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5G (第5世代移動通信システム) とは、これまでの通信技術を大きく進化させた次世代の通信規格です。スマートフォンだけでなく、自動運転や遠隔医療など、さまざまな分野での活用が期待されています。
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5Gの主な特長
以下では、これらの特性を可能にしている技術的な仕組みと、従来の4Gとの違いについて詳しく見ていきましょう。
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5Gが「超高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」といった特長を実現できる背景には、いくつかの新しい技術が活用されています。
そのひとつが、これまでモバイル通信で使われてこなかった「ミリ波」や「Sub6 (サブシックス)」といった新しい周波数帯の利用です。
これらの高い周波数帯は、一度に多くの情報を伝送できるため、通信の高速化・大容量化に貢献します。
また、「ビームフォーミング」という技術により、電波を特定の端末に集中させて効率的に届けることが可能になりました。
さらに、端末の近くにサーバーを分散配置する「エッジコンピューティング」によって、データ処理の遅延を最小限に抑え、リアルタイムな通信を実現する仕組みとなっています。
5Gと4G (LTE) の大きな違いは、「通信速度」「遅延」「同時接続数」の3点に集約されます。それぞれの違いは以下の比較表のとおりです。
| 項目 | 5G | 4G (LTE) | 5Gと4Gの比率 |
|---|---|---|---|
| 通信速度 | 最大10Gbps | 最大1Gbps | 約10倍 |
| 遅延時間 | 1ミリ秒 | 10ミリ秒 | 約1/10 |
| 同時接続数 | 100万台/㎢ | 10万台/㎢ | 約10倍 |
この比率から、5Gの進化がいかに劇的であるかが分かるでしょう。5Gは家庭用の光回線に匹敵、またはそれ以上の通信環境を無線で実現できる点で、4Gとは大きく異なります。
移動通信システムは、1980年代の1Gの登場以来、約10年周期で新たな世代へと進化を続けています。1980年代に登場した1Gのアナログ通信から始まり、世代を重ねるごとに通信速度や機能が進化し、私たちの生活の利便性は飛躍的に向上してきました。
各世代の技術がどのような特徴を持ち、社会にどのような恩恵をもたらしてきたのか、その変遷を振り返ることで、5Gが持つ革新性をより深く理解できます。
1980年代に登場した第1世代移動通信システム (1G) は、移動通信の歴史の始まりを告げるものでした。
この時代の通信はアナログ方式で行われており、主に音声通話のために利用されていました。
映画やドラマで見るような、肩に掛けて使う大型の「ショルダーホン」がその象徴です。
当時はまだ携帯電話を持っている人はごく一部で、非常に高価なものでした。
アナログ通信のため、通話品質は不安定で、電波を傍受されるといったセキュリティ上の課題も抱えていました。
しかし、屋外で電話ができるという画期的な体験は、後の世代での爆発的な普及の礎となり、デジタル化への移行を促すきっかけとなりました。
1990年代に入ると、第2世代移動通信システム (2G) が登場し、通信方式がアナログからデジタルへと大きく転換しました。
デジタル化によって、音声通話の品質が向上し、通信内容を暗号化できるようになったため、盗聴のリスクが大幅に低減しました。
この時代に生まれた大きな変化の一つが、データ通信の始まりです。
短いテキストメッセージを送り合える「SMS (ショートメッセージサービス)」や、「iモード」に代表される携帯電話専用のインターネット接続サービスが登場しました。
これにより、携帯電話は単なる通話の道具から、情報をやり取りするツールへと進化を遂げ、モバイルコミュニケーションの新たな可能性を切り開きました。
2000年代に普及した第3世代移動通信システム (3G) は、本格的なモバイルインターネット時代の幕開けを告げました。
2Gに比べて通信速度が格段に向上し、世界中で利用できる標準規格が定められたことで、携帯電話でのインターネット利用がより身近なものになりました。
写真付きのメール (写メール) の送受信や、音楽コンテンツをダウンロードする「着うた」、動画コンテンツの視聴など、扱えるデータ量が大きいサービスが次々と登場しました。
この時期にスマートフォンの原型となる端末も現れ始め、モバイル通信の利用シーンは通話やメールから、よりリッチなコンテンツを楽しむ方向へと大きくシフトしていきました。
2010年代に主流となった第4世代移動通信システム (4G) は、LTE (LongTermEvolution) という名称でも知られています。
3Gから通信速度が飛躍的に向上し、高速・大容量通信が実現したことで、スマートフォンの爆発的な普及を支えました。
高画質な動画のストリーミング再生や、オンラインゲーム、大容量アプリケーションのダウンロードなどがストレスなく行えるようになり、人々の生活に深く浸透しました。
SNSの利用拡大や、クラウドサービスの普及も4Gの高速通信があったからこそ可能になったと言えます。
現在の私たちのモバイルライフの基盤を築いたのが、この4G通信技術です。
2020年代に入り、本格的に導入が始まった第5世代移動通信システム (5G) は、従来の4Gとは一線を画す革新的な通信技術です。
5Gは「超高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」という3つの特長を備えており、通信速度は4Gの約20倍、遅延は10分の1、同時接続可能な端末数は10倍にまで向上しています。
これにより、スマートフォンの利用体験がさらに快適になるだけでなく、IoT機器の普及、自動運転技術の進化、遠隔医療の実現など、さまざまな分野での活用が期待されています。
5Gは、私たちの暮らしを支えるインフラとして、社会全体のデジタルトランスフォーメーション (DX) を加速させる重要な役割を担っています。
5Gの実用化は、私たちの生活やビジネスに大きな変化をもたらす可能性を秘めています。通信速度の飛躍的な向上により、これまで実現が困難だった新たな活用例が生まれています。
以下では、特に注目される4つの具体的な事例をご紹介し、5Gがもたらす未来の可能性について詳しく解説します。
5Gの普及により、IoT (モノのインターネット) 技術が急速に進化し、私たちの暮らしにも大きな変化が訪れています。特にスマートホームの分野では、日常生活のあらゆる場面がより便利で快適に変わりつつあります。
例えば、AIスピーカーに「電気をつけて」と話しかけるだけで照明が点灯し、外出先からスマートフォンでエアコンの温度調整や玄関の施錠確認ができるようになりました。冷蔵庫が食材の在庫を管理し、足りないものを自動で注文する機能も登場しています。
また、家庭だけでなく、農業や工場、都市インフラにもIoTが広がっています。農地ではセンサーが土壌の水分や気温を測定し、最適なタイミングで自動的に灌水を行うことで省力化と収穫量の向上を実現。都市では、信号機や街灯がリアルタイムで制御され、交通の最適化やエネルギーの効率化に貢献しています。
5Gは、リアルタイムでの通信が不可欠な分野で大きな力を発揮します。
例えば、建設現場で重機を遠隔地から操作したり、専門医が離れた場所から手術の支援を行ったりすることが可能になります。データのやり取りに遅延がほとんどないため、まるでその場で操作しているかのような精密なコントロールが実現できます。
また、自動運転技術においても、車両が周囲の車や信号機などの交通インフラと瞬時に通信し、危険を予測して回避するV2Xという仕組みに5Gは欠かせません。多数同時接続の性能と合わせて、より安全でスムーズな交通社会の実現に貢献します。
5Gになることで、4Kや8Kといったデータ量の大きい高精細な動画でも、スマートフォンで読み込み時間を待つことなくスムーズにストリーミング再生できるようになります。例えば、映画1本分 (約2時間) のデータを数秒でダウンロードすることも理論上は可能です。
スポーツ中継をマルチアングルで楽しんだり、音楽ライブを好きな視点から視聴したりと、よりリッチで自由な映像体験が身近になります。これにより、移動中や外出先でも、場所を選ばずに高品質なエンターテインメントを楽しめるようになります。
5Gは、VR (仮想現実) やAR (拡張現実) といった技術の可能性を大きく広げます。これらの技術は、リアルな映像を生成するために膨大な量のデータを必要としますが、5Gの「超高速・大容量」かつ「超低遅延」な通信を使えば、データを瞬時に送受信できます。
例えば、スポーツ観戦の例でいえば、VRヘッドセットを装着することで、まるでスタジアムの特等席にいるかのような臨場感あふれる視聴が可能になります。また、ARグラスを通して街の風景を見ると、目の前に店舗情報や道案内が浮かび上がるといった体験も実現できます。
このように、エンターテインメントから教育、業務支援に至るまで、さまざまな分野で没入感の高い新たなサービスの創出が期待されています。
5Gは多くのメリットをもたらす一方で、本格的な普及にはいくつかの課題やデメリットも存在します。
5Gへの乗り換えを検討する際には、これらの点を事前に理解しておくことが重要です。
5Gの導入における現時点での大きなデメリットは、利用できるエリアがまだ限定的であることです。
都市部を中心にエリアは着実に拡大していますが、全国どこでも5Gにつながるという状況には至っていません。
特に、地方や山間部、建物の内部、地下街などでは、まだまだ4Gが通信の主流です。
そのため、5G対応プランを契約し、対応スマートフォンを持っていても、日常生活の多くの場面では4Gで通信することになる可能性があります。
5Gの恩恵を十分に受けるためには、自身の生活圏や勤務先が5Gエリアに含まれているかを、各携帯キャリアの公式サイトで事前に確認する必要があります。
5Gの通信サービスを利用するためには、5Gの電波 (周波数帯) に対応した専用のスマートフォンが必須です。
現在使用しているスマートフォンが4G専用モデルの場合、通信プランを5G対応のものに変更しただけでは5G通信は利用できません。
5Gを利用したい場合は、端末ごと新しいモデルに買い替える必要があります。
近年発売されるスマートフォンの多くは標準で5Gに対応していますが、機種変更には端末の購入費用が発生します。
この初期投資が、5Gへの乗り換えを検討する上での一つのハードルとなる場合があります。
5G通信は4Gに比べて高速で大容量のデータを処理するため、スマートフォンのプロセッサにかかる負荷が大きく、バッテリーの消費量が増える傾向にあります。
特に、5Gエリアと4Gエリアの境界付近で通信する際には、端末が接続する電波を頻繁に切り替えるため、バッテリーをより多く消耗することがあります。
ある調査では、同じ端末で比較した場合、5G通信時のバッテリー駆動時間は4G通信時より最大で約2時間 (約15%) 短くなったという報告もあります。
多くの5G対応スマートフォンには、通信状況に応じて自動で5Gと4Gを切り替える省電力機能が搭載されていますが、それでもバッテリーの持ちを重視する場合は注意が必要です。
日本国内における5Gの対応エリアは、各携帯キャリアが整備を進めており、都市部を中心に拡大を続けています。
ただし、キャリアによって整備状況には差があるため、契約前に確認が必要です。
また、5Gで使われる電波には、広範囲をカバーしやすい「Sub6」と、超高速通信が可能ですが範囲が限定的な「ミリ波」の2種類が存在します。
自分が利用したい場所がどちらの電波に対応しているかも、通信品質を左右する重要な要素となります。
日本の大手の通信キャリアは、それぞれ5Gのサービスを提供しており、公式サイト上で詳細な対応エリアマップを公開しています。
これらのマップを利用すれば、自宅や職場、よく訪れる場所などが5Gエリア内にあるかを視覚的に確認できます。
エリアの拡大は主に人口の多い都市部から進められており、地方都市や郊外へも順次拡大が進められている状況です。
ただし、キャリアごとに基地局の設置状況や整備計画が異なるため、同じ地域でもキャリアによって5Gのつながりやすさには違いが見られます。
そのため、乗り換えを検討する際は、利用したいキャリアのエリアマップを必ず確認することが重要です。
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5Gの周波数帯は、「Sub6」と「ミリ波」の2種類に大別されます。Sub6は、現在主流の4Gに近く6GHz未満の周波数帯を利用しており、障害物に強く広範囲をカバーしやすいという特長があります。これに対し、ミリ波は28GHz帯などの高い周波数帯を使用するため、通信速度はSub6より大幅に速いですが、電波が直進しやすく障害物の影響を受けやすいという弱点があります。
現在、国内で「5G」と表示されるエリアの多くは、Sub6の周波数帯で構築されています。ミリ波はスタジアムや駅、大規模商業施設など、特定の施設や人が多く集まる場所に限定して展開されているのが現状です。各携帯キャリアは、Sub6による全国的なエリアカバーと、ミリ波による局所的な超高速エリアの拡大を同時に進めており、今後も基地局の整備を通じて5Gエリアのさらなる拡大が期待されています。
5Gは「超高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」という3つの大きな特長を持つ第5世代移動通信システムです。
4Gから進化したこの技術は、高精細な動画視聴や快適なオンラインゲームといった個人の体験を向上させるだけでなく、IoTの普及や自動運転、遠隔医療といった社会インフラの革新を支える基盤となります。
一方で、5Gの導入には、まだ利用エリアが限定的であることや、対応するスマートフォンが必要になるなどの課題も残っています。
5Gのメリットとデメリットを正しく理解し、各キャリアの対応エリアなどを確認した上で、自身の使い方に合った導入を検討することが求められます。
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