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ランサムウェアとは、「ランサム (身代金)」と「ソフトウェア」を組み合わせた言葉で、感染したコンピューター内のデータを暗号化し、その復元と引き換えに金銭を要求する悪意のあるプログラムです。攻撃者はメールや不正サイトなどを経由して企業や個人に侵入し、業務データを人質に取るような形で金銭を得ようとします。感染後は「◯◯時間以内に支払わなければデータを削除する」といった脅迫メッセージを表示し、被害者の不安をあおります。バックアップがない場合、復旧が極めて難しいことから、事前の予防策が最も重要です。
テレワークやクラウド利用の拡大で企業のセキュリティは複雑化し、ランサムウェア攻撃が急増しています。社外アクセス増加によりSSL-VPN機器の脆弱性や安全性の低いWi-Fiが狙われ、従来の境界型防御では対応困難です。さらに犯罪組織はAIや合成音声を駆使し、自然なメールや請求書で侵入、管理者権限を奪って水平展開するなど手口が高度化。多くの企業はゼロトラスト導入が遅れ、クラウドやリモート環境に適応できていません。
こうした環境変化と防御の遅れが、ランサムウェア攻撃を激化させる背景となっています。
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ランサムウェアを防ぐには、日常のセキュリティ意識とシステム面の両立が重要です。ここでは、企業が実践できる7つの具体的対策を紹介します。
古いソフトウェアには修正されていない弱点 (脆弱性) があり、そこを攻撃者に突かれると簡単に侵入を許してしまいます。OSやアプリは、開発元が見つけた脆弱性を改善するために定期的に更新されています。配布されたパッチをすぐに適用し、常に最新の状態を保つことが基本です。特に業務で使う端末は、自動更新の設定を有効にしておくと更新遅れを防げます。
請求書や配送通知のように見せかけたメールの添付ファイルを開いた瞬間、裏でマルウェアが動き出すという手口が一般的です。送られてきたメールの差出人情報が正しいか、件名や文章に違和感がないかを必ず確認しましょう。
また、WordやExcelが「マクロを有効にしてください」と求めてくる場合は特に注意が必要です。許可してしまうと、マルウェアが実行されてしまうおそれがあります。
正規のサイトや公式アプリストア以外から入手したファイルには、マルウェアが紛れ込んでいることがあります。ダウンロードする前に、URLが暗号化通信を示す「https」で始まっているかを必ずチェックしましょう。ファイル名や拡張子が不自然な場合も警戒が必要です。業務用の端末では、管理者が承認したサイトだけを利用するルールを設けると安全性が高まります。
データが暗号化されても、バックアップがあれば迅速に復旧できます。よく使われるのが「3-2-1ルール」です。これは、データのコピーを3つ作り、2種類のメディアに保存し、そのうち1つを別の場所で保管するという考え方です。クラウドストレージと外付けハードディスクの併用などが典型的な例です。自動でバックアップをすると管理が楽になり、定期的に復元テストを行えば、実際に使える状態を維持できます。
マルウェア感染の多くは、メールの開封やリンクのクリックといった人の操作がきっかけになります。定期的な教育を行い、最新の攻撃手口を共有することで危険を見抜く力が育まれます。
また、標的型メールを模した訓練を実施すると、実際の場面での判断がより正確になります。社内ルールを文書化して周知し、誰もが同じ基準で行動できる環境を整えることが、組織全体の防御力強化につながります。
外部からの攻撃を防ぐには、ネットワークの入口を守ることが必要です。ファイアウォールを適切に設定することで、不要な通信を遮断し、不正なアクセスをブロックできます。さらに、外出先やカフェのWi-Fiなど不特定多数が利用する環境では、通信が暗号化されるVPN (仮想専用線) 経由での接続が欠かせません。安全な通信経路を確保することで、情報の盗み見や改ざんを防げます。
セキュリティソフトは、ウィルス検知だけでなく、不正通信の遮断や迷惑メール対策など多機能な製品を選ぶとより安心です。
ただし、インストールしたまま更新しないと最新の脅威に対応できなくなってしまいます。定期的なアップデートでパターンファイルを最新に保ち、常に最大限の防御力を発揮できる状態にしましょう。法人向けの製品では複数の端末をまとめて管理できるため、担当者の運用負担を軽減できます。
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ランサムウェアを防ぐには、感染前後の両方を想定した多層的な対策が効果的です。企業が導入すべき代表的なセキュリティツールを4つ紹介します。
企業システムの中でも、特に厳重に扱うべきなのが管理者向けの「特権ID」です。特権IDを奪われてしまうと、社内データの書き換えや削除など、重大な事故につながる可能性があります。これを防ぐ方法として欠かせないのが、多要素認証 (MFA) です。パスワードだけに頼らず、ワンタイムパスコードや生体認証を組み合わせることで、なりすましを防ぎやすくなります。また、ZTNA (ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス) を導入すると、信頼できる利用者と端末のみを許可する環境をつくれます。さらに、ログを細かく記録しておくことで、異常な操作をすぐに察知しやすくなり、早期対応にもつながります。
サイバー攻撃の侵入を防ぐには、複数の防御機能を組み合わせると効果的です。基本となるのはファイアウォールで、怪しい通信を自動的に遮断し、システムを外部の脅威から守ります。
さらに、EDR (Endpoint Detection and Response) を活用すると、端末で起きている小さな異変をリアルタイムで捉え、マルウェアの活動を早い段階で発見できます。AIを搭載した製品なら、これまでに例のない攻撃にも柔軟に対応でき、リスクを最小限に抑えられます。
また、SOC (セキュリティ監視センター) と連携して24時間体制の監視を行えば、深夜や休日に発生した攻撃にも迅速に対応でき、より強固な防御体制を築けます。
社外への情報流出を防ぐには、DLP (Data Loss Prevention) や通信監視ツールの導入が効果的です。DLPは、社内データの持ち出しや送信を自動で検知・制御する仕組みで、メール添付やUSBコピーなどの不正操作を防ぎます。また、通信監視ツールを使えば、社外とのデータのやり取りを常時チェックでき、不審な転送やアップロードを早期に発見できます。さらに、重要情報にはアクセス制限をかけ、操作ログを定期的に確認することで、内部不正の抑止にもつながります。技術対策と運用ルールを組み合わせることが、最も効果的な情報漏えい防止策です。
ランサムウェアなどでデータが使えなくなった場合でも、バックアップがあれば業務を早く再開できます。クラウド型のバックアップサービスを使えば、遠隔地にもデータを保管でき、自社が災害に遭ったときも復旧しやすい点が魅力です。特に「3-2-1ルール」と呼ばれる保存方法が有効で、データを三つのコピーに分け、二種類の媒体に保存し、一つを別の場所に置くことで安全性を高められます。自動バックアップ機能があれば、取り忘れを防ぎやすくなります。さらに、定期的に復元テストを行い、非常時に確実に戻せる状態を保っておくことが大切です。保存データを暗号化しておけば、万が一盗まれても内容を読み取られず、より安心です。
ランサムウェアは日々進化しており、企業にとって大きな脅威のひとつです。感染を防ぐためには、日常的なシステム更新、バックアップの実施、従業員教育といった基本的な対策を徹底することが何より重要です。また、万一感染しても初動対応を冷静に行うことで、被害を最小限に抑えられます。技術的な防御と人の意識、どちらも欠かせません。自社の状況に合ったツールや運用ルールを整え、継続的に見直していくことが、安心して事業を続けるための最善策です。
サイバー攻撃の脅威は日々高度化しており、単一の防御では限界があります。
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