※ 記事内の部署名、役職は取材当時のものです。
※ 記事制作時の情報です。
PBXとは「Private Branch Exchange」の略称で、外線や内線の通話を管理・制御する電話交換機のことです。会社の代表電話番号や部署ごとの電話機をまとめてコントロールする役割を担います。一般家庭では1回線に1台の電話機を接続するのが基本です。一方、企業では複数の部署やスタッフが同じ代表電話番号を共有しながら、内線通話や着信の振り分けを行う必要があるため、PBXの導入が一般的です。
PBXには、主に次の2つのタイプがあります。
クラウドPBXは、PBXの機能をインターネット経由で提供するサービスです。拠点や人数の増減にも柔軟に対応できるため、テレワークや多拠点展開との相性がよいのが特徴。物理的なPBX機器を社内に設置する必要がないため、導入から運用までの負担が少なく、初期費用が抑えやすい点もメリットです。近年では、テレワークの普及やBCP対策、働き方の多様化に対応する手段として、多くの企業がクラウドPBXを導入しています。
こんな企業におすすめ:
オンプレミスPBXは、自社オフィスに物理的なPBX機器を設置して運用する従来型のシステムです。通話は社内のネットワークを通じて制御されるため、通信の安定性や遅延の少なさが特徴です。自社内でシステムを完結できるため、セキュリティ面や機能のカスタマイズ性にも優れています。
こんな企業におすすめ:
PBXのクラウド化を検討する企業にとって、「今の代表電話番号を変えないまま移行できるのか?」という不安があるのではないでしょうか。結論、クラウドPBXに更改しても、多くの場合は、これまで使用していた代表電話や固定電話番号をそのまま使うことができます。
現在の電話番号を維持したままクラウドPBXへ移行する方法は複数ありますが、中でも「番号ポータビリティ(LNP)」を活用すれば、物理的な機器を設置せずに移行が可能です。
特に、2025年1月より開始された「双方向番号ポータビリティ」の導入によって、従来は対象外だったNTT以外の事業者が発行した市外局番も引き継ぎが可能になったため、クラウドPBXへのスムーズな移行を後押ししています。ただし、発番元の通信事業者や地域によって対応可否が異なるため、導入前には事前確認が必要です。
どの番号がクラウドPBXで引き継げるのか、より詳しく見ていきましょう。
クラウド電話でそのまま変えないで利用できる番号は以下のとおりです。
顧客サービスや問い合わせ窓口として使われるフリーダイヤル番号は、クラウドPBXで引き継ぎが可能です。新たに取得したクラウドPBX番号に対してフリーダイヤル番号を紐付け設定することで、既存顧客に影響を与えることなく運用を継続できます。
市外局番もクラウドPBXでそのまま利用可能です。市外局番は地域に根ざした印象を与えるため、特に営業拠点を持つ企業にとって重要な資産となります。ただし、クラウドPBX事業者によっては一部地域の番号移行に制限があるため、事前確認が必要です。
050番号はインターネット回線を利用するIP電話番号で比較的自由度が高く、クラウドPBXでも利用可能です。ただし、発番元の通信事業者やサービス仕様によっては移行できない場合もあるため、こちらもクラウドPBX事業者に事前に確認しておきましょう。
クラウドPBXへの移行時に、電話番号をそのまま利用する方法は、番号の種類によって異なります。
フリーダイヤル番号は、クラウドPBXに新たに取得した代表番号に紐付けることで、継続利用が可能です。この設定により、従来どおりフリーダイヤル経由での顧客対応が可能になります。ただし、紐付け先の代表番号がクラウドPBXで利用可能であることが前提となります。
市外局番の電話番号をクラウドPBXで利用するには、主に以下の2つの方法があります。
■ VoIPゲートウェイの設置
既存の電話回線を、VoIPゲートウェイを介してクラウドPBXに接続する方法です。この方法では、物理的な機器の設置が必要となります。
■ 番号ポータビリティの利用
番号ポータビリティを利用して、現在の電話番号をクラウドPBXに直接引き継ぐ方法です。VoIPゲートウェイの設置は必要ありません。
050番号 (IP電話番号) は、クラウドPBXに直接収容できるケースがあります。電話回線の設置工事は不要ですが、050番号 (IP電話番号) の中にはクラウドPBXに移行できないものもあるため、事前の確認が必要です。
PBXの導入・更改は、単なる機器の入れ替えにとどまらず、社内外のコミュニケーションや働き方そのものを大きく左右します。固定電話やクラウド電話のそれぞれの特性を活かしながら、業務効率化やコスト削減を実現した企業の事例をご紹介します。
コスモ電子株式会社様では、PBXの更新時期を迎えたことをきっかけに、内線電話化した携帯電話も含めた音声通話環境の全面的な刷新を検討されました。以前から、管理職やリーダー層など約100名に携帯電話を貸与し、内線として活用していましたが、PBXに依存したシステム構成だったため、転送時のタイムラグや運用負荷が課題となっていたそうです。
同社が求めていたのは、携帯電話による内線利用を継続しながら、老朽化した設備を更新し、転送の課題を解消できる方法でした。そこで、固定電話には既存の電話機や番号をそのまま活用できる「KDDI 光ダイレクト」を、携帯電話の内線化には法人名義のau携帯とオフィス電話を内線でつなげる「KDDI ビジネスコールダイレクト」を導入しました。
導入後は、固定電話と携帯電話間の内線転送がスムーズになり、携帯電話からの外線発信もスムーズかつ快適に行えるように。さらに、かけ放題プランの導入によって、毎月のトータルコストを大幅に削減しました。加えて、従来は固定電話機でしか設定できなかった外線着信の自動転送が、社外からリモートで設定操作できるようになり、停電時や災害時にも対応できるBCP対策の強化にもつながっています。
▶︎コスモ電子株式会社様における事例の詳細はこちら (※ KDDIまとめてオフィス株式会社のページへ遷移します。)
NTP名古屋トヨペット様では、社員が私用の携帯電話を業務利用することに対して抵抗感を抱えていることや、固定電話での取次業務が発生することで業務に集中しづらいという課題がありました。加えて、固定電話の維持費や通話料の負担も大きく、通信コストの見直しが急務となっていました。
そこで、「KDDI 光ダイレクト」と「KDDI ビジネスコールダイレクト」を導入しました。固定電話機に関しては一人一台体制を撤廃し、代わりにauスマートフォンを全社員に貸与。スマートフォンの内線化を進めることで、場所に縛られずに通話ができる柔軟な通信環境を整備しています。
導入後は、社員同士の連絡がスムーズになり、社内コミュニケーションのスピードが格段に向上しました。さらに、CTIとの連携により、スマートフォンの着信時にお客さまの名前や使用車種、車検満了日などの情報が表示されるようになったため、満足度の高い電話応対が可能になっています。
そして以前は、代表番号への着信や離席中の人宛ての内線電話への代理応答で、業務が中断されることも多くありましたが、現在は各自が自分宛ての電話対応のみになったため、集中できる環境が整っています。さらに、私用携帯を業務に使う必要がなくなったことで、社員の満足度も高まり、働きやすい職場づくりにもつながっています。
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羽後設備株式会社様は設備工事の現場に常駐する社員が多く、どこにいても確実に業務連絡が取れるよう、早期から携帯電話の貸与を進めてきました。しかし、通話料が高額になるという課題が生じたため、KDDIからの提案を受けて「KDDI ビジネスコールダイレクト」を導入。携帯電話の内線化により、通話料の大幅な削減が実現しました。
その後、本社のPBXが更新時期を迎えたことをきっかけに、KDDIより高品質なクラウド電話サービスである「Webex Calling」の提案を受け、クラウドPBXの導入を決定。これは将来的な設備管理の効率化やBCP対策の強化を視野に入れた判断でした。
導入にあたっては、本社と支店の間で異なる通話システムを使用することによる内線通話への影響が懸念されましたが、「ビジネスコールダイレクト」と「Webex Calling」が連携できることから、従来通りの運用を維持したままクラウドPBXへの切り替えが可能となりました。実際の切り替えも非常にスムーズで、従業員の多くがシステム変更に気づかないほど自然だったとのことです。
また、PBXをクラウド化したことで、従来必要とされたオフィスレイアウト変更に伴う電話工事の手配やPBXのトラブル対応などの負担がほぼなくなったため、管理負担が大きく軽減されました。災害時でも代表番号の着信に外出先から対応できる体制が整ったことでBCP対策の強化にもつながっています。今後は支店のPBXに関しても更新時期を迎え次第、順次クラウド化を進めていく予定です。
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PBX機器の更改は、電話環境を大きく進化させる選択肢のひとつです。PBX機器の更新や移行は一見大変に思えるかもしれませんが、最適な導入方法を選択することで、コスト削減・業務効率化・BCP対策など、企業の多様な課題を解決する手段になります。オンプレミス型 (固定電話) クラウド電話にはそれぞれの強みがあり、自社に合ったスタイルを選ぶことが重要です。
「何を選べばよいのかわからない」「番号を変えずに移行したい」といったお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。また、オンプレミスPBX・クラウドPBXを導入して、コスト削減や業務効率化に成功した4社の事例をまとめた資料もご用意しています。ぜひご覧ください。