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スマート農業とは?AI・ロボットが切り拓く新たな農業の可能性

スマート農業とは?
AI・ロボットが切り拓く新たな農業の可能性

2025 9/2
農業では今、人手不足や高齢化といった課題が深刻になっています。そうした中で、効率よく、長く続けられる農業が求められています。この課題を解決する方法として注目されているのが、スマート農業です。AI (人工知能) やロボット、IoT (Internet of Things:モノのインターネット) などの先端技術を使うことで、作業の自動化やデータを使った精密な管理ができるようになりました。これまでとは違う、新しい農業のかたちが少しずつ広がっていて、全国で農業の未来を見据えた取り組みが始まっています。

※ 記事制作時の情報です。

1.スマート農業とは

人手が足りない、担い手が高齢化しているなど、農業現場が抱える課題は年々深刻化しています。今や昔ながらのやり方だけでは、安定した生産経営維持が難しくなりつつあります。その中で注目を集めているのが、AIやロボットセンサーなどの技術活用したスマート農業です。農林水産省では、「ロボット技術情報通信技術 (ICT) を活用して、省力化精密化高品質生産実現する等を推進している新たな農業(注1)定義しています。

ドローンによる農業監視とデータ解析の様子。

データをもとにした管理や、栽培収穫自動化によって、省力化だけでなく生産精度向上も図れます。経験の少ない人でも成果を上げやすくなり、農業への新規参入ハードルも下がっています。すでに国内外のさまざまな地域でこうした取り組みが始まっていて、農業未来を支える実践が広がりつつあります。

1-1. スマート農業を支える3つの革新技術

スマート農業主役は、AI・IoT・ビッグデータの3つの技術です。まず注目したいのがAIの進化です。例えば、ドローンカメラで撮った作物画像をAIが自動解析します。それは病気害虫早期に見つけることができるうえ、過去栽培データ天候をもとに、種まきや収穫ベストタイミング予測してくれます。収穫量向上にも貢献しているといっても過言ではありません。それ以外話題を集めているのが、自動走行トラクターロボット収穫機です。これらの操作にもAIが活用されており、深刻人手不足カバーしています。

次にIoTです。これは、畑やハウス設置したセンサーで土の水分温度湿度を測り、リアルタイム情報を集めます。そのデータをもとに、必要な水や肥料適切タイミングで与えることができ、スマートフォンタブレットから遠隔操作できるため作業負担を軽くすることが可能です。

さらに、ビッグデータは、天気市場の動き、消費者の好みなど多くの情報をまとめて分析します。これによって、いつ何を作るのが効率的かを科学的判断できるようになり、地域に合った栽培方法開発長期的農業計画にも役立っています。

1-2. 導入事例から見る実践活用法

日本では、ドローン活用した農薬散布作物生育分析が進み、必要箇所にだけピンポイント農薬散布できるようになっています。北海道岩見沢市では、スマート農業実証プロジェクトとして、自動運転トラクター活用した耕起残渣処理作業効率化運転アシスト機能付コンバインによる収穫作業が行われました。遠隔監視のもとで作業を進めた結果従来と比べて作業時間大幅短縮することに成功農業人手不足高齢化といった課題に対して、先進技術現場の力となることを示す好例となっています。(注2)

スマート農業先進国・オランダでは、政府企業研究機関連携し、温室内環境制御や葉かきロボットなどの自動化技術開発しています。特にワーヘニンゲン大学研究センターでは、持続可能生産地域適応型施設設計研究し、3Dセンサーによるトマト種苗選別装置実用化省力化高品質生産両立する仕組みが整っています。(注3)

こうした事例は、人手不足気候変動といった課題対応するヒントとなり、持続可能農業への道を切り拓いています。

2.スマート農業のKDDIの具体的な取り組み事例

スマート農業では、ロボット技術やAI、IoT、ビッグデータといった最先端技術活用した多様な取り組みが進んでいます。
例えば、兵庫県豊岡市では田植えや収穫自動化京都府舞鶴市ではIoTセンサーによる環境モニタリング宮城県東松島市ではビッグデータを生かした高収益作物導入といった事例があり、効率化生産安定化実現しています。

2-1. KDDIの事例|IoTで無農薬栽培における水管理の負担軽減 (兵庫県豊岡市様)

豊岡市では、特別天然記念物コウノトリ生息できる安全環境づくりの一環として、無農薬栽培の「コウノトリ育む農法」を推進しています。この農法では、雑草対策害虫天敵であるカエルヤゴを増やすために、水田通常より長期間水を張る必要があり、水管理負担非常に大きいのが課題でした。特に大規模農家では、水田区画が小さく複数地区にまたがることが多いため、水管理作業労働時間約半分を占めていました。そこで豊岡市は、水位水温測定するセンサー水田設置し、パソコンだけでなくスマートフォンタブレットでも遠隔監視できるシステム導入しました。このシステム異常メールで知らせる機能も備え、迅速対応可能にしています。農家からは水管理負担軽減に対する期待が寄せられており、豊岡市今後スマート農業技術活用を進めていく考えです。

2-2. KDDIの事例|センサーとクラウドを活用した栽培環境データの可視化で安定供給に貢献 (京都府舞鶴市様)

舞鶴市では、特産品万願寺甘とう」の安定した高品質栽培目指し、スマート農業技術導入を進めています。万願寺甘とうは「京のブランド産品第一号認証されており、地元生産者約100戸が部会を組み、厳しい品質基準のもとで栽培を行っています。しかし、栽培環境技術の違いから収量に大きなばらつきが生じていました。そこで舞鶴市はKDDIと連携し、2020年からビニールハウス内にIoTセンサー設置温度湿度日照土壌温度水分量・pH、CO2などを10分ごとにリアルタイムクラウド送信し、データ可視化しています。これにより熟練者栽培ノウハウの見える化を進め、栽培管理のばらつきを解消し、安定した生産につなげることが期待されています。今後データ共有範囲拡大し、生産者全体技術向上目指しています。

2-3. 農業IoT、AI潅水施肥システムにより夏季収量が2.5倍に (宮城県東松島市様)

東松島市津波被災地開設された「幸満つる 野蒜農園」では、AI潅水施肥システム「ゼロアグリ」や、ネットワークカメラ映像を通して、作物状態遠隔地からも確認できる「屋外クラウド録画パッケージ」など、スマート農業技術活用した農業展開されています。水やりや施肥自動化により作業負担軽減され、収量夏季で2.5倍に向上。障がい者の雇用にも貢献しており、個々の特性に応じた作業環境整備されています。KDDIとKDDIエボルバ (注4) 、市が連携し、震災跡地利活用雇用課題解決同時に進めるこの取り組みは、やりがいのある職場づくりにもつながっています。IoTによるデータ可視化ノウハウ蓄積役立ち、効率だけでなく品質向上にも寄与。人と技術補完し合いながら、新たな農業のかたちが築かれています。

3.スマート農業のメリット

ロボットによる農作物収穫の様子。

スマート農業には、生産性向上品質安定コスト削減など、多くのメリットがあります。主な利点として、次の5つを紹介します。

3-1. 生産性の向上と省力化

農業はこれまで、時間体力もかかる大変仕事とされてきました。スマート農業は、そうした負担を大きく減らす新しい方法です。負担軽減一例として、GPS付きのロボットトラクターで人の手を動かさず夜間でも畑を正確に耕せること、これまで数時間かかっていた農薬散布ドローン時間短縮できるようになるなど、さまざまな効果があります。また、自動水管理システムを使えば、スマートフォンタブレットで田んぼの水位遠隔操作可能です。こうした技術を取り入れることで作業時間人手が少なくでき、農家負担は大きく軽減されます。その結果一人管理できる農地も広がり、人手不足解消にもつながっています。

3-2. 品質の向上と収量の安定化

農業作物品質収量など天候に大きく左右されるものです。また、これまでの経験や勘も重要要素でした。スマート農業を取り入れることで、作物が育つ環境が保たれるようになり、天候不順の年でも味や形のばらつきが少ない高品質農産物安定して収穫できるようになります。具体例として、畑に設置されたセンサーが、土壌水分栄養状態気温日照時間といった作物生育に欠かせない情報を24時間収集します。その膨大データをAIが分析し、水やりの最適タイミング肥料不足している場所などをピンポイント農家に知らせることができ、安定した栽培可能になります。

3-3. コスト削減と環境負荷の軽減

農業経営では、肥料農薬燃料などのコストが大きな負担になっています。しかも、これらを使いすぎると、土や川などの自然に悪い影響を与えることもあります。そこで注目されているのがスマート農業です。ICT技術を使って作物状態チェックし、必要場所に、必要な量だけ肥料農薬をまくことが可能になりました。畑全体一気にまいていた従来のやり方に比べて、ムダが少なく、コスト一段と抑えられるようになったことは大きな変化です。環境にやさしく、まさに次世代農業といえるものです。

3-4. 技術継承の円滑化

農業が抱える課題に、後継者不足熟練農家高齢化があります。長年経験で培われた技術と勘は、言葉で教えるのが難しく、失われつつありました。しかしスマート農業では、この貴重技術データとして見える化できるようにしました。いつ、どのような作業を行い、その結果どうなったかという栽培全記録データとして保存して分析することで、栽培手順工夫一目でわかる“栽培指針となる仕組み”を構築しました。新しく農業を始める人は、この仕組みを参考作業を進めることで、短期間で質の高い栽培技術習得でき、後世に残したい技術が、確実に受け継がれています。

3-5. 食の安全性と付加価値の向上

スーパー野菜を手に取ったとき、「これはどこで、どのように作られたのだろう」と気になることがあります。スマート農業は、種まきから収穫までの全工程栽培履歴がすべてデータとして記録管理されるため、消費者商品のQRコードを読み込むだけで、その作物の「履歴書」をスマートフォン確認して、見える化ができます。これは消費者の食への信頼を深めると同時に、生産者のこだわりを証明する方法にもなります。確かな情報農産物ブランド価値を高め、農家所得向上にも繋がります。

4.スマート農業のデメリットと課題

スマート農業課題として、初期費用の高さ、ITスキル必要性トラブル時の対応の難しさが挙げられます。それぞれを詳しく紹介します。

4-1. 初期導入コストが高額になる

スマート農業はとても便利ですが、導入には自動運転トラクタードローンなどを購入しないといけないために初期費用がかかるという大きなハードルがあります。さらに、システム利用料メンテナンス代といった、ランニングコストも考えなくてはなりません。そのため、すぐに元が取れるわけではないことを見越して、しっかりとした資金計画を立てることが大切です。費用負担を軽くするために、国からの補助金利用したり、地域農家機械共同で使ったりしてコスト削減をするのも有効です。

4-2. 技術的知識やスキルの習得が必要

スマート農業機器は、操作設定にある程度のIT知識必要とします。土づくりや作物の育て方には長けていても、タブレットクラウドシステム、AIツールなどの使い方に慣れていない農業者も多く、とくに高齢者にとっては導入心理的負担になることもあります。導入後学習サポート体制不十分だと、せっかくの機器活用されず、宝の持ち腐れになりかねません。そのため、使い方をわかりやすく学べる研修や、地域にITに強い支援者配置するなどの支援が求められています。

4-3. トラブル時の対応が複雑

スマート農業では、ネットワーク接続されたシステム多用するため、機器不具合通信障害が起こった場合自力での復旧が難しいケースもあります。例えば、遠隔操作による水管理ができなくなったり、ドローン動作不安定になったりと、農作業影響が出る可能性もあります。こうしたトラブル対応できる人材体制が整っていないと、作業の遅れや品質低下につながるおそれがあります。信頼できるサポート企業存在や、導入前リスクマネジメント重要課題です。

5.スマート農業の導入コストと支援制度

スマート農業を始めるには、高性能機器システム導入にかかる初期投資必要です。そこで活用したいのが、国や自治体提供する補助金支援制度です。導入コスト概要とあわせて、公的支援内容申請ポイント紹介します。

スマート農業のデジタル管理システムのイメージ。

5-1. 必要な初期投資の具体額

スマート農業を始めるには、目的に応じた設備機器を揃えなければいけません。そのための初期費用は、数十万円から数千万円幅広く、選ぶ技術によって大きく変わります。具体例として、農業用ドローンは100万円~300万円収穫用ロボットは1台500万円、GPS付きのロボットトラクターは1,000万円程度かかると言われています。農地設置する温湿度土壌センサーは1台当たり 数万円からですが、複数台を組み合わせると合計で100万円を超えるケースもあります。さらに、クラウドサービスの利用料通信機器アプリケーションライセンス料といったランニングコストも考えなければいけません。個人での負担が難しい場合には、地域農業法人協同組合連携して共同導入することで費用分担する方法もあります。導入前には、どの技術本当必要かを見極め、長期的視点投資効果を考えることが大切です。

5-2. 活用できる公的支援の内容

スマート農業を始めたいと考えている方には、導入コスト軽減できる公的支援制度がいくつも用意されています。

例えば、農林水産省実施する「スマート農業農業支援サービス事業導入総合サポート緊急対策事業 第4次公募」では、
農業支援サービス立上支援のうちスマート農業機械等導入支援」として、地域型サービス支援タイプにおいて、スマート農機導入にかかる費用の1/2 (上限1,500万円機械導入時上限3,000万円) が補助されます。ただし、第4次公募申請期間は2025年8月22日までとなっており、次の公募時期現在発表されていません。(注4)

この他にも、農林水産省では「農地利用効率化等支援交付金」の中に、スマート農業機器導入優先的支援する「スマート農業優先枠」が設けられています。

この制度では、ドローン農業用機械自動操舵システム土壌センサー搭載型可変施肥田植機生産管理最適化システムなど、データに基づいた効率的農業経営可能にする機器対象となります。これらを導入する際、一定要件を満たせば、購入費一部について補助が受けられます。
融資主体支援タイプ」と「条件不利地域支援タイプ」の2種類があり、一定要件を満たせば、前者事業費の10分の3以内 (上限300万円) 、後者整備内容ごとに2分の1 (農業用機械は3分の1) を乗じて得た額の合計額 (上限4,000万円) が支給されます。(注5) 補助対象条件には細かな規定があるため、詳細農林水産省のWebサイトでご確認ください。

申請相談は、農林水産省自治体、JA、地域農業普及センターなどで受け付けています。導入検討している方は、早めに情報収集を始めましょう。

6.まとめ

農業現場では、担い手不足高齢化深刻課題となっています。その打開策として登場した、作業自動化効率化実現するスマート農業が広がりを見せています。

AIやロボット、IoTを使えば、作業時間短縮しながら高品質農作物生産できるようになりました。ただし、導入には高額設備投資やIT活用知識必要となるため、国や自治体補助金研修などの支援策活用し、未来につながる農業に踏み出すことが求められています。

スマート農業を検討中の方はKDDIへ

KDDIは、AIやドローン、IoTなど先端技術各要所活用し、スマート農業事業積極的推進し、地域産業発展目指しています。日本農業が抱える農業課題のさらなる解決に向けてAI時代の新たなビジネスプラットフォーム「WAKONX」を通じた社会課題解決貢献地域産業発展目指します。

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