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IoTセキュリティとは?サイバー攻撃のリスクと具体的な対策を解説

IoTセキュリティとは?サイバー攻撃のリスクと具体的な対策を解説

2025 12/9
IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の普及により、私たちの生活やビジネスはより便利になりました。しかし同時に、インターネットに接続するIoTデバイスは、サイバー攻撃の新たな標的にもなっています。
本記事では、IoTセキュリティの基本から、実際に起こり得るリスク、今すぐ実践できる具体的な対策までをわかりやすく解説します。

※ 記事制作時の情報です。

1.IoTセキュリティとは?基本と重要性を解説

IoTセキュリティとは、IoTデバイス機器)や接続するネットワーク全体サイバー攻撃から守る取組です。デバイスネットワーククラウド各層安全性確保することが、サービス信頼性継続性を支える基盤となります。

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1-1. なぜ今、IoTセキュリティが注目されるのか

昨今ではスマート家電や産業用ロボット、医療機器など、さまざまなデバイスがIoT化されネットワークに接続しています。総務省の「情報通信白書 令和7年版」(注1)によると、世界のIoTデバイス数は2024年に約420.4億台に達しており、今後も増加する見込みです。

その一方で、セキュリティ面の設定や対策が不十分なまま利用されるケースも少なくありません。同白書では、サイバー攻撃関連通信全体の約3割をIoTデバイスが占めており、不正アクセスによる違反事件の検挙件数も増加傾向にあると示唆されています。

IoTデバイスはサイバー攻撃の標的となりやすいため、その対策としてIoTセキュリティが注目され、企業においても導入や強化の動きが加速しています。

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1-2. 従来のITセキュリティとの違い

IoTセキュリティは、従来のITシステムとは管理構造運用体制が大きく異なります。以下に「管理対象」「ライフサイクル」「ネットワーク環境」のポイントをまとめました。

ポイント 従来のITセキュリティ IoTセキュリティ
管理対象 PC・サーバーなど限定的 家電・センサーなど多岐にわたる
ライフサイクル 数年で更新 10年以上稼働する機器も多い
ネットワーク環境 社内ネットワーク中心 公衆ネットワーク・5Gなど広範囲

このようにIoTは対象が広く、ライフサイクルも長いため、従来のITセキュリティでは対応できない点に注意必要です。

2.IoTに潜むセキュリティリスクと脅威

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IoT機器が増えるほど、サイバー攻撃入口増加します。ここでは、家庭企業それぞれで起こりうる脅威と、実際発生した被害事例紹介します。

  • 個人家庭で起こりうる脅威事例
  • 企業直面する脅威ビジネスへの影響
  • 対策を怠った場合被害事例

2-1. 個人・家庭で起こりうる脅威の事例

身近なIoT機器も、設定管理を怠るとサイバー攻撃標的となりかねません。初期設定のまま使用したり、ソフトウェア更新放置したりすると、脆弱性を突かれるおそれがあります。例えば、スマートスピーカー「Amazon Echo」やネットワークカメラ「TP-Link Tapo」では、脆弱性を突かれ不正アクセスによる盗聴や乗っ取りのリスク報告されています。

攻撃者にIoTデバイスへの侵入を許してしまうと、家庭内Wi-Fiを経由してほかのデバイス侵入し、個人情報窃取遠隔操作を行うこともあるでしょう。

このように、IoTデバイス日常生活密接に関わっているため家庭内ネットワーク全体を守る意識重要です。

2-2. 企業が直面する脅威とビジネスへの影響

企業におけるIoT機器脅威は、業種ごとに形を変えます。製造業では、生産ラインのIoTセンサー攻撃を受け、産業用IoT機器マルウェア感染すると設備停止に陥り生産ロス発生します。

また、医療業界ではIoT医療機器不正操作されると、患者データ流出生命危険にもつながりかねません。物流小売業では、在庫管理システムが改ざんされ、誤配送信用失墜原因となることも考えられます。

IoTデバイス安全性は、企業事業継続(BCP:Business Continuity Plan)に直結する経営課題として捉えるべきです。

2-3. 対策を怠った場合の被害事例

2017年、マルウェア「Mirai(ミライ)」による大規模DDoS(分散型サービス妨害)攻撃が世界中で発生しました。この攻撃により監視カメラやルーターなどのIoT機器が感染し、ボットネット(遠隔操作ネットワーク)を形成。標的となったWebサービスは一時的に停止し、X(旧Twitter)やAmazonなどに大規模な障害をもたらしました。

Miraiの被害が拡大した原因は、初期パスワードのまま運用されたことや、ID・パスワードをハードコーディング(プログラム上に直接記述すること)していたIoTデバイスが多数存在していたことです。

このようにIoTセキュリティの対策を怠ると、私たちの生活や企業の経営活動に甚大な被害が発生するリスクがあります。

3.政府が示すIoTセキュリティガイドラインのポイント

総務省経済産業省策定した「IoTセキュリティガイドライン(注2)では、以下の5つの指針に基づくライフサイクル全体での対策が求められています。

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政府が示すIoTセキュリティガイドラインのポイントのイメージ画像
  1. 方針
  2. 分析
  3. 設計
  4. 構築接続
  5. 運用保守

3-1. 指針1. 方針

方針」の策定では、企業を守るために、組織的セキュリティ方針明文化し、全社員共通認識を持つ必要があります。特にIoTは、IT部門だけではなくさまざまな部門関与するため、部門横断的体制構築不可欠です。経営層がIoTセキュリティに関するリスク経営課題として捉え、リソース適切配分することが、継続的セキュリティ向上につながります。

また「方針」では、社員退職者による「内部不正」が潜在する可能性認識し、適切対策検討することも重要です。悪意を持つ場合はもちろん、ミスがあっても自社安全を脅かすことがないように注意しましょう。

3-2. 指針2. 分析

分析」では、システム全体俯瞰し、どの資産を守るべきかを明確にします。

まず、IoTデバイスが扱うデータ制御対象の中から「守るべきもの(重要資産)」を特定します。次に「ネットワークにつながること」によるリスク想定し、社内外ネットワーククラウド他社システムなどとの接続点を洗い出しましょう。そのうえで、一部機器侵害された場合にほかの領域波及する「連鎖リスク感染拡大リスク)」を評価します。

また、IoTデバイス特有物理的リスクセンサー破壊端末不正持ち出し)にも注意必要です。さらに、過去インシデント事例などから攻撃傾向対策事例を学び、自社環境で起こり得るシナリオに落とし込みます。

これらの分析体系的に行うことで、より現実的かつ効果的セキュリティ対策立案できます。

3-3. 指針3. 設計

設計」では、個々の機器だけではなく、それらをつなぐネットワークデータ処理保存するクラウド環境、さらには連携対象アプリケーションなどシステム全体としても安全性確保することが重要です。各IoTデバイス単体に対する防御同時に、ネットワーク全体としての堅牢性確保できる構成意識します。

次に、異常検知時他社システム外部ネットワークなど「つながる相手」へ影響迷惑を及ぼさないよう、通信制御アクセス制限設計段階で組み込みます。さらに、安全安心実現するために、全体設計整合性を保ち、不特定多数接続しても安全維持できる構造構築することも重要です。

3-4. 指針4. 構築・接続

IoTシステムの「構築接続」では、IoTデバイス機能用途に応じて適切ネットワーク接続し、不要外部通信遮断します。初期設定時には、デフォルトパスワード変更不要機能無効化徹底し、攻撃されるポイントを減らすことが重要です。さらに、デバイス認証ユーザー認証導入し、正規利用者機器のみがアクセスできるよう制御します。

これらの構築接続段階での対策が、運用以降セキュリティ基盤を支えることになります。

3-5. 指針5. 運用・保守

IoT機器長期稼働前提となるため、製品出荷・リリース後も「安全安心状態」を維持することが重要です。まず、運用段階ではベンダーから提供されるファームウェア更新情報定期的確認し、必要に応じて更新を行います。また、サービス提供者はIoTデバイス一般利用者に「つながることによるリスク」を理解してもらうことで、不注意による被害防止できます。

IoTシステムに関わるすべての関係者製造者通信事業者利用者)が自らの役割認識し、協働して安全維持する体制を築くことが不可欠です。さらに、脆弱なIoTデバイス旧型製品把握し、利用者注意喚起を行うことも、社会全体セキュリティレベルを高めるうえで重要取組となります。

4.今すぐ始めるべきIoTセキュリティの具体的な対策5選

本章では、IoTセキュリティ向上有効な5つの具体策紹介します。

  • デバイス認証識別強化する
  • 通信経路暗号化する
  • 適切アクセス制御を行う
  • 脆弱性管理し、迅速アップデートする
  • インシデント対応体制構築する

4-1. デバイスの認証と識別を強化する

IoTデバイスの多くは購入時初期パスワードのまま利用されており、不正アクセス格好標的となります。攻撃者インターネット上で公開された既知パスワードリスト悪用し、容易侵入を試みます。

そのため、初期設定時パスワード英大文字小文字数字記号などを組み合わせた複雑なものへ変更するほか、デバイス証明書電子的身元証明)を用いた認証導入することが重要です。さらに、ユーザー認証デバイス認証を組み合わせた多要素認証(MFA)を採用すれば、なりすましや不正接続リスク大幅低減できます。こうした多層的認証体制が、IoT環境安全性根底から支えます。

4-2. 通信経路を暗号化する

IoTデバイスデータ頻繁にやり取りするため、通信経路安全確保重要です。通信内容暗号化されていない場合攻撃者による盗聴データ改ざんのリスクが高まります。これらを防ぐために、TLS(Transport Layer Security)やSSL(Secure Sockets Layer)といった暗号化プロトコル導入し、送受信データ保護します。特にIoTデバイス性能が限られるため、軽量暗号(低リソース環境向暗号技術)を採用することで、セキュリティ性能両立可能です。

4-3. 適切なアクセス制御を行う

IoTネットワークでは、一台のIoTデバイス侵害されただけで、ほかのデバイスはもちろん企業内部ネットワーク波及するリスクがあります。そのため、ネットワーク分離(IoT専用ネットワーク構築)を行い、業務システム個人端末とは明確に分けて運用することが重要です。さらに「最小権限原則必要最小限アクセス権のみ付与する考え方)」を適用し、必要権限のみを付与することで、被害拡大を防げます。

また、アクセスログ定期的確認し、不審通信接続早期検知できる体制を整えましょう。アクセス制御はIoT環境の“防波堤”として機能する重要仕組みです。

4-4. 脆弱性を管理し、迅速にアップデートする

IoTデバイス設置後長期間稼働するケースが多いですが、古いソフトウェアのまま放置されると攻撃者標的となります。そのため、ファームウェアやOSのアップデート継続的管理し、脆弱性発見された際には、速やかに修正版配信できる体制構築することが重要です。

また、自社でも脆弱性診断ツール活用し、セキュリティ状態定期的確認しましょう。更新状況記録監査することで、運用管理透明性を高められます。

4-5. インシデント対応体制を構築する

サイバー攻撃情報漏えいなどのセキュリティインシデント事故)は、完全に防ぐことが難しいため「起きたあとにどう対応するか」が重要です。CSIRT(Computer Security Incident Response Team:セキュリティ対応専門チーム)を設置し、検知から報告分析、封じ込め、復旧までのプロセス標準化することが求められます。

また、定期的インシデント対応訓練を行い、関係者間連携手順確認しておくと、実際発生時にも迅速対応できます。

5.まとめ

IoTの活用が進む一方で、サイバー攻撃標的家庭から企業まで広がっています。「導入して終わり」ではなく、設計構築運用のすべての段階セキュリティ意識することが重要です。IoTデバイス多様化が進む今こそ、組織全体セキュリティ方針共有し、継続的点検改善していく取組が求められます。小さな対策の積み重ねが、結果的に大きな被害を防ぎ、安心してIoTを活用できる社会実現します。

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