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ファシリティマネジメントとは? 導入手順や認定資格、PMとの違いを解説

ファシリティマネジメントとは? 導入手順や認定資格、PMとの違いを解説

2025 11/21
ファシリティマネジメント (FM) は、企業が所有するオフィスや建物といった施設・設備を、単なる維持管理ではなく、経営資源として戦略的に活用する考え方、そしてその実践を伴う取り組みです。経営効率化や働き方改革、ESG経営の広がりを背景に、多くの企業で注目が高まっています。
本記事では、ファシリティマネジメントの定義から、導入の手順や効果、さらに認定資格や成功のポイントまでを整理し、企業が取り組むべき具体策を解説します。

※ 記事制作時の情報です。

1.ファシリティマネジメント (FM) とは

ファシリティマネジメント (以下、FM) とは、企業所有するファシリティ (土地建物構築物設備など) を単に維持管理するのではなく、経営戦略一環として最適活用する経営管理活動です。

ファシリティは、経営資源である「ヒト・モノ・カネ」に続く「第4の資源」とされ、効率的かつ効果的運用することで、コスト削減生産性向上資産価値維持といった成果期待できます。

FMの詳細については、こちら。

1-1. 従来の施設管理との違い

従来施設管理目的は、建物設備安全維持する「維持保全」でした。一方で、FMはファシリティ経営資源と捉え、経営戦略視点から活用する点が大きな違いです。

項目 施設管理 ファシリティマネジメント (FM)
主な目的 設備の維持・修繕 経営戦略に基づく最適活用
視点 コスト削減中心 経営効率化・価値創造
業務範囲 保守点検・修理 計画立案・環境改善・資産活用
成果 安全性確保 生産性向上・資産価値維持

1-2. プロパティマネジメント (PM) との違い

プロパティマネジメント (以下、PM) とFMは混同されやすい概念ですが、その目的視点は大きく異なります。PMは賃貸収益売却益最大化目指し、不動産資産価値を高めることに重点を置きます。一方、FMはオフィス工場利用する従業員組織のために、ファシリティ利用価値最大化することが目的です。

つまり、PMが投資家オーナー視点での不動産経営重視する活動であるのに対し、FMは企業活動を支える基盤づくりを重視する利用者視点活動です。この違いを理解することが、施設役割最大限に活かす鍵となります。

項目 プロパティマネジメント (PM) ファシリティマネジメント (FM)
主な目的 不動産の資産価値最大化 利用者視点での利用価値最大化
対象 不動産全般 (投資物件など) 企業活動を支える施設 (オフィス・工場・研究施設など)
視点 投資家・オーナー 利用者・経営戦略
成果 賃料収益・売却益の増加 生産性向上・働きやすさ改善

2.ファシリティマネジメントが注目される背景

FMが注目される背景には、バブル崩壊以降コスト削減中心とした「経営効率化」「従業員生産性満足度重視する働き方改革」「環境負荷低減社会的責任意識したESG経営浸透」があります。

ファシリティマネジメントが注目される背景のイメージ画像

2-1. 経営効率化のニーズの高まり

バブル崩壊以降、多くの企業固定費削減を迫られ、施設運営においても効率化視点が求められるようになりました。特に、老朽化した建物設備への対応は避けられず、光熱費抑制修繕費最適化が大きな課題です。FMは、こうしたコスト削減圧力に応える手段として重要性を増しています。

2-2. 働き方改革による職場環境への注目

働き方改革推進するうえで、職場環境改善生産性従業員満足度向上不可欠要素です。

近年は、座席固定せず柔軟に働けるフリーアドレスや、仕事内容に応じて働く場所を選べるABW (Activity Based Working) が導入され、快適性効率性両立するオフィスづくりが注目されています。

2-3. ESG経営の浸透

企業社会的責任が強く求められる中、FMは環境 (E)、社会 (S)、ガバナンス (G) を意識したESG経営実現に欠かせない役割を担っています。

例えば、省エネ設備導入廃棄物削減再生可能エネルギー活用などを通じて環境負荷低減し、持続可能経営基盤を支える取り組みとして注目されています。

3.ファシリティマネジメントの目的と得られる効果

FMの目的は、ファシリティ経営資源として最大限活用することです。この戦略的活動を通じて、企業コスト最適化生産性向上資産価値維持向上効果を得られ、企業競争力基盤強化できます。

3-1. コストの最適化

FMが目指すのは、単なる削減ではなく、運用コスト全体最適化です。まず、エネルギー使用見直しを通じてコスト抑制します。高効率空調やLED照明への更新は、光熱費削減直結する代表的手法です。

また、修繕費抑制安定化重要課題です。ファシリティ劣化状況定期的点検し、予防保全実施することで、突発的修繕費を抑えられます。長期的視点計画的投資することが、結果的コスト安定につながります。

さらに、利用されていない会議室倉庫といった遊休スペース共有オフィス貸出活用すれば、維持費削減同時に新たな収益を生み出すことが可能です。

3-2. 従業員の生産性と満足度の向上

快適機能的職場環境は、従業員知的生産性定着率に大きな影響を与えます。空調照明などの基本的設備に加え、集中スペース交流スペースバランスよく配置することで、働きやすさが向上します。

特に、オフィスレイアウト工夫効果的です。動線整理したり、フリーアドレスオープンスペース導入したりすることで、部門を超えたコミュニケーション活性化し、組織全体パフォーマンス向上につながります。

3-3. 資産価値の維持・向上

ファシリティ時間経過とともに劣化しますが、適切維持管理計画的修繕を行うことで長寿命化を図れます。これにより、不動産としての資産価値を高め、企業経営基盤安定させることが可能です。

特に重要なのが、長期修繕計画策定です。劣化状況を踏まえて修繕時期内容をあらかじめ計画すれば、突発的費用発生を防ぎ、予算効率的配分できます。結果として、ファシリティ価値維持しながら持続的活用できる環境が整います。

4.ファシリティマネジメントの導入手順

ファシリティマネジメントの導入手順のイメージ画像

FMは、次の4つのステップ導入を進めます。

  • ステップ1: 現状調査課題の洗い出し
  • ステップ2: 改善計画策定
  • ステップ3: 実施体制構築実行
  • ステップ4: 効果測定継続的改善

以下では、それぞれのステップについて詳しく解説します。

4-1. ステップ1: 現状調査と課題の洗い出し

FMの第一歩は、利用状況を正しく把握することです。調査対象には、電気空調などのエネルギー使用量オフィス会議室スペース効率、さらには職場環境に対する従業員満足度を含めます。

エネルギーメーター利用状況ログによる定量データ収集に加え、アンケートヒアリングを通じて従業員意見把握するといった調査方法有効です。また、現地調査を通じてファシリティ老朽化レイアウト課題確認することで、改善に向けた課題明確にできます。

4-2. ステップ2: 改善計画の策定

現状調査で明らかになった課題を基に、改善計画を立てます。ここで重要なのは、すべての課題同時対応するのではなく、費用対効果を踏まえて優先順位を付けることです。例えば、省エネ設備導入など効果がすぐに表れる施策早期着手し、大規模修繕のように費用がかかる施策中長期で進めます。

短期中期長期視点を取り入れることで、即効性のある改善将来見据えた投資バランスよく行えます。これにより、持続的経営効率を高める実行性のある計画策定することが可能です。

4-3. ステップ3: 実施体制の構築と実行

改善計画実現するためには、まず責任者設定が欠かせません。総務部門だけではなく、経理情報システム部門など複数部署関与するため、役割分担整理し、連携体制を整えます。

また、専門的知見が求められる場合は、外部コンサルタントアウトソーシング活用有効です。例えば、省エネ設備導入建物診断といった専門領域外部の力を借りることで精度が高まり、効率的実行できます。組織内外リソースを組み合わせ、計画着実に進めることが成果につながります。

4-4. ステップ4: 効果測定と継続的な改善

FMの取り組みを定着させるには、KPI (重要業績評価指標) を設定し、定期的効果測定します。光熱費削減率修繕コスト低減率従業員満足度スコアといった数値を用いれば、改善成果客観的評価できます。

その結果を基に、次の計画反映する「PDCAサイクル」を回すことで、取り組みを継続的進化させられます。単発改善で終わらせず、効果測定改善を繰り返すことで、長期的安定した経営基盤構築につながるでしょう。

5.ファシリティマネジメントの認定資格「認定ファシリティマネジャー (CFMJ)」とは

認定ファシリティマネジャー (CFMJ) ※ 外部サイトに遷移します」は、公益団体認定する民間資格です。日本ファシリティマネジメント協会 (JFMA)、日本プロパティマネジメント協会 (NOPA)、建築設備維持保全推進協会 (BELCA) の3団体協力して認定運営しています。

ファシリティマネジメントの認定資格「認定ファシリティマネジャー (CFMJ)」とはのイメージ画像

この資格では、FM統括マネジメント計画運営財務分析評価プレゼンテーション能力に加え、社会性人間性企業性施設情報といった多岐にわたる専門知識が問われます。施設を単なる建物として管理するのではなく、経営環境人材・コスト各観点から企業価値を高める知識体系習得していることを証明するものです。

5-1. 資格を取得するメリット

資格取得すれば、専門性客観的証明でき、キャリア形成の大きな武器となります。体系的知識習得することで、業務改善提案説得力が増し、転職関連部門での信頼性向上にもつながるでしょう。

また、専門家として業務遂行力を認められると、経営層関係部門からの評価を得やすくなり、プロジェクトリーダー新規施策担当といった責任ある役割を担う機会も広がります。

6.ファシリティマネジメントの効果を高めるポイント

FMを成功させるには、以下の3点が重要です。

  • 経営陣コミットメントを得る
    経営課題解決企業価値向上と結び付けて提案し、予算協力を引き出す。
  • 部門間連携体制構築する
    部門間情報共有役割分担明確にすることで、全社的一貫した改善策実行できる。
  • 効果測定指標 (KPI) を明確にする
    光熱費削減率満足度などを設定し、成果客観的評価して改善に活かす。

6-1. 経営陣のコミットメントを得る

FMを実行するには、予算確保全社的協力体制不可欠であり、そのためには経営層理解を得ることが最優先です。FMを単なるコスト削減策ではなく、経営課題解決企業価値向上直結する取り組みであると示すことで、経営陣支持を得やすくなります。

例えば、生産性向上やESG経営推進といった全社的テーマと結び付けて提案すれば、経営層からの強いコミットメントを引き出すことが可能です。

6-2. 部門間の連携体制を構築する

FMは総務だけで完結せず、経理情報システムなど多くの部署が関わります。部門ごとに目的関心が異なるため、強固連携体制を築くことが成功の鍵となります。

具体的には、定期的情報共有会議を設け、設備更新コスト削減進捗確認する仕組みづくりが有効です。また、役割分担明確化し、部門横断迅速意思決定できる体制を整えることで、効率的にFM施策実行できます。

6-3. 効果測定の指標 (KPI) を明確にする

FMの成果客観的把握し、取り組みを継続させるには、事前にKPI (重要業績評価指標) の設定が欠かせません。目的曖昧なままでは改善効果を示せず、次の施策につなげるのが困難となります。

具体例としては、エネルギー効率を示す「光熱費削減率」や、修繕コスト削減額といった定量的指標があります。さらに、従業員満足度アンケートスコア定着率変化といった定性的指標活用することで、多角的効果評価し、改善に活かせるでしょう。

7.まとめ

ファシリティマネジメント (FM) は、従来施設管理を超え、経営資源としての価値最大化する取り組みです。コスト削減生産性向上資産価値維持向上といった効果期待でき、企業競争力強化直結します。

導入に際しては、現状把握から計画実行改善までを着実に進めることが求められます。さらに、経営層理解部門間連携効果測定徹底することで、継続的成果安定した経営基盤構築可能です。

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