この数年、有効求人倍率は上昇の一途をたどっており、2018年6月に厚生労働省が発表した統計では、有効求人倍率が1.60倍とバブル期を上回る高水準となっています。そんななか新卒採用も売り手市場で推移しており、多くの企業が必要な人材の採用に苦労している現状があります。
高水準で推移する求人倍率は、人材採用に大きな影響を及ぼします。新卒採用では、学生は早い段階で内定をもらうことは当たり前で、中には複数社から内定をもらう学生も珍しくありません。優秀な学生はどの企業も欲しがり、取り合いになっているのです。
一般的に、採用が売り手市場になると、学生の大手志向が強まります。より規模が大きくて安定していそうな会社へ、あまり聞いたことがない会社よりも聞いたことがある会社へ。従業員数が100~500名程度の中堅企業では、よほど知名度が高くない限り、新卒採用では苦戦を強いられているでしょう。
だからといって、中途採用に力を入れるだけでは問題は解決しません。現在のような極端な売り手市場は中途採用にも大きな影響を及ぼし、環境は同様に厳しいといえます。企業の将来、成長を考えるならば、新たな人材採用は不可欠です。そこで、中堅企業でも優秀な人材を採用できるような工夫をしなければなりません。
採用選考は、まず『母集団の形成』から始まります。『母集団』とは企業説明会や採用メディアなどを通じて集めた、選考に入る前の学生のことです。まずはこの母集団が何人集まっているかが大切なポイントになります。これは、採用メディアでの広報、説明会での工夫などを続けるしかありません。ところが、この段階で苦労して母集団を集めても、その後に大きな課題があります。書類選考、面接を続けていく中で、一定数以上の『辞退』が発生するのです。辞退は選考中だけではなく、内定を出した後にも起こります。せっかく興味を持ってくれて母集団に加わった学生が、選考途中や内定後に辞退してしまうことは大きな問題です。その段階では新たな母集団の獲得は難しくなっており、辞退が増えると人材の数を確保するために選考基準を見直すといった判断まで必要になることもありえます。
内定辞退が起こる理由としては「選考前に示された条件と違った」「選考が進むに連れ、思っていた事業内容、仕事内容ではないと感じた」「面接で不愉快な思いをした」「他社の選考が早く進み、内定が出た」「複数の内定をもらったが、双方の話を聞いて、自分にこの会社は合わないのではないかと感じた」などの声が多いようです。
そもそも、「条件が違う」「思っていた仕事と違う」というのでは、母集団形成時のアピールにずれがあった、誤解が生じる可能性があったとも考えられます。一方で、面接などの選考で不愉快な思いをしたということは、本来起こってはならないことです。選考途中や内定後に競合する他社と比較されて、辞退されるということも防がなければなりません。
これらの要因としては、選考も含めて、応募してきた学生とのコミュニケーションの問題が原因の一つだと考えられます。次回以降では、コミュニケーションを改善することで、選考中や内定後の学生との接点を増やし、辞退を防止する手法を紹介していきます。