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マルウェアとは「Malicious(悪意のある)」と「Software(ソフトウェア)」を組み合わせた言葉で、悪意をもって作られたプログラム全般を指します。コンピューターウィルスやランサムウェア、スパイウェアなど、さまざまな種類が含まれます。これらの多くは、メールの添付ファイルや不正なサイトを通じて侵入し、気づかぬうちに動作を始めます。IPA(情報処理推進機構)の調査でも、日本企業が警戒するサイバー脅威の第1位はマルウェア関連攻撃であり、その影響の大きさがうかがえます。
マルウェアとウィルスは同じ意味で使われることがありますが、正確には異なります。マルウェアは悪意のあるソフトウェアすべてを指す総称であり、ウィルスはその一種です。ウィルスは、自身をほかのプログラムにコピーして広げる特徴を持っていますが、スパイウェアやランサムウェアなどはその性質が異なります。この違いが十分に知られていないため、両者が混同されることが多いのです。
多くのマルウェアは、 金銭の獲得や機密情報の盗み取り、企業や組織の業務の妨害の目的で作られます。主な手口の例として、ランサムウェアは、利用者のデータを勝手に暗号化し、復元に必要な「鍵」と引き換えに金銭を要求します。スパイウェアは、操作履歴やパスワードなどの機密情報を収集し、外部へ送信します。「トロイの木馬」は、正規のソフトに見せかけて侵入し、内部に入り込んだ後でシステムを遠隔操作できる状態を作ります。これらの攻撃は個人の被害にとどまらず、企業の信頼低下や事業継続の危機につながるなど、深刻な影響をもたらします。
マルウェアと一口に言っても、その種類や働きは大きく異なります。どのように侵入して被害をもたらすのかを知っておくことは、日ごろの予防や異変に気づくきっかけになります。よく知られている10種類のマルウェアを取り上げ、それぞれの特徴を分かりやすく解説していきます。
ウィルスは、ほかのプログラムやファイルに自分のコピーを埋め込み、拡散するマルウェアの一種です。感染するとシステムの動作を遅くしたり、データを破壊したりします。感染経路はメールの添付ファイルやUSBメモリなどさまざまで、知らないうちに社内ネットワーク全体に広がる危険があります。近年では、ウィルスがランサムウェアやトロイの木馬と組み合わさるケースも増え、被害の範囲がより深刻になっています。
ランサムウェアは、感染したコンピュータやネットワーク上のデータを暗号化し、復号のために身代金を要求するマルウェアです。ウイルスと違い、ほかのファイルに寄生せず単体で動作できる点が特徴です。感染すると、業務に必要なファイルやシステムが利用できなくなり、企業活動が停止する恐れがあります。主な感染経路は、メールの添付ファイルや不正なリンク、ソフトウェアの脆弱性を突いた攻撃です。被害防止には、定期的なバックアップとセキュリティ更新が不可欠です。
自己増殖機能を持ち、ネットワークを通じて自動的に広がるマルウェアです。ウィルスと違い、ほかのファイルに寄生せず単体で動作できる点が特徴です。感染すると、社内ネットワーク上のパソコンへ次々と広がり、システムの負荷を高めて通信を妨げることがあります。過去には、ワームの大量感染によって企業のネットワーク全体が停止する事例も発生しました。ソフトウェアを常に最新の状態に保ち、脆弱性を放置しないことが被害防止の基本です。
正規のソフトウェアを装ってユーザーにインストールさせ、不正な操作を行うマルウェアです。見た目は安全そうでも、実際には裏で情報を盗み出したり、外部からの遠隔操作を可能にしたりします。メールの添付ファイルや偽サイトからダウンロードされるケースが多く、気づかないうちに個人情報が漏えいする危険があります。特に業務用パソコンに侵入すると、社内システム全体に影響を及ぼすおそれがあります。
スパイウェアは利用者に気づかれないよう裏で動き、入力した情報や行動の記録を盗み出すマルウェアです。パスワードや閲覧履歴、クレジットカード番号など重要なデータが外部に送られてしまう危険があります。感染の入り口として多いのは、無料ソフトをインストールしたり、広告をクリックしたりするケースです。気づかないうちに端末へ入り込むため、普段からアプリの権限設定を慎重に確認し、不審なサイトを避けることが大切です。
利用者に不安を与えて金銭をだまし取るマルウェアです。突然「ウィルスが検出されました」などの偽警告を表示し、不要なソフトの購入や個人情報の入力を促します。IPA(情報処理推進機構)の報告でも偽警告による被害が多数確認されています。もし警告が表示されても、慌てて操作せず、信頼できるセキュリティソフトで検査することが大切です。公式サイト以外からのソフト購入や更新を避けることで、被害を未然に防げます。
キーボードで入力した内容を盗み出すタイプのマルウェアです。IDやパスワード、クレジットカード番号などが攻撃者に送信されてしまうため、特にオンラインバンキングやネットショッピングの利用時に被害が深刻化します。原因の多くは、不審なメールの添付ファイルやトロイの木馬で、気づかないうちに感染しているケースが多いため、セキュリティソフトを常に最新にし、重要な情報を入力する際は安全性の高い環境を選ぶことが大切です。
ボットに感染すると、攻撃者がパソコンを遠隔操作できるようになります。感染端末が増えると「ボットネット」と呼ばれる集団が形成され、DDoS攻撃(複数の端末から一斉にアクセスを行いサーバーを停止させる攻撃)で大量の通信を送りつけてサーバーを落とすなどの悪用が可能になります。持ち主が気づかないまま、スパム送信や不正アクセスの踏み台にされることも少なくありません。
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利用者の意思に反して広告を大量に表示したり、クリックを誘導したりするマルウェアです。見た目は単なる広告表示ソフトのようでも、個人情報を収集して第三者に送信するものもあります。多くは無料ソフトに同梱されており、インストール時に気づかず導入してしまうケースが多いです。不要なアプリを削除し、インストール時に同意内容を確認することで防げます。
従来のように実体ファイルを持たず、パソコンのメモリ上で直接動作するマルウェアです。ファイルが存在しないため、ウィルス対策ソフトでも検知が難しいという特徴があります。多くは正規のツールやスクリプト機能を悪用して実行され、痕跡を残さずに情報を盗み出します。特に企業のシステムに侵入されると、内部の重要データが外部へ流出する危険があります。監視体制の強化と多層的な防御が求められます。
マルウェアの攻撃者は巧みに人の心理や業務の隙を突くため、特定の手口だけに備えるのではなく、総合的な対策が必要です。代表的な感染経路は以下のとおりです。
このように、感染経路は多様化しており、どのような利用環境でも注意が必要です。
マルウェア感染による被害は、個人・企業の双方に深刻な影響を及ぼします。主な被害例は次のようなものがあります。
個人にとってはプライバシーの侵害、企業にとっては経営リスクの増大につながるため、被害防止が極めて重要です。
マルウェアの被害を避けるために、特に次の6つは、企業でも個人でも共通して対策の柱となります。
マルウェアの被害は金銭的な損失だけでなく、信頼の低下という大きなダメージも招きます。日ごろからの対策が、後のトラブルを防ぐ効果的な方法です。
万が一感染してしまった場合は、迅速な対応が被害拡大を防ぐ決め手となります。以下の手順を参考に、落ち着いて行動しましょう。
早期対応により、情報漏えいや業務停止といった二次被害を最小限に抑えられます。感染の可能性を感じたら、自己判断せず専門家に相談しましょう。
マルウェアは日々進化し、私たちの身近な環境にも潜んでいます。ウィルスやランサムウェアだけでなく、痕跡を残さないファイルレスマルウェアなど、新しい手口も登場しています。感染を防ぐためには、日常的な注意と継続的な対策が不可欠です。基本的なセキュリティ対策を徹底し、万が一の際も冷静に対処できる体制を整えましょう。特に企業では、情報漏えいや信用失墜を防ぐために、組織的な管理と社員教育の両面が重要です。正しい知識と備えが、サイバー攻撃から身を守る最善の方法です。
マルウェアをはじめとするサイバー攻撃は、企業の規模を問わず発生しています。安全な環境を維持するためには、専門的な知識と継続的な運用が欠かせません。KDDIでは、最新のセキュリティ技術を活用し、お客さまのシステム環境に最適な防御体制を構築します。ネットワーク監視から端末保護まで一元的にサポートする「マネージドゼロトラスト」では、外部・内部両方の脅威に対応可能です。導入支援や運用代行も提供しており、安心してお任せいただけます。セキュリティ強化を検討されている方は、ぜひ以下ページをご覧ください。