災害対策の支援も可能です。
船舶や僻地利用だけでなく、災害対策(BCP)にも活用できます。
※ 記事制作時の情報です。
衛星電話とは、人工衛星を介して通話やデータ通信を行う通信手段です。地上に設置された基地局を経由せず、専用の端末から直接衛星を通して相手と通信します。そのため、山間部や離島、海上など、携帯電話の電波が届かない地域でも利用できます。
災害により地上の通信網が途絶した際にも通話が可能で、企業や自治体の防災対策、個人の緊急連絡手段として導入が進んでいます。
関連サービス: スターリンク (Starlink)
携帯電話やスマートフォンは、地上に設置された基地局を経由して通信を行います。端末から最寄りの基地局へ電波を送り、通信事業者のネットワークを通じて相手と接続する仕組みです。これに対して衛星電話は、上空の人工衛星に直接信号を送受信します。衛星を経由するため、地上の通信設備がなくても通話が可能です。
この違いは、通信できる「エリアの広さ」と「災害時の強さ」に大きく影響します。携帯電話は全国的に広く普及していますが、山間部や海上など基地局が設置できない地域では圏外となります。一方、衛星電話は、サービス提供エリアによっては地球全体をカバーするため、海上やへき地でも通信が維持できることが特長です。
また、災害時に基地局が被災・停止しても、衛星経由であれば地上の通信インフラに依存せず連絡を取ることができます。東日本大震災以降は、企業や自治体がBCP対策における非常用通信手段として導入を進めています。
| 比較項目 | 携帯電話・スマートフォン | 衛星電話 |
|---|---|---|
| 通信エリア | 都市部中心・山間部や海上は圏外 | 地球全体をカバー |
| 災害時の通信 | 基地局が被災すると通信不能 | 地上の通信網に依存せず通話可能 |
衛星電話は、人工衛星を経由して通信を行う仕組みです。主に「静止衛星」と「周回衛星(低軌道衛星)」の2種類があり、通信範囲や応答速度(遅延)が異なります。端末から人工衛星へ送られた信号は、地上局を経由して相手へ届きます。逆方向の通信も同様の経路で伝達されます。
【衛星の種類と特長】
静止衛星は、地球の赤道上空約3万6,000kmの軌道を、地球の自転と同じ速度で回る人工衛星です。地上から見て常に同じ位置に見えるため、通信エリアが広く、安定した通信を行える点が特長です。1基で地球の約3分の1をカバーするため、少ない衛星数で広域通信を実現できます。
この仕組みを利用した代表的なサービスが、インマルサット社(Inmarsat)による「インマルサット」です。海上や砂漠、離島など、地上ネットワークが届かない地域で長年活用されています。静止衛星は通信の安定性が高く、気象条件の影響も比較的受けにくい点がメリットです。
一方で、衛星までの距離が遠いため、信号の送受信に時間がかかり、およそ0.5秒前後、状況によってはそれ以上の通信遅延が生じます。音声通話ではわずかな「間」が発生しますが、緊急時や長距離通信では十分実用的な水準です。安定性と広域性を重視する用途に適した方式といえます。
周回衛星とは、静止衛星以外の軌道を周回するもので、なかでも高度2,000km以下の軌道を周回している衛星が「低軌道衛星」と呼ばれます。静止衛星に比べて地表からの距離が近いため、通信遅延が非常に少なく、応答性に優れている点が特長です。
低軌道衛星は、地球の自転とは異なる速度で移動しているため、特定の地域を常にカバーすることはできません。多数の衛星を地球全体に配置し、衛星間で通信を引き継ぐことで、切れ目のない接続を実現しています。この仕組みにより、山岳地帯や海上などの遠隔地でも安定した通信が可能です。
近年では、SpaceX社の「スターリンク(Starlink)」をはじめ、複数の低軌道衛星ネットワークが商用化されました。従来の衛星電話よりもデータ通信速度が速く、映像伝送やIoTデバイスとの連携など、多様な用途への活用が進んでいます。これらの技術は、今後の衛星通信の主流になると期待されています。
衛星電話には、通信方式や対応エリアの異なる複数のサービスが存在します。主に利用されているのは「スターリンク」「インマルサット」「イリジウム」の3種類です。それぞれ活躍する環境や目的が異なるため、用途に合わせた選択が重要です。
スターリンクは低軌道衛星を用いた新しい通信網で、低遅延かつ高速通信が特長です。インマルサットは静止衛星を利用しており、海上通信などの安定したデータ・音声通信に優れています。イリジウムは極軌道を含む地球全域をカバーし、極地やへき地でも利用可能です。
| サービス名 | 通信方式 | 主なカバーエリア | 主な用途 | 特徴・料金の目安 |
|---|---|---|---|---|
| スターリンク | 低軌道衛星 | 全世界(海上含む) | 災害対応、遠隔地業務 | 高速・低遅延通信、月額数万円規模 |
| インマルサット | 静止衛星 | 赤道中心に広範囲 | 海上通信、航空 | 通信安定性が高く、端末価格高め |
| イリジウム | 極軌道衛星 | 全地球(極地含む) | 登山、救助、政府機関 | 全地球対応、通話料は1分数百円程度 |
通信の安定性や料金体系はサービスごとに異なるため、利用環境や目的に応じて最適な回線を選ぶことが重要です。
スターリンク(Starlink)は、SpaceX社が運用する低軌道衛星通信サービスです。高度約550kmに数千基の小型衛星を配置し、地球全体をカバーするネットワークを構築しています。低軌道の採用により衛星までの距離が近いため、通信遅延が非常に少なく、動画会議やデータ送受信などのリアルタイム通信にも対応できる点が特長です。
静止衛星を使うインマルサットに比べて、高速かつ安定したインターネット接続を実現しており、山間部や離島、災害時など、地上通信が届かない場所での利用が広がっています。
企業では、建設現場や船舶、海外拠点などの業務通信に活用されており、高信頼のバックアップ回線としても注目されています。
インマルサット(Inmarsat)は英国を拠点とする衛星通信企業で、静止衛星を利用した国際的な衛星通信サービスを提供しています。地球の赤道上空約3万6,000kmに衛星を配置し、地球の自転に合わせて動くため、広範囲を安定してカバーできます。通信エリアが広く、海上や砂漠、離島など、地上インフラの整備が難しい地域でも確実に通信を維持できる点が特長です。
スターリンクが低遅延・高速通信を強みとするのに対し、インマルサットは通信の安定性と信頼性の高さで選ばれています。船舶・航空機・石油プラントなど、長期間にわたり安定通信を必要とする現場で広く採用されています。特に海上通信の分野では、国際的な標準として長年利用されている代表的な衛星サービスです。
イリジウム(Iridium)は、極軌道を周回する衛星通信サービスです。高度約780kmの軌道に66基の衛星を配置し、衛星同士を相互にリンクさせることで切れ目のない通信網を形成しています。極地を含む全地球で利用できる点が最大の特長で、ほかの衛星電話では届かない北極・南極圏でも通信が可能です。
静止衛星を使うインマルサットに比べ、通信遅延が少なく、移動中の利用にも適しています。登山や探検、航空・海上業務、政府・防災機関など、緊急性や即時性が求められる場面で活用されています。耐久性の高い端末が多く、過酷な環境での使用にも耐えられる信頼性の高い通信手段です。
衛星電話には、地上通信では届かない場所でも使える利点がある一方、費用や通信環境に関する課題もあります。ここでは、導入を検討するうえで重要な4つのポイントを紹介します。
【メリット】
【デメリット】
衛星電話は、地上の通信網に依存せず、サービスエリア内であれば世界中で利用できる点が強みです。携帯電波が届かない山岳地帯や離島、広大な海上でも通話が可能で、登山や航海、遠隔地での調査活動などに活用されています。地理的条件に左右されず、安定した通信手段を確保できることが大きな利点です。
地上の通信インフラに依存しない衛星電話は、地震や台風などの災害時でも通信が途絶しにくいことが特長です。地上の基地局や回線が被災しても、人工衛星を介して通話が可能なため、緊急連絡や救援活動に活用できます。実際に東日本大震災では、自治体や救助機関が被災地との連絡手段として使用し、迅速な情報共有に貢献しました。
衛星電話は、携帯電話に比べて導入・利用コストが高いことが課題です。端末価格は10万円前後から数十万円に及び、通話料も1分当たり数百円と高額です。近年、スターリンクなどの低軌道衛星通信サービスは月額料金制のブロードバンド化が進んでいますが、従来の衛星電話は、個人利用よりも業務や防災など、必要性が高い場面で導入されるケースが多く見られます。
| 項目 | 携帯電話 | 衛星電話 |
|---|---|---|
| 端末価格 | 約1万〜10万円 | 約10万〜40万円 |
| 通話料(1分) | 約20〜40円 | 約200〜600円 |
掲載の価格は目安です。実際の料金は契約内容や販売店、サービスプランによって異なる場合があります。詳しくは各キャリアの公式サイトやお問い合わせ窓口でご確認ください。
衛星電話は、通信品質が環境に左右されやすいという課題があります。特に静止衛星を使った通信は、衛星までの距離が長いため、音声にわずかな遅延が生じます。また、衛星からの電波は障害物に弱いことから、屋内や高層ビル街では建物が電波を遮り、通信が不安定になりがちです。利用時は、空が開けた屋外で衛星が見える位置に端末を向けることが、スムーズな通話を行うためのポイントです。
衛星電話は、災害時や通信インフラが不安定な環境で真価を発揮する通信手段です。防災対策をはじめ、登山や航海などのアウトドア活動、海外やへき地でのビジネス通信など、幅広い分野で活用されています。
衛星電話は、災害発生時の通信確保や事業継続計画(BCP)の実行に欠かせない手段です。地上の通信インフラが被災しても通信を維持できるため、企業では緊急連絡網や本社・拠点間の情報共有に活用されています。自治体では防災拠点の連絡手段として導入が進み、個人でも安否確認や救助要請用として備える動きが広がっています。
実際に東日本大震災や熊本地震では、衛星電話が被災地での情報伝達に大きく貢献しました。防災計画を見直す際は、通信手段の多重化が有効です。
衛星電話は、遭難時や通信圏外での救助要請に有効な手段です。登山やキャンプ、トレッキング、航海など、携帯電波が届かない環境で遭難、事故、体調不良などが発生した場合でも、衛星を介して連絡を取ることができます。特に単独行動や悪天候下では安全確保に役立ちます。
利用時は、空が開けた場所でアンテナを衛星に向けるなど、通信環境を整える工夫が必要です。
衛星電話は、通信インフラが十分に整っていない地域での業務連絡に欠かせない手段です。海外のへき地や発展途上国、山間部、鉱山、海上など、地上ネットワークが不安定な環境でも安定した通話・データ通信が可能です。
特に、建設現場・採掘現場・海洋調査・船舶運航など、遠隔地でのプロジェクト管理や緊急時の報告連絡など、安全で確実な通信を支えるツールとして活用されています。
衛星電話は、地上通信に頼らず世界中で通話できる心強い通信手段です。静止衛星や低軌道衛星を活用することで、山間部や海上、災害時など、あらゆる環境で安定した連絡が取れます。
一方で、端末や通話料金の高さ、通信環境への影響といった課題もあります。
それでも、災害対策や海外ビジネス、アウトドア活動など、通信の途絶が許されない場面において「つながる安心」を確保する手段としての価値は高まっています。利用目的に合わせて最適なサービスを選ぶことが重要です。
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