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BIツールとは、企業内のデータを集めて分析し、経営や業務の判断に活かすためのソフトウェアです。BIは「Business Intelligence (ビジネスインテリジェンス)」の略で、直訳すると「事業上の知見」という意味を持ちます。売上データや在庫情報、顧客データなどを一元的に管理し、グラフやダッシュボードで視覚的に表示できる点が特徴です。
従来のExcelでは処理しきれなかった大量データの分析を短時間で行えるため、経営のスピード化や現場の意思決定の精度向上に役立ちます。市場の拡大も著しく、BIツール市場は国内でも拡大が続いており、2023年度には約1,300億円規模に達したと推計され、2028年度には約1,900億円まで成長する見込みです。今後はAIとの連携やクラウド基盤の発展により、さらに幅広い業種で活用が進む見込みです。
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大量データを扱う際には、ExcelよりもBIツールに多くのメリットがあります。数百万行のデータも、Excelでは時間がかかりますが、BIツールなら瞬時に処理が可能で、一度設定すれば定型レポートを自動で生成・更新します。データ抽出時にも、Excelは手入力が基本なのに対し、BIツールは複数のシステムから自動でデータを収集・統合します。また、データが日々更新される環境で、Excelは手動で更新作業が必要です。一方BIツールはデータソースと連携し、自動で最新の状態に更新されるため、常に最新の情報で確認できるというメリットがあります。
BIツールは、過去のデータを集計・可視化し、「何が起きたか/どこに課題があるか」を示します。売上推移や部門別KPIのダッシュボード、異常値の着眼点提示などに活用できます。AIは、過去のデータからパターンを学習し、「これから何が起きるか」を予測します。需要予測で発注量を算出、離職予兆を検知し施策を高い精度で予測するといったことができるのがAIの役割です。BIは現状把握、AIは未来対応をサポートするツールといえます。
BIツールには主に3つの目的・役割があります。以下で詳しくご紹介します。
1つ目は経営判断のスピードが大きく変わることです。各部署から報告を集め、Excelで集計してから意思決定を行うという手間がかからず、複数のデータソースを自動で統合し、リアルタイムで最新の状況を確認できます。これにより、売上の変化や市場動向を即座に把握し、迅速な意思決定が可能になります。
2つ目は、集計や分析といった手作業を自動化できることです。従来は各部署がExcelで別々にデータをまとめていたため、更新や確認に時間がかかっていました。BIツールを導入すれば、データの更新や集計を自動化し、レポート作成の手間を大幅に減らせます。例えば営業部門では、案件の進捗をリアルタイムで確認し、効率的に営業活動を行えるようになります。また、現場社員でも直感的にグラフやチャートを操作できるため、専門的な分析スキルがなくてもデータを活用できる点も大きなメリットです。
3つ目のデータドリブンとは、感覚や経験ではなくデータに基づいて意思決定を行うことです。BIツールは、企業内に蓄積されたデータを整理・可視化し、経営判断の精度を高めます。例えば顧客の購買履歴から傾向を把握し、次の販促施策を具体的に立案できます。
BIツールの基本的な機能には次の3つが挙げられます。
1つ目は「基幹系システムからデータ連携」、2つ目は「分析・集計」、3つ目は「ビジュアライズして表示」です。
基幹系システムからデータ連携は、社内に点在する販売管理システムや会計ソフト、Excelファイルなどのデータを自動で一箇所に集めることです。これにより、手作業で行っていたデータの収集・統合が自動ででき、分析のための土台がスピーディーに構築できます。
分析・集計機能では、集めたデータをもとに、「ドリルダウン (詳細化)」や「スライシング (切り口の変更)」といった操作で、多角的な分析を直感的に行えます。
ビジュアライズして表示する機能では、複雑な数字の羅列をグラフや地図、メーターといった分かりやすい形に変換できることです。これらのグラフを組み合わせたダッシュボードを作成すれば、経営状況をリアルタイムで把握でき、迅速な対応ができます。
BIツールには「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があります。
クラウド型はインターネット経由で利用するタイプで、初期費用を抑えられ、すぐに導入できる点が魅力です。データ更新も自動で行われ、リモートワーク環境でも柔軟に利用できます。一方、オンプレミス型は自社サーバーにシステムを構築して運用するタイプです。セキュリティ面の自由度が高く、機密情報を扱う業種に向いています。ただし、サーバー構築や保守にコストがかかるため、初期投資が必要です。
コストを重視するならクラウド型、カスタマイズ性やセキュリティを重視するならオンプレミス型が適しています。
セルフサービスBIは、現場社員が自分でデータを分析できるタイプのツールです。プログラミング知識がなくても操作でき、迅速な意思決定に役立ちます。中小企業や現場主導のプロジェクトに向いています。
エンタープライズBIは大企業向けで、複数部署が共通のデータを活用するための仕組みを備えています。アクセス権限管理やデータ統合など、組織全体での運用に適しています。
現場のスピードを重視するならセルフサービス型、組織全体の一貫性を重視するならエンタープライズ型を選ぶとよいでしょう。
無料版BIツールは、導入コストをかけずに基本的な分析機能を試せる点がメリットです。中小企業や導入検討段階での試用に適しています。ただし、扱えるデータ量や機能が制限されていることもあるので、導入前にデータ量はどのくらいか、どのような機能があるかを確認しましょう。
有料版は、データ容量の制限がなく、複数ユーザーでの共有や高度な分析機能を利用できます。サポート体制も整っているため、業務で継続的に利用する場合に向いています。
目的や規模に応じて、まずは無料版からはじめ、必要に応じて有料プランへ移行するのも効果的です。
BIツールを導入すると、営業・会計・在庫など散在するデータを一つの基盤で管理できるようになります。これにより、部門ごとに違う数値が使われる混乱を防ぎ、全社で同じ“ひとつの真実の数値”を共有できます。データの整合性が保たれるため、より深く精度の高い分析が可能になり、的確な戦略立案につながります。
BIツールの大きな強みは、複雑な数字の羅列を誰の目にも分かりやすいグラフや地図に変換してくれる点にあります。例えば、地域別の売上推移を比較すれば、伸び悩むエリアも即座に特定が可能です。数値に基づいて課題を明確化し、根拠ある改善策を立案・実行できるため、勘や経験に依存しない意思決定が進みます。
BIツールはリアルタイムでデータを更新できるため、経営層は常に最新の情報をもとに判断を下せます。市場の変化に即応できる環境を整えることで、機会損失の防止にもつながります。例えば、急な売上減少が起きた場合でも、その原因をすぐに分析し、対策を講じられます。結果として、経営のスピードと精度を同時に高められるようになります。
従来はExcelで月次レポートを手作業で作成していた企業も、BIツールを導入すれば自動的にレポートを生成できます。データがリアルタイムで更新されるため、毎回新しい資料を作る必要がありません。担当者は手作業の集計から解放され、より分析や戦略立案に時間を使えるようになります。レポート作成の効率化は、働き方改革や残業時間削減にも貢献します。
BIツールには無料版もありますが、業務で本格運用するには導入費と維持費を見込む必要があります。クラウド型は月額5万~30万円前後、オンプレミス型は初期に数百万円規模の投資となる場合もあります。さらに、ユーザーライセンスやサーバー費、サポート/保守費が継続して発生します。予算に合わせた選定に加え、目的・KPI・利用範囲を事前に明確化しておくことが、コストに見合う効果を引き出すための重要なポイントです。
BIツールは機能が増えるほど操作が複雑になりがちです。接続設定やデータ取り込み、指標・計算項目の設計など、現場で使いこなすには一定の学習が必要です。スムーズな定着には、事前トレーニングやマニュアル・運用ガイドの整備が効果的です。一方で、直感的なUIで初心者にも扱いやすい製品も増えています。導入前にデモやトライアルを試し、自社の業務フローに合う操作感かを確認しておくといいでしょう。
BIツールは導入するだけでは成果を上げられません。どの業務課題を解決したいのか、どのような指標を追いたいのかを明確にしないと、データを正しく活かせないからです。例えば「売り上げを上げたい」ではなく、「新規顧客の購買傾向を分析し、販促施策に活かす」といった具体的な目的設定が必要です。目的が明確であれば、データ構成やレポート設計も効率的に進められます。
BIツールを選ぶ際は、まず導入の目的を明確にすることが重要です。売上分析をしたいのか、業務効率を上げたいのかによって、選ぶツールが変わります。目的を具体的に設定すれば、必要な機能やレポート項目を整理しやすくなりますが、導入段階で曖昧なままだと、ツールをうまく使いこなせず、成果が出にくくなるため注意が必要です。
BIツールを選ぶ際は、製品ごとの機能の違いを見極めることが重要です。自社で実現したい分析やレポート形式をあらかじめ整理し、それを満たす機能を備えているか確認しましょう。そして、機能以上に大切なのが操作性です。どんなに機能が優れていても、担当者が使いこなせなければツールは活用されません。導入前にデモや無料トライアルを利用し、直感的に扱えるかどうか、実際の画面で確かめてみることをおすすめします。
BIツールはほかのシステムとの連携がスムーズであるほど効果を発揮します。販売管理、在庫、会計など、社内の基幹システムと自動でデータを共有できるか確認しましょう。連携ができない場合、手動での入力や更新作業が発生し、効率化の効果が薄れてしまいます。導入前にAPIや接続形式をチェックしておきましょう。
初期費用だけでなくライセンス料や保守費用を含めた総コストで比較することが大切です。また、サポート体制の確認も欠かせません。導入時の設定支援や研修プログラムの有無、日本語での問い合わせ窓口が用意されているかなどを事前に確認しておきます。これらの総コストと、導入によって得られる業務工数の削減や意思決定の精度向上といった価値を天秤にかけ、長期的な視点で費用対効果を見極めることがポイントです。
ここでは特に利用者の多い4つのツールを比較します。無料版やトライアルを活用し、自社のデータや予算に合ったツールを選びましょう。
| ツール | 料金 | 主な特徴と適用場面 |
|---|---|---|
| Power BI | 有料 (無料版あり) | Microsoft製で、ExcelやTeamsとの連携が強力です。Office製品に慣れたユーザーなら直感的に操作できるため、全社でMicrosoft 365を導入している企業に適しています。 |
| Tableau | 有料 (無料版あり) | 見やすいグラフを簡単な操作で作成できるのが強みです。データの見せ方にこだわりたいマーケティング部門や経営層への報告資料作成で特に活躍します。 |
| MotionBoard | 有料 | 純国産のBIツールで、日本の帳票文化に合わせたレイアウトや手厚い日本語サポートが特徴です。製造業の生産管理など、国内の業務フローにフィットさせたい場合に適しています。 |
| Google Looker Studio | 無料 | Google Analyticsやスプレッドシートとの連携がスムーズで、完全無料で利用できます。Webサイトのアクセス解析が主な目的の場合や、コストを抑えてBIをはじめたい場合に適しています。 |
BIツールはデータを「見える化」し、洞察を得て行動につなげるための基盤です。適切に活用すれば、意思決定のスピードが上がり、業務のムダも大きく削減できます。導入時は目的と課題を明確にし、自社の課題に適合する機能を備えた製品を選ぶことが重要です。はじめは無料版やクラウド型で小さく試し、運用の中で設計やルールを磨き込むと定着しやすくなります。データ活用が競争力を左右する今、BIツールは経営と現場をつなぐ強力なパートナーといえるでしょう。
BIツールの導入を通じてデータを有効活用したいとお考えなら、KDDIのビジネスサービスがおすすめです。KDDIでは、企業のデータ活用を支援する「Data Market」を提供しています。Data Marketはさまざまな業務データを安全に収集・統合し、必要な情報をスピーディーに可視化できるクラウド型サービスです。複数のシステムに散在するデータを一元管理し、BIツールとの連携によって迅速な意思決定をサポートします。
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