このページはJavaScriptを使用しています。JavaScriptを有効にして、または対応ブラウザでご覧下さい。

閉じる
閉じる
衛星電話とは?仕組みや種類、メリット・デメリット、活用シーンを解説

衛星電話とは?仕組みや種類、メリット・デメリット、活用シーンを解説

2025 12/9
災害時や携帯電波の届かない地域でも通信できる手段として、衛星電話が注目されています。人工衛星を利用する仕組みのため、山間部や海上などでも安定した通話が可能です。
本記事では、衛星電話の基本的な仕組みや種類、メリット・デメリット、実際の活用シーンをわかりやすく解説します。防災対策や事業継続計画(BCP)の観点から導入を検討する企業にも役立つ内容です。

※ 記事制作時の情報です。

1.衛星電話とは

衛星電話とは、人工衛星を介して通話データ通信を行う通信手段です。地上設置された基地局経由せず、専用端末から直接衛星を通して相手通信します。そのため、山間部離島海上など、携帯電話電波が届かない地域でも利用できます。

災害により地上通信網途絶した際にも通話可能で、企業自治体防災対策個人緊急連絡手段として導入が進んでいます。

関連サービス:  スターリンク (Starlink)

衛星電話とはのイメージ画像

1-1. 携帯電話・スマートフォンとの通信方式の違い

携帯電話スマートフォンは、地上設置された基地局経由して通信を行います。端末から最寄りの基地局電波を送り、通信事業者ネットワークを通じて相手接続する仕組みです。これに対して衛星電話は、上空人工衛星直接信号送受信します。衛星経由するため、地上通信設備がなくても通話可能です。

この違いは、通信できる「エリアの広さ」と「災害時の強さ」に大きく影響します。携帯電話全国的に広く普及していますが、山間部海上など基地局設置できない地域では圏外となります。一方衛星電話は、サービス提供エリアによっては地球全体カバーするため、海上やへき地でも通信維持できることが特長です。

また、災害時基地局被災停止しても、衛星経由であれば地上通信インフラ依存せず連絡を取ることができます。東日本大震災以降は、企業自治体がBCP対策における非常用通信手段として導入を進めています。

比較項目 携帯電話・スマートフォン 衛星電話
通信エリア 都市部中心・山間部や海上は圏外 地球全体をカバー
災害時の通信 基地局が被災すると通信不能 地上の通信網に依存せず通話可能

2.衛星電話の仕組み

衛星電話の仕組みのイメージ画像

衛星電話は、人工衛星経由して通信を行う仕組みです。主に「静止衛星」と「周回衛星低軌道衛星)」の2種類があり、通信範囲応答速度遅延)が異なります。端末から人工衛星へ送られた信号は、地上局経由して相手へ届きます。逆方向通信同様経路伝達されます。

衛星種類特長

  • 静止衛星地球自転と同じ速度で回り、広範囲安定してカバーできる。
  • 周回衛星低軌道衛星):地球の近くを高速で回り、通信遅延が少なく安定した接続可能

2-1. 静止衛星を使った通信

静止衛星は、地球赤道上空約3万6,000kmの軌道を、地球自転と同じ速度で回る人工衛星です。地上から見て常に同じ位置に見えるため、通信エリアが広く、安定した通信を行える点が特長です。1基で地球の約3分の1をカバーするため、少ない衛星数広域通信実現できます。

この仕組みを利用した代表的サービスが、インマルサット社(Inmarsat)による「インマルサット」です。海上砂漠離島など、地上ネットワークが届かない地域長年活用されています。静止衛星通信安定性が高く、気象条件影響比較的受けにくい点がメリットです。

一方で、衛星までの距離が遠いため、信号送受信時間がかかり、およそ0.5秒前後状況によってはそれ以上通信遅延が生じます。音声通話ではわずかな「間」が発生しますが、緊急時長距離通信では十分実用的水準です。安定性広域性重視する用途に適した方式といえます。

2-2. 周回衛星を使った通信

周回衛星とは、静止衛星以外軌道周回するもので、なかでも高度2,000km以下軌道周回している衛星が「低軌道衛星」と呼ばれます。静止衛星に比べて地表からの距離が近いため、通信遅延非常に少なく、応答性に優れている点が特長です。

低軌道衛星は、地球自転とは異なる速度移動しているため、特定地域を常にカバーすることはできません。多数衛星地球全体配置し、衛星間通信を引き継ぐことで、切れ目のない接続実現しています。この仕組みにより、山岳地帯海上などの遠隔地でも安定した通信可能です。

近年では、SpaceX社の「スターリンク(Starlink)」をはじめ、複数低軌道衛星ネットワーク商用化されました。従来衛星電話よりもデータ通信速度が速く、映像伝送やIoTデバイスとの連携など、多様用途への活用が進んでいます。これらの技術は、今後衛星通信主流になると期待されています。

3.衛星電話の種類

衛星電話には、通信方式対応エリアの異なる複数サービス存在します。主に利用されているのは「スターリンク」「インマルサット」「イリジウム」の3種類です。それぞれ活躍する環境目的が異なるため、用途に合わせた選択重要です。

スターリンク低軌道衛星を用いた新しい通信網で、低遅延かつ高速通信特長です。インマルサット静止衛星利用しており、海上通信などの安定したデータ・音声通信に優れています。イリジウム極軌道を含む地球全域カバーし、極地やへき地でも利用可能です。

サービス名 通信方式 主なカバーエリア 主な用途 特徴・料金の目安
スターリンク 低軌道衛星 全世界(海上含む) 災害対応、遠隔地業務 高速・低遅延通信、月額数万円規模
インマルサット 静止衛星 赤道中心に広範囲 海上通信、航空 通信安定性が高く、端末価格高め
イリジウム 極軌道衛星 全地球(極地含む) 登山、救助、政府機関 全地球対応、通話料は1分数百円程度

通信安定性料金体系サービスごとに異なるため、利用環境目的に応じて最適回線を選ぶことが重要です。

3-1. スターリンク(Starlink)

スターリンク(Starlink)は、SpaceX社が運用する低軌道衛星通信サービスです。高度約550kmに数千基小型衛星配置し、地球全体カバーするネットワーク構築しています。低軌道採用により衛星までの距離が近いため、通信遅延非常に少なく、動画会議データ送受信などのリアルタイム通信にも対応できる点が特長です。

静止衛星を使うインマルサットに比べて、高速かつ安定したインターネット接続実現しており、山間部離島災害時など、地上通信が届かない場所での利用が広がっています。

企業では、建設現場船舶海外拠点などの業務通信活用されており、高信頼バックアップ回線としても注目されています。

3-2. インマルサット

インマルサット(Inmarsat)は英国拠点とする衛星通信企業で、静止衛星利用した国際的衛星通信サービス提供しています。地球赤道上空約3万6,000kmに衛星配置し、地球自転に合わせて動くため、広範囲安定してカバーできます。通信エリアが広く、海上砂漠離島など、地上インフラ整備が難しい地域でも確実通信維持できる点が特長です。

スターリンク低遅延高速通信を強みとするのに対し、インマルサット通信安定性信頼性の高さで選ばれています。船舶航空機石油プラントなど、長期間にわたり安定通信必要とする現場で広く採用されています。特に海上通信分野では、国際的標準として長年利用されている代表的衛星サービスです。

3-3. イリジウム

イリジウム(Iridium)は、極軌道周回する衛星通信サービスです。高度約780kmの軌道に66基の衛星配置し、衛星同士相互リンクさせることで切れ目のない通信網形成しています。極地を含む全地球利用できる点が最大特長で、ほかの衛星電話では届かない北極南極圏でも通信可能です。

静止衛星を使うインマルサットに比べ、通信遅延が少なく、移動中利用にも適しています。登山探検航空海上業務政府防災機関など、緊急性即時性が求められる場面活用されています。耐久性の高い端末が多く、過酷環境での使用にも耐えられる信頼性の高い通信手段です。

4.衛星電話のメリット・デメリット

衛星電話には、地上通信では届かない場所でも使える利点がある一方費用通信環境に関する課題もあります。ここでは、導入検討するうえで重要な4つのポイント紹介します。

メリット

  • 通信エリアが広くどこでもつながる (注1)
  • 災害など有事の際にも強い

デメリット

  • 端末代通話料が高い
  • 通信品質制限がある
  • 注1)  建物の中や密林地帯など、電波を遮る環境下ではつながりにくい場合もあります。

4-1. メリット①通信エリアが広くどこでもつながる


衛星電話は、地上通信網依存せず、サービスエリア内であれば世界中利用できる点が強みです。携帯電波が届かない山岳地帯離島広大海上でも通話可能で、登山航海遠隔地での調査活動などに活用されています。地理的条件左右されず、安定した通信手段確保できることが大きな利点です。

メリット①通信エリアが広くどこでもつながるのイメージ画像

4-2. メリット②災害など有事の際にも強い

地上通信インフラ依存しない衛星電話は、地震台風などの災害時でも通信途絶しにくいことが特長です。地上基地局回線被災しても、人工衛星を介して通話可能なため、緊急連絡救援活動活用できます。実際東日本大震災では、自治体救助機関被災地との連絡手段として使用し、迅速情報共有貢献しました。

4-3. デメリット①端末代や通話料が高い

衛星電話は、携帯電話に比べて導入利用コストが高いことが課題です。端末価格は10万円前後から数十万円に及び、通話料も1分当たり数百円高額です。近年スターリンクなどの低軌道衛星通信サービス月額料金制ブロードバンド化が進んでいますが、従来衛星電話は、個人利用よりも業務防災など、必要性が高い場面導入されるケースが多く見られます。

項目 携帯電話 衛星電話
端末価格 約1万〜10万円 約10万〜40万円
通話料(1分) 約20〜40円 約200〜600円

掲載価格目安です。実際料金契約内容販売店サービスプランによって異なる場合があります。詳しくは各キャリア公式サイトやお問い合わせ窓口でご確認ください。

4-4. デメリット②通信品質に制限がある

衛星電話は、通信品質環境左右されやすいという課題があります。特に静止衛星を使った通信は、衛星までの距離が長いため、音声にわずかな遅延が生じます。また、衛星からの電波障害物に弱いことから、屋内高層ビル街では建物電波を遮り、通信不安定になりがちです。利用時は、空が開けた屋外衛星が見える位置端末を向けることが、スムーズ通話を行うためのポイントです。

5.衛星電話の主な活用シーン

衛星電話は、災害時通信インフラ不安定環境真価発揮する通信手段です。防災対策をはじめ、登山航海などのアウトドア活動海外やへき地でのビジネス通信など、幅広分野活用されています。

5-1. 災害時の備え・BCP対策

衛星電話は、災害発生時通信確保事業継続計画(BCP)の実行に欠かせない手段です。地上通信インフラ被災しても通信維持できるため、企業では緊急連絡網本社拠点間情報共有活用されています。自治体では防災拠点連絡手段として導入が進み、個人でも安否確認救助要請用として備える動きが広がっています。

実際東日本大震災熊本地震では、衛星電話被災地での情報伝達に大きく貢献しました。防災計画見直す際は、通信手段多重化有効です。

5-2. 登山やキャンプなどアウトドアでの利用

衛星電話は、遭難時通信圏外での救助要請有効手段です。登山キャンプトレッキング航海など、携帯電波が届かない環境遭難事故体調不良などが発生した場合でも、衛星を介して連絡を取ることができます。特に単独行動悪天候下では安全確保役立ちます。

利用時は、空が開けた場所アンテナ衛星に向けるなど、通信環境を整える工夫必要です。

5-3. 海外渡航やインフラ未整備地域でのビジネス

衛星電話は、通信インフラ十分に整っていない地域での業務連絡に欠かせない手段です。海外のへき地や発展途上国山間部鉱山海上など、地上ネットワーク不安定環境でも安定した通話・データ通信可能です。

特に、建設現場採掘現場海洋調査船舶運航など、遠隔地でのプロジェクト管理緊急時報告連絡など、安全確実通信を支えるツールとして活用されています。

6.まとめ

衛星電話は、地上通信に頼らず世界中通話できる心強通信手段です。静止衛星低軌道衛星活用することで、山間部海上災害時など、あらゆる環境安定した連絡が取れます。

一方で、端末通話料金の高さ、通信環境への影響といった課題もあります。
それでも、災害対策海外ビジネスアウトドア活動など、通信途絶が許されない場面において「つながる安心」を確保する手段としての価値は高まっています。利用目的に合わせて最適サービスを選ぶことが重要です。

衛星電話・衛星通信をご検討中の方はKDDIへ

KDDIでは、多彩用途対応できる柔軟プランをご用意しており、緊急時通信確保や、遠隔地でのビジネス災害対策フィールドワークなど、さまざまなシーンでご活用いただけます。山岳地帯海上離島など、従来通信インフラが届きにくい場所でも、高品質音声通話データ通信可能です。用途やご予算に合わせて最適プランをご案内いたします。


ピックアップ