※ 記事制作時の情報です。
WAFはワフと読み、Webアプリケーションを狙った攻撃からサイトやシステムを守るセキュリティ対策です。ファイアウォールとは次のような点が異なります。
WAFは、Webアプリケーションを対象とした攻撃からシステムを守るためのセキュリティ対策です。Webサイトへ送られる通信内容を確認し、不審な操作や攻撃と判断されるアクセスを自動的に遮断します。
例えば、データベースへ不正な命令を送り込み情報を盗み出そうとするSQLインジェクションや、利用者のブラウザで悪意あるプログラムを動かすクロスサイトスクリプティング (XSS) への対策が可能です。サーバーの手前で通信をチェックすることで、アプリケーションの弱点を突く攻撃を未然に防ぎ、サービスの安全な運用を支えます。
独立行政法人情報処理推進機構 (IPA) が公開した「情報セキュリティ10大脅威2025 (組織編)」において、Webサービスの弱点を悪用する「システムの脆弱性を突いた攻撃」が3位にランクインしました。これは、Webアプリケーションの不備を狙った不正アクセスや情報漏えいが、依然として深刻なリスクである証拠といえるでしょう。
インターネット上に公開されるWebサービスは企業規模を問わず攻撃対象となるため、継続的な防御対策の重要性が高まっています。
出典: IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2025」
WAFとファイアウォールは、防御対象となる範囲が異なります。
| 項目 | ファイアウォール | WAF |
|---|---|---|
| 保護対象 | ネットワーク | Webアプリケーション |
| 主な防御 | 不正接続・DoS | SQLインジェクション・XSS |
ファイアウォールとWAFの決定的な違いは、保護する通信の「階層」にあります。前者はネットワーク層やトランスポート層 (L3/L4)、いわば通信の宛先や通り道を管理する層で動作し、IPアドレスやポート番号を基に通信の可否を判断するのが一般的です。
一方、WAFはアプリケーション層 (L7)、つまりWebサイトでの会話内容そのものを扱う層で通信内容を解析し、Webリクエストの中身まで確認します。
例えば、通常の通信に見えても不正な命令が含まれている場合、ファイアウォールでは検知できませんが、WAFはHTTP通信の内容を解析して攻撃を識別できるのです。両者を組み合わせることで、多層的な防御が実現します。
WAFは、Webサーバーへ届く通信を監視し、不正アクセスを検知・遮断する仕組みです。流れは次のとおりです。
検知にはシグネチャ方式と行動分析が使われます。
WAFは、Webサイトへの通信を一つひとつ精査し、多角的に攻撃を判定する仕組みです。まず通信データを解析し、過去の攻撃パターンと照合するシグネチャ方式で、不正なSQL命令や不審なスクリプトを即座に遮断します。
そして、通常とは異なる振る舞いを検知する行動分析により、アクセスの急増や不規則な操作などの異常をいち早く捉えます。 これらを組み合わせることで、進化し続ける新たな攻撃にも柔軟に対応し、安全と判断した通信だけをサーバーへ届けることが可能です。
WAFは、Webアプリケーションを狙った攻撃への対策として利用されます。
SQLインジェクションは、Webサイトの入力フォームなどを悪用し、データベースへ不正な命令を送り込む攻撃です。例えば、本来はユーザー名を入力する欄に「' OR '1'='1」といった特殊なSQL構文を入力すると、認証処理を回避される可能性があります。こうした不自然な命令を通信内容からいち早く検知し、Webサーバーへ届く前に遮断するのがWAFの役割です。
実際に、企業が運営するECサイトがSQLインジェクション攻撃を受け、数十万件の顧客情報が漏えいした事例もIPAに報告されています。アプリケーションの修正前でも防御できる点は重要であり、情報漏えいリスクを低減する対策として有効です。
出典: 独立行政法人情報処理推進機構 セキュリティセンター 「コンピュータウイルス・ 不正アクセスの届出事例 2021年下半期(7月~12月)」 (PDF)
クロスサイトスクリプティング (XSS) は、Webサイトの入力フォームやコメント欄などを悪用し、悪意あるプログラムを埋め込む攻撃です。利用者がそのページを閲覧すると、仕込まれたスクリプトがブラウザ上で実行され、ログイン情報やCookieと呼ばれる認証データが第三者に送信される可能性があります。その結果、利用者になりすました不正ログインや情報の書き換えといった実害が発生しかねません。
WAFは通信内容を解析し、不審なスクリプトや危険なコードを含むリクエストを検知して遮断します。これにより、情報窃取やセッションハイジャックなどの被害を防ぎ、安心して利用できるWebサービス環境の維持につながります。
DDoS攻撃は、大量のアクセスを特定のWebサイトやサーバーへ送りつけ、サービス停止を引き起こすことを目的としたサイバー攻撃です。多数の端末から同時に通信が発生すると、サーバーの処理能力が限界を超え、正規の利用者がページを閲覧できなくなるなどの影響が生じます。WAFには、短時間に集中する異常なリクエストを検知し、不審な通信を制限することでサーバー負荷を軽減する機能を備えるものがあります。これにより、サービス停止のリスクを抑え、安定したサイト運用につなげることが可能です。
ただし、すべてのWAFが大規模なDDoS攻撃へ対応できるわけではありません。攻撃規模に応じて、専用のDDoS対策サービスやネットワーク防御と組み合わせる運用が重要になります。
WAFは導入形態によって種類が分かれます。
| 種類 | 特徴 | 主な利用場面 |
|---|---|---|
| クラウド型 | 導入が容易 | クラウド環境 |
| アプライアンス型 | 高性能 | 大規模運用 |
| ホスト型 | 個別保護 | 特定サーバー |
クラウド型WAFは、クラウドサービスとして提供されるWAFをインターネット経由で利用する方式です。自社内に専用機器を設置する必要がないため、比較的短期間で導入できます。Webサイトへの通信はクラウド上で監視・分析されるため、既存のシステム構成を大きく変えることなく、手軽にセキュリティレベルを引き上げることが可能です。
初期費用を抑えながら利用を開始でき、アクセス量の増減にも柔軟に対応できます。さらに、拠点や利用者が増えても設定変更がしやすく、成長に合わせて使い続けやすいことも利点です。
アプライアンス型WAFは、専用の機器を自社ネットワーク内に設置して利用するタイプのWAFです。通信を社内環境で直接処理できるため、高い処理能力を確保しながら柔軟なセキュリティ設定を行える点が特徴です。アクセス数が多いWebサービスや、厳格なセキュリティ管理が求められるシステムで採用されるケースが多く見られます。
また、自社ポリシーに合わせた細かな制御が可能なため、独自要件への対応もしやすくなります。外部環境に依存せず運用できる点も安心材料の一つです。一方で、機器の購入や設置作業が必要となるほか、運用やメンテナンスには専門知識が欠かせません。継続的な管理体制を整えたうえで導入を進めることが求められます。
ホスト型WAFは、Webサーバーにソフトウェアを組み込んで利用するタイプのWAFです。サーバーごとに保護を行う仕組みのため、運用中のアプリケーションに合わせて柔軟な設定を行える点が特徴です。特定のWebサービスだけを重点的に守りたい場合や、小規模なシステム環境でも導入しやすい方法といえます。既存のサーバー環境をそのまま活用できるケースもあり、新たな専用機器を準備する必要がない点もメリットです。
一方で、防御処理をサーバー自身が行うため、アクセスが集中すると負荷が増える可能性があります。複数サーバーを運用している場合は個別管理が必要となり、結果として運用負担が大きくなる点には注意が必要です。
WAFを導入することで、Webアプリケーションに対するセキュリティ対策を強化できます。主に次のようなメリットがあります。
その結果、情報漏えいやサービス停止のリスクを抑えながら、安全なWebサービス運用を継続しやすくなります。
WAFの大きな利点は、Webアプリケーションに脆弱性が見つかった場合でも、システム改修を待たずに防御対策を実施できる点です。通常、プログラムの修正には調査や開発、検証といった工程が必要となり、対応までに時間がかかるため、その間に攻撃を受けるリスクも高まります。
WAFを導入していれば、防御ルールを追加することで不正なアクセスを即座に遮断でき、被害拡大の防止が可能です。開発部門と運用部門の負担軽減にもつながり、迅速かつ継続的なセキュリティ対策を実現できます。
WAFは有効なセキュリティ対策ですが、導入や運用において注意すべき点もあります。主に次のようなデメリットがあります。
これらの課題は、運用体制の整備やクラウド型サービスの活用によって負担を軽減できます。
WAF導入を検討する際は、目に見える費用だけでなく運用の手間までセットで考えるのが成功の秘訣です。アプライアンス型は機器代に加え、設置後の設定やトラブル対応を担う専任スタッフの確保が欠かせません。対してクラウド型は、月額制で初期コストを抑えやすく、複雑なルールの更新も任せられるのが強みです。
自社の予算はもちろん、無理なく守り続けられる運用体制に合った方式を選ぶことが、重要な判断基準となります。
WAFを選定する際は、次の基準で検討することが重要です。
| 企業規模・タイプ | おすすめ | 特徴 |
|---|---|---|
| 小〜中規模・ECサイト | クラウド型 | 安価・素早い導入・運用が任せられる。 |
| 大規模・金融・官公庁 | アプライアンス型 | 独自の厳しいルールで細かく制御。 |
| 特定のサーバーのみ | ホスト型 | 1台からピンポイントで安価に守る。 |
WAFの選定は、自社のインフラと運用リソースのバランスで決まります。専任担当者がいないなら運用をサービス提供元に任せられるクラウド型、独自の厳しい要件があるならカスタマイズ性の高いアプライアンス型が適しています。
WAFは導入するだけで十分な効果を発揮するわけではなく、継続的な運用管理が欠かせません。
日常的な見直しを行うことで、防御性能を維持しながら安定したサービス運用を実現できます。
攻撃手法は日々進化するため、WAFの防御ルールであるシグネチャを最新の状態に保つことが不可欠です。更新を怠ると、新種の脆弱性を狙った攻撃 (ゼロデイ攻撃) を素通りさせてしまうリスクが高まります。
一方で、厳格すぎるルールは正規の通信を攻撃とみなす誤検知を招きます。これを防ぐには、運用初期に検知のみを行う「ログ参照モード」で通信傾向を分析し、特定のIPアドレスや安全なパスを監視対象からはずすホワイトリスト登録などのチューニングが効果的です。
WAFは通常、Webサーバーの手前に配置するのが鉄則です。インターネットからの通信を最初に確認できる位置に置くことで、不正アクセスをサーバーへ到達する前に遮断できます。特にクラウド環境では、通信経路上に組み込む手法が主流。既存システムに大きな手を加えることなく、スマートに防御を固められるのが利点です。
Webサイトやオンラインサービスをサイバー攻撃から守る強力な盾、それがWAFです。通信の中身をリアルタイムで解析し、不正アクセスを入り口で食い止めることで、情報漏えいやサイト改ざんといった深刻なリスクを大幅に減らせます。導入にあたっては、自社のインフラ環境や運用体制にぴったりのタイプを選ぶことが成功の鍵です。
もちろん、一度設置して終わりではなく、最新の脅威に合わせてルールを継続的に更新していく姿勢も欠かせません。自社の状況に寄り添った対策を積み重ねることこそが、安全で信頼されるサービス運用の第一歩となります。
WAFの導入や運用には、自社環境に適した構成設計が重要です。
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