスや作業工数を大幅に削減できます。
また、障害を検知した際に自動で最適な経路へ切り替える動的ルーティングにより、通信断を防ぐことが可能です。
SD-WANはWANを仮想化し、通信を最適化する技術です。
専用回線とインターネット回線を論理的に束ね、アプリや通信内容に応じて最適な経路を自動選択します。特に、クラウドサービスへの通信を直接インターネットへ分岐させる「インターネットブレイクアウト」により、データセンター経由による遅延を回避可能です。
これにより、Web会議やSaaS利用時の通信品質が向上し、拠点間通信も安定します。
関連サービス: KDDI SD-Network Platform
NFV (Network Functions Virtualization) は、ネットワーク機能をソフトウェアとして提供する技術です。
ファイアウォールやロードバランサー、UTMなどのネットワーク機能を、専用ハードウェアではなく仮想マシンやコンテナ上で動作させます。これにより、物理的な機器増設を行わずに機能追加や性能向上が可能です。通信量を増やしたい場合も、ソフトウェア上で対応できます。
需給に応じて柔軟にスケールできるため、急な事業拡大やトラフィック増加にも迅速に対応できる点がメリットです。
NaaSの主な導入メリットは以下の4つです。これらのメリットにより、従来型ネットワークの課題を包括的に解決できます。
NaaSはルーターやファイアウォールなどのネットワーク機器を自社で購入・保有する必要がなく、CapEx (資本的支出) を抑えられる点がメリットです。
従来のネットワーク構築では、耐用年数が数年に及ぶ機器を一括購入するため、多額の初期投資を必要としていました。NaaSではサブスクリプション (月額課金) 型で費用を支出するため、運用費用としての平準化が可能になります。
また、コスト予測を立てやすく、突発的な設備投資が発生しにくい点もメリットです。
NaaSの導入により、情報システム部門の負担を軽減できます。
ネットワーク監視や障害対応、ソフトウェア更新などの運用業務をサービスベンダーが担うため、担当者は日常的な保守作業から解放されます。
さらに、一元化されたダッシュボードで全拠点の通信状況や設定を確認できるため、変更作業やトラブル対応の工数も削減可能です。結果的に、少人数体制でも安定的に運用できます。
通信量の増減や拠点の新設・統廃合に対し、オンデマンドで簡単に帯域や機能を変更できます。
特にグローバル展開時には、海外拠点においても国内と同一のネットワークポリシーを短期間で適用可能です。現地ベンダーとの個別契約や複雑な回線調整を最小限に抑えられるため、拠点立ち上げまでの期間を大幅に短縮できます。
NaaSは脅威情報の更新やセキュリティ機能のアップデートが自動で適用されるため、自社で個別対応する負担を減らしつつ、常に最新のセキュリティ対策を維持できます。ゼロトラストを前提とした設計により、利用者や端末ごとに適切なアクセス制御が可能です。
昨今拡大しているテレワークにおいても、社内外を問わず統一したセキュリティポリシーを適用できるため、不正アクセスや情報漏えいリスクの低減につながります。
NaaSの導入にあたっては、既存環境や運用体制を踏まえた事前の整理が重要となります。主な課題は以下の2点です。
NaaS導入時は、レガシーシステムやオンプレミス環境との互換性が課題になります。
多くの企業では基幹システムや業務アプリがオンプレミス環境に残っており、NaaSと既存ネットワークを併用するハイブリッド構成が一般的です。そのため、単純にネットワークを置き換えるのではなく、段階的な移行を想定した設計が重要です。
特に、通信方式やルーティング設計、セキュリティポリシーの違いを考慮せずに導入すると、業務アプリが正常に動作しなかったり、通信遅延が発生したりするおそれがあります。
接続要件を整理し、検証環境で確認することで、本番移行時のトラブルを防止可能です。
| 確認項目 | 確認内容 | チェック結果 |
|---|---|---|
| 既存回線との接続可否 | 専用回線・インターネット回線・VPNとNaaSが問題なく接続できるか | □ |
| IPアドレス設計 | 既存ネットワークとのIP重複やアドレス設計の整合性が取れているか | □ |
| ルーティング設定 | 通信経路が適切に制御され、意図しない経路を通らないか | □ |
| セキュリティポリシー | ファイアウォールやアクセス制御ルールがNaaS環境でも適用可能か | □ |
| 業務アプリ通信要件 | ポート・プロトコル・通信方向などの要件を満たしているか | □ |
NaaS導入を成功させるには、ベンダー選定が重要です。
障害発生時の対応がベンダー任せになりやすく、復旧までの責任範囲が不明確になりやすい点が課題です。そのため、SLA (サービス品質保証) において稼働率や障害時の対応時間が明確に定義されているかを確認する必要があります。
PoP (接続拠点) の数や配置については、自社拠点から接続ポイントまでの距離が長いと通信遅延や品質低下を招くおそれがあるため注意が必要です。国内外に十分な拠点を持つベンダーであれば、低遅延で安定した通信が期待できます。
さらに、利用拡大に伴って想定外のコストが発生しやすいという課題があるため、料金体系の明確さも重要な判断材料です。帯域追加や機能拡張時の費用が分かりやすく、価格の透明性が高いベンダーを選ぶことが、計画的なコスト管理につながります。
あわせて、24時間対応のサポート体制や日本語での技術支援、導入支援実績などを確認することで、長期的に安心して利用できるベンダーを選定できるでしょう。
NaaSはネットワークをサブスクリプション型で利用できるサービスであり、テレワークやクラウド活用が進む現在のビジネス環境に適した選択肢です。柔軟な構成変更や運用効率化を実現し、コスト削減やセキュリティ強化にも貢献します。一方で、既存環境との互換性やベンダー選定などの課題もあるため、自社のネットワーク要件を整理したうえで段階的に導入することが重要です。
また、クラウド利用や働き方の多様化が進むなかでは、ネットワークだけでなくセキュリティ面も一体的に見直す必要が高まっています。NaaSの導入と合わせて、ゼロトラストの考え方を取り入れることで、より安全で柔軟なネットワーク環境を整備しやすくなるでしょう。
「マネージド ゼロトラスト」は、クラウド利用を前提とした安全なアクセス環境を、ネットワーク・デバイス・ID管理まで含めてワンストップで提供します。導入後の運用・監視もKDDIが包括的に対応し、セキュリティ運用の負荷を軽減します。また、国内外の拠点においても利便性とセキュリティを両立させ、変化する働き方に柔軟に適応可能です。
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