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AIエージェントとは、人間の代わりに周囲の状況やデータを理解し、状況に応じて自律的に判断・行動できるシステムです。単純な指示に従うだけではなく、入力情報を基に目的達成のための行動を計画し、必要に応じて調整しながらタスクを遂行します。
例えば、問い合わせ対応の自動化の場合、顧客からの質問内容を理解して最適な回答を返します。従来のAIが単一機能を担うのに対し、AIエージェントは複数の機能を組み合わせて柔軟に動作できるため、業務効率化や顧客満足度の向上など、さまざまなメリットにつながる存在として注目されています。
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生成AIとAIエージェントは、共にAI技術ですが、生成AIは「新しいコンテンツを生み出す技術」で、AIエージェントは「自律的に行動する仕組み」です。
生成AIは、大量の学習データを基に文章や画像を作り出すことに強みがあります。一方のAIエージェントは、環境を理解して目的に沿った行動を選択できる点が特徴です。この違いを理解することで、AIエージェントがより幅広い業務やサービス改善に応用できることがわかります。
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AIエージェントの仕組みは複数の要素が組み合わさって機能します。ここでは
の4つを中心に解説します。
環境とは、AIエージェントが動くために収集する周りの状況やデータのことです。この環境を基に、AIは次にどの行動を取るかを決めます。
例えば、工場であれば温度センサーや機械の稼働状況、オフィスであればシステムのログや取引データが環境に該当します。
アーキテクチャは、AIエージェントが動作するための基盤で、物理構造やソフトウェアなどの組み合わせで構成されます。例えば、ロボット型のAIエージェントでは、アクチュエーター (AIシステムが物理的な環境に影響を与えるための手段) やセンサー、モーター、ロボットアームなどの物理的な構成要素がアーキテクチャに該当します。
エージェント機能は、人が細かく指示を出さなくても自律的にタスクを進められるよう、人間の思考に近い「観測→認識→意思決定→実行→フィードバック」の流れで動作します。
例えば、問い合わせ対応では質問を理解したうえで、回答の方針を決め、返信し、顧客の反応確認までを自動で行います。この仕組みにより、担当者の最小限の指示でAIエージェントが業務を自律的に進められるため、作業負担の軽減と効率化を実現可能です。
エージェントプログラムとは、環境やアーキテクチャ、エージェント機能をつなぎ、設計に沿って実際に動作する中核部分を担うソフトウェアです。環境から取り込む情報やデータを解析し、規則や学習モデルを用いて次に取るべき処理や操作を決定します。
例えば、チャットボットでは、ユーザーからの質問 (環境) を受け取り、言語処理モデル (アーキテクチャ) で内容を理解し、意図を判断 (エージェント機能) したうえで、FAQデータベースから適切な回答を選んで返答します。このように、複数の要素を統合して一連の処理を自動で実行するのがエージェントプログラムです。
AIエージェントは、動作の仕組みや意思決定の範囲によって複数のタイプに分類されます。それぞれの特性や得意分野を理解することで、自社の目的や利用環境に最も適したエージェントを選定する判断材料となります。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
単純反射型エージェントは、環境からの入力に対して、あらかじめ定められたルールに従って即座に反応を返す仕組みです。現在の観測情報だけを基に、センサーが一定の条件を満たすと決まった処理を実行するため、設計がシンプルで誤作動も少なく、動作が安定しているのが特徴です。
例えば、信号機の制御や温度センサーを用いたエアコンの自動調整はこの方式を採用しています。ただし、過去の履歴や将来の予測を考慮できないため、複雑な状況や不確実性の高い環境には対応が難しいという制約があります。
モデルベース反射型エージェントは、単純反射型に環境の内部モデルを組み合わせた進化形です。環境の内部モデルとは、エージェントが周囲の環境を抽象化・簡略化して内部に保持する仮想的な地図や構造のことです。これにより、モデルベース反射型エージェントは、現在の入力に加えて過去の状態や環境の変化を保持し、そのモデルを活用してより適切な行動を選択します。
例えば、倉庫内の自動搬送ロボットは、在庫の位置や移動経路をモデル化し、効率的な動きを実現します。内部モデルによって柔軟性が増し、複雑な環境でも対応可能ですが、モデルの精度が低いと誤った判断を下すリスクがあるため、常に更新や改善が必要です。
目標志向型エージェントは、あらかじめ設定された目標を達成することを中心に行動します。現在の状態と目標との差を評価し、最も合理的に到達できる行動を選ぶ点が特徴です。
目標志向型エージェントの代表例としてカーナビがあります。目的地に到達するため複数経路を比較し、所要時間や交通状況を考慮して最適なルートを案内します。柔軟で高度な判断が可能ですが、目標が不明確な場合や、競合する目標がある場合は処理が複雑となり、システムの負荷やコストが増える点が課題です。
効用志向型エージェントは、単に目標を達成するだけではなく「どの選択肢が最も望ましい結果をもたらすか」を効用関数で評価します。リスクと利益を比較しながら行動を決定できるため、現実的で柔軟な判断が可能です。
株式投資の自動売買システムが例として挙げられ、利益最大化とリスク軽減を同時に考慮して取引を行います。効用関数の設計が適切であれば意思決定プロセスにおいて非常に強力ですが、現場の状況を正しく反映させることは難しい可能性があり、専門知識やデータの裏付けが必要です。
学習型エージェントは、環境からのフィードバックを活かして試行錯誤を繰り返し、行動を改善していく仕組みです。過去の経験を蓄積し、より効率的で成果につながる判断を行えるようになります。
ゲームAIやカスタマーサポートの自動応答が代表的な例です。ゲームAIでは、対戦を重ねる中で戦術を学び、勝率を上げていきます。自動応答では、利用者とのやり取りを蓄積し、回答精度を向上させます。
未知の状況にも対応できる点が強みですが、膨大なデータや計算資源を要するため、導入・運用コストが高くなりやすい点に注意が必要です。
AIエージェントは業務の幅広い領域で活用できます。以下では
という5つの切り口で、具体例を交えながら解説します。
AIエージェントは、人間が多くの時間を費やしていた繰り返し作業を、正確かつ効率的に処理します。例えば、請求書の読み取りから会計システムへの自動登録、定型メールの作成と送信、会議日程の自動調整まで実行可能です。
AIエージェントは膨大なデータを短時間で処理し、人間では見落としがちな傾向や異常を即座に抽出可能です。小売業では購買履歴を分析して需要を予測し、在庫の過不足を防ぐ仕組みに応用されています。
AIエージェントはユーザーごとの嗜好や状況を理解し、個別に最適化された提案を行えるのが特徴です。ECサイトでは、購買履歴や閲覧傾向を分析して関連商品やおすすめ商品を提示し、購入率を高めています。
AIエージェントの導入は、人件費の削減にも大きな効果を発揮します。多くのコールセンターでは、AIチャットボットが一次対応を担い、問い合わせの多くを自動で解決できるようになりました。
AIエージェントは24時間365日稼働するため、夜間や休日にも途切れなく対応可能です。
物流分野では、荷物追跡や配送状況確認をAIエージェントに任せることで、深夜帯でも途切れなく対応できる仕組みを提供しています。これにより、サービス停止のリスクを最小化し、顧客の信頼性向上にもつながっています。
AIエージェントはKDDIの取り組みにおいても、すでに多様なシーンで活用されています。ここでは、代表的な3つの事例について、どのような課題が解決され、どのような成果を得られたのかを解説します。
スポーツ観戦では、人員不足や混雑対応が大きな課題となっていました。KDDIは案内ロボットや表情認識機能を備えたサービスロボットを導入し、飲食提供や来場者案内を自動化。これにより、スタッフの負担を軽減しながら、利用者にスムーズなサービスを提供できる環境を実現しました。
さらに、デジタル注文機能を組み合わせることで、混雑緩和や在庫リスクの抑制にも効果を発揮しました。AIエージェントは、運営の効率化と顧客満足度向上の両立を可能としています。
事例の詳細は以下をご覧ください。
カスタマーサポート業務では、オペレーターの負担増加や応対品質のばらつきが課題でした。KDDIは生成AIを活用したチャット対応を導入し、顧客からの問い合わせを自動処理する仕組みを整備。これにより、応対完結率が大幅に向上し、定型的な質問への対応をAIが担うことで、人件費の削減と応答速度の改善を同時に実現しました。
また、音声認識を活用し、オペレーターの応対音源を自動で評価する分析も進み、応対品質管理の工数を削減するとともに、顧客満足度の維持にも貢献しています。AIエージェントは、人と機械の役割分担を最適化することで、効率と品質の両立を可能としました。
事例の詳細は以下をご覧ください。
マーケティング領域では、顧客に合わせたメッセージ配信の効率化が求められていました。KDDIは、自律型AIエージェントと連携したメッセージ配信サービスを導入。属性情報や購買履歴、行動パターンなどの顧客データを分析して最適な文面を自動生成し、配信タイミングも調整できる仕組みを構築しました。
これにより、担当者は大量の文案作成や配信管理から解放され、戦略立案に専念できます。顧客一人ひとりに合わせてパーソナライズされた情報発信により、開封率・到達率が上がり、マーケティング効果の向上と業務効率化の両方を実現しました。
事例の詳細は以下をご覧ください。
AIエージェントの効果は、タスクの自動化、データ解析、サービスのパーソナライズ化、人件費削減や24時間稼働の実現など多岐にわたります。
KDDIが取り組んできた事例からも、AIエージェントの導入が具体的な業務課題の解決に直結し、市場競争力の向上につながることを確認できます。今後もAIエージェントは、成長戦略を支える不可欠な存在となっていくでしょう。
KDDIは、AIの導入に必要な高度なセキュリティやセキュアな環境の提供から、導入時のコンサルティング、設計、構築までをトータルサポートし、安心してAIを活用できる環境を整備します。さらに、関連するサービスや事例も豊富に揃えており、導入効果を具体的にイメージしていただけます。詳細は以下のページをご覧ください。
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