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※ 記事制作時の情報です。
マイグレーションとは、今使っているシステムやデータを新しい環境へ移す作業のことです。単に古い機器を交換するのではなく、これまでのデータや仕事の流れを活かしながら、クラウドや新しいサーバーに移す点が特徴です。例えば、社内で動かしていた基幹システムをクラウドに移したり、古いサーバーから最新のサーバーへアプリやデータを引き継いだりするケースがあります。
移行を正しく行えば、セキュリティが強化されるだけでなく、コスト削減や業務効率化、システムの性能向上も期待できます。
ただし、移行には注意点もあります。業務への影響をできるだけ抑える工夫や、データが正しく移るかどうかの確認、古い仕様への対応など、事前の準備が非常に大切です。成功させるには、対象範囲を明確にし、影響度をきちんと評価したうえで、少しずつ段階的に進めることが重要です。
さらに、小規模で試す「PoC (概念実証)」を行うことで、リスクを減らし、安心して本格移行を進められます。
リプレイスは、古くなった機器やソフトを同等の新製品・新バージョンに置き換えることです。マイグレーションがデータや業務ロジックを別の環境へ“移す”作業全体を指すのに対し、リプレイスは全体または一部を新しいものに交換するイメージです。マイグレーションのメリットは、検証済みの後継製品で短期間に更新でき、保守切れリスクの解消や性能・安定性の向上が見込め、運用変更も最小で済みます。
一方デメリットは、機能や使い勝手の抜本改善にはつながりにくく、将来の拡張性が限定される場合があること、製品費用や一時的な停止が発生すること、ベンダーに縛られやすいことです。
既存手順や教育の変更が少なく、現場の負担を抑えやすい反面、技術的負債が温存される可能性もあります。用途に応じて選びましょう。
コンバージョンは、データやファイルの形式を新しい仕様に合わせて変換する作業です。例えば旧システムの顧客情報を、新システムで読める形に作り替えることを指します。マイグレーションが計画・環境準備・移行・テストまで含む移行全体なのに対し、コンバージョンはその中のデータ変換に特化した工程です。
メリットは、既存データを生かして移行後も業務を継続しやすい点や、無駄な再入力を減らせる点。デメリットは、変換ルール設計や検証に手間がかかること、誤変換や欠損が起きると品質問題につながることです。
一方、コンバージョンだけでは業務フロー変更やアプリ改修、ユーザー教育などは含まれません。そのため全体移行はマイグレーションで計画し、コンバージョンは品質と整合性を担保する役割を担います。
モダナイゼーションとは、ただシステムを新しい環境に移すだけでなく、設計や仕組みそのものを最新のテクノロジーに置き換えて作り直すことを意味します。例えば、クラウドサービスを活用できるようにしたり、機能ごとに独立した構成 (マイクロサービス化) に切り替えたり、古いプログラム言語を新しいものに置き換えたりします。
マイグレーションが「そのまま移す」作業なら、モダナイゼーションは「より使いやすく、現代の技術に合わせて作り変える」取り組みです。メリットは、拡張性が増し、運用や保守がしやすくなり、将来的なコストの削減やビジネスの変化にも柔軟に対応できる点です。
一方で、初期費用や作業負担が大きくなり、計画や専門知識も必要になるなど、慎重な判断が求められます。
代表的な種類は次の4つです。用途や停止許容時間、技術的難易度に応じて適した方式を選びます。
それぞれの種類の特徴を紹介します。
ライブマイグレーションとは、システムを一切止めずにシステムの基盤を新しくする技術です。この技術の最大のメリットは、サービスを止めずに継続できる点です。一時的な停止が許されない銀行のオンラインシステムや巨大なインターネット通販サイトなどは、この方法でメンテナンスやアップデートを行っています。利用者はいつもどおりサービスを使えるため、ビジネスへの影響はゼロです。
しかし、一方で膨大な手間とコストがかかることがデメリットといえます。動いているシステムから新しいシステムへ、データを完璧に同期させ続けるには、非常に高度な技術と綿密な計画が不可欠です。少しでも設計を誤れば大事故につながりかねないため、専門家による入念なテストが繰り返されます。
レガシーマイグレーションは、長年使われてきた古いシステムを新しい環境に移行する作業です。何年もかけて現場のニーズに合わせて改修されたシステムは、当初の設計書では把握しきれない複雑な構造になっていることが多く、移行前の詳細な調査が欠かせません。
メリットとしては、運用コストの大幅削減が挙げられます。老朽化したハードウェアの保守費用や、サポートが終了したソフトウェアによるウィルス感染やシステムの不具合などのリスクから解放されます。また、新しいプラットフォームでは処理速度の向上やセキュリティ強化も期待できます。
一方、デメリットは移行期間の長さとコストの高さです。既存システムの解析や関係者へのヒアリング、互換性の検証など、準備段階で多くの時間を要します。さらに、移行中のシステム停止やデータ移行時のトラブルリスクも考慮する必要があります。
データマイグレーションは、顧客情報や取引履歴など大切なデータを、別のデータベースや新しいフォーマットに引越しさせる作業を指します。特徴は、データだけに特化して移行する点にあり、データの正確さや整合性を保ちながら、欠損やフォーマットの違い、文字コードの変換などに細心の注意を払う必要があります。
メリットは、新しいシステムで引き続きデータを利用できることや、環境が変わっても情報を安全に引き継げる点です。
一方で、データの移行ミスや不整合があると業務に支障が出るリスクもあり、事前のツール設計や移行後の動作テスト、差分比較などの厳密な検証が欠かせません。計画的に進めることで安全なデータ移行が実現します。
サーバーマイグレーションは、今まで使っていたサーバー上のシステムやデータを、新しいサーバーやクラウドなど別の環境に移し替える作業です。例えば、古くなったサーバーを新しいものに入れ替えたり、社内のサーバーからクラウドサービスへ切り替えたりするときに行われます。サーバーマイグレーションの大きなメリットは、システムの動作が速くなったり、障害に強くなったり、将来の利用拡大にも柔軟に対応できるようになる点です。
しかし一方で、作業を行う際にはサービスを一時的に止める必要があったり、ネットワークの設定を見直したりデータの保存場所を移し替えたりと、ライセンスの管理など細かな調整が必要になります。スムーズに移行するためには、事前にどのような影響があるか調べておくことや、段階的にテストを重ねることが大切です。
マイグレーションには、次の4つの手法が使われます。
それぞれに用途や時間・コスト・改修度合いに応じて手法を選ぶ必要があります。
リホストとは、今使っているシステムをほぼそのまま新しいサーバーやクラウドに移す方法です。最大のメリットは、システムの大きな改修をせず、短期間かつ低コストで移行できる点にあります。特に、今までのシステムをそのまま動かしたい場合や、互換性が高い環境同士での移行に向いています。
ただし、プログラムや仕組み自体は古いままなので、抜本的な機能強化や運用コストの大幅な削減は難しいのがデメリットです。まずリスクの少ないシステムから段階的に試すことが一般的です。
リビルドの最大のメリットは、間取りや設備を根本から見直し、最新の技術を取り入れた快適で頑丈なシステムを構築できる点です。将来のメンテナンスやシステムの拡張・改修もしやすくなります。
しかしその反面、ゼロから作り直すため、多額の費用と長い時間が必要になるのが大きなデメリットです。そのため、単に古いからという理由だけでなく、増改築を繰り返して構造が複雑になりすぎた場合など、抜本的な刷新が必要なときに選ばれる、一大決心とも言える手法です。
リファクタリングとは、今あるプログラムや設計を大きく作り変えることなく、徐々に分かりやすく・効率よく改善していく方法です。メリットは、動くシステムを止めずに保守性や性能を高めたり、不具合を減らしたりできる点です。また、全面的な再構築に比べてリスクが抑えられるのも利点です。
しかし、部分的な修正でも、変更に伴うテストや作業時間は決して少なくありません。計画的な進め方や自動テストなどの工夫が不可欠です。
クラウドへ移行する大きなメリットは、柔軟性の高さです。必要なときに必要な分だけコンピューターの能力を借りられるため、急なアクセス増にも対応しやすく、コストの無駄を減らせます。
一方でデメリットは、コスト構造の見直しや、セキュリティ・ガバナンス面の対策をきちんと整える必要があり、ネットワーク設計やモニタリング体制も新たに設計しなければなりません。最適な運用や移行の成否は、事前の十分な準備と設計によって左右されるでしょう。
マイグレーションは次のように段階的に計画・実行することが重要です。
それぞれの段階でどのようなことを行う必要があるのかを紹介します。
マイグレーションを進めるうえで大切なのは、まず移行の目的をはっきりさせることです。例えば、コストの見直しやセキュリティ強化、クラウド活用など、目的によって選ぶべき方法や優先順位が変わります。事前に経営陣や担当部門と移行後に何を目指すかを明確に決め、共通のゴールを設定しておくことで次の手順がスムーズになります。
「情報を整理する」とは、現在使っているシステムのデータやアプリケーション、ミドルウェア、関連する構成や依存関係を一つひとつ洗い出す作業です。特に、依存関係や構成の情報が曖昧なままだと、移行後に想定外のトラブルにつながることもあります。
そのため、漏れのない詳細な棚卸しとリスク評価を行い、後の工程での問題を未然に防ぐことが大切です。
次にPoC (Proof of Concept、概念実証) として、小規模な範囲で試験的に移行を行います。本格移行前にリスクや課題を確認するための工程です。この段階で実際に動かしてみることで、技術的な問題や運用上の課題を早い段階で発見できます。PoCの結果をもとに本番移行の計画や手順を見直すことで、移行に伴う失敗やトラブルのリスクを大幅に減らすことができます。
PoCの結果を踏まえて、いつ・誰が・どのように移行を実施するか具体的に決めます。移行スケジュールやシステム停止時間やデータ移行にかかる時間を細かく設定し、古いシステムから新しいシステムへの切替手順を段階的に整理します。
さらに、移行後の動作を確認する検証項目を洗い出し、各作業の責任者や緊急時の連絡体制も明確にします。システムの監視方法やログの収集方法についても事前に決めておくことで、移行作業がスムーズになります。
最後はシステムが安定して稼働しているかを確認し、必要に応じて改善する工程が必要です。まず、新しい操作方法や手順の教育を実施し、運用マニュアルやトラブルシューティングガイドを整備して日常業務をサポートします。
また、運用開始後は定期的にシステム状況をレビューし、性能や使い勝手の問題がないかチェックします。収集したフィードバックを反映させて改善することで、より使いやすく効率的なシステムへと成長させることが可能です。
マイグレーションとは、今使っているシステムやデータを新しい環境に移し替える重要な作業です。マイグレーションを行うことで、セキュリティがより強固になり、運用コストの削減や業務の効率化といったメリットが期待できます。
移行の方法は、何を目的とするか、どのくらいの予算や期間があるかによって、最適な手法を選択することが大切です。移行完了後は、スタッフへの教育やマニュアルの整備、定期的な見直しを継続することで、新しいシステムを安定して効率的に活用し続けることができるのです。
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