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※ 記事制作時の情報です。
スマートシティとは、AIやIoTなどのデジタル技術を活用して、私たちの生活を支える社会インフラやサービスを高度化しながら、持続的な社会を作り上げていく新たな都市運営のモデルです。
スマートシティの推進においては、以下に挙げるようなさまざまな分野の課題を解決することで、すべての市民が安心して暮らせる快適な未来社会の実現を目指します。
1-1. スマートシティの定義
国土交通省では、スマートシティを以下のように定義しています。
「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント (計画、整備、管理・運営など) が行われ、
全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」(注1)
また、KDDIが公表しているスマートシティの定義は以下のとおりです。
「情報通信技術 (ICT) を活用して都市のさまざまな課題を解決し、住民の生活の質を向上させる都市または地域を指します。交通、エネルギー、環境、防災、保健、教育などの分野におけるデータを統合・分析し、効率的な管理と運営を目指します」(注2)
これらの定義からも、市民生活の利便性や快適性の向上を目指すスマートシティの取り組みにおいては、デジタル技術に大きな期待がかけられていることが分かります。
1-2. スマートシティとスーパーシティの違い
スマートシティが推進されている代表的な理由として、主に以下の3点が挙げられます。
2-1. 少子高齢化などの社会課題の解決
総務省の統計によると、日本国内の生産年齢人口 (15~64歳) は1995年をピークに減少の一途をたどっています。スマートシティの実現において重要な役割を担うデジタル技術には、少子高齢化社会における人手不足などを解消する手段として大きな期待がかけられています。
例えば、スマートシティ内に自動運転車やドローンを導入すれば、商品の運搬などの業務を自動化できます。こうしたデジタル技術を、製造や物流、サービスといったさまざまな業種で活用していくことが見込まれています。
2-2. 地域経済の発展への寄与
スマートシティは、地域経済の発展に寄与する大きな可能性を秘めています。AIやIoTなど最先端のデジタル技術を取り入れることにより、交通網をはじめとする都市機能の効率化が期待できます。加えて、必要な人員を抑えても業務が円滑に進むようになり、結果的に労働生産性の向上と経済活動の活性化が望めます。
一方、経済の発展においては地球環境への配慮が欠かせません。スマートシティではデジタル技術によってエネルギー消費を効率化し、環境負荷につながるCO₂も削減することができます。
2-3. 変化する社会環境への適応
スマートシティの実現によって、社会環境の変化にも臨機応変に対応できるようになります。例えば、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミックで、私たちは仕事や学校のほか、日常生活のあらゆる場面での行動制限を余儀なくされました。
こうした状況でも、デジタル技術を活用した感染経路の追跡や、感染のリスクを低減する非接触決済の導入などにより、社会のレジリエンスを強化できます。また、インターネット環境が整備されたスマートシティでは、オフィス勤務からリモートワークへの切替も円滑に行うことが可能です。
これらは都市部への過度な人口集中を抑制し、郊外や地方への人口の分散化にも導きます。(注4)
ここからはスマートシティが実現する未来の社会について、以下の4つの項目で解説します。
3-1. 住民の生活の質が向上
スマートシティの実現によって、住民の生活の質は向上します。例えば、行政手続きのオンライン化により、市役所などの窓口へ出向くことなく、自宅で各種手続きが行えるようになります。これは、平日に窓口へ行くのが難しい会社員にとっては、大きなメリットです。また、行政側の業務効率も向上します。手続きに関する問い合わせ対応にはチャットボットを導入すれば、職員の負荷を大幅に削減できます。
チャットボットなら、住民は時間の制約を受けずに問い合わせができるため、サービスの利便性も高まります。医療分野でも、遠隔医療の普及によって、移動が難しい高齢者が在宅で医療サービスを受けられるようになります。
このほか、自動運転車や電動スクーターなど移動手段が多様化することにより、自家用車を保有していない住民でも交通の利便性が向上します。
3-2. 都市機能の管理の効率化
都市機能の管理が効率化する点も、スマートシティがもたらすメリットです。防災面ではセンサーを使った常時モニタリングにより、地震や洪水といった自然災害のリスクを早期に察知し、迅速な避難指示を行えるようになります。また、防犯カメラやAI解析技術の導入によって、スマートシティ内で起こる不審な行動を検知して犯罪を未然に防ぐ効果も期待できます。
環境面では再生可能エネルギーの活用やスマートメーターの導入を通じてエネルギーの供給と消費を最適化し、電力需要のピーク時でも柔軟かつ効率的に需給管理が可能です。加えて、センサーを用いて大気汚染や温度、湿度をモニタリングして、環境保護に向けた対策につなげていくこともできます。
3-3. データを基にした政策の立案
スマートシティのデジタルプラットフォームに蓄積される膨大なデータは、都市政策の立案や運営に活かすことができます。例えば、交通事故や犯罪の発生率などに関するデータの定量的な分析によって、時期別やエリア別の傾向を把握し、対策に役立てられます。
また、行政に対する住民の要望や意見をオンラインアンケートで収集・分析して、具体的な政策に反映することも可能です。都市運営のPDCAサイクルをこうして確立すれば、住民にとって利便性と快適性に優れた持続的な社会を築けるでしょう。
3-4. 多様な分野での課題解決の促進
スマートシティの実現は、エネルギー、医療、防犯といった単一の分野における成果だけでなく、多様な分野を横断した社会課題の解決にもつながります。例えば、スマートシティの全域にインターネットやセンサーなどのインフラを張り巡らせることで、それらを活用した新たなビジネスやサービスが生まれる可能性があります。
これにより新たな雇用が創出され、失業率や犯罪発生率の減少につながる可能性もあるでしょう。また、スマートシティの高度なインフラが生み出す価値は大企業やスタートアップ企業などの誘致にもつながり、地域経済の活性化が見込まれます。
このように、さまざまな分野を横断した社会基盤の整備、データの活用によって、「ヒト」「モノ」「情報」の有機的な連携が実現し、さらなる都市の発展が促進されます。
スマートシティの実現を支える主な技術としては、以下の3つが挙げられます。
4-1. AI
スマートシティの実現に不可欠な技術として、真っ先に挙げられるのがAI (Artificial Intelligence:人工知能) です。
AIは1956年に米国の計算機科学研究者であるジョン・マッカーシー氏が提唱した概念で、人間の思考と同じような情報処理プロセスを持つ技術とされています。(注5)
AIは現在、スマートシティにおいて以下のような都市サービスの提供に活用されています。
AIによる分析は蓄積されるデータ量と比例して精度が高まり、住民サービスのさらなる利便性の向上や行政の業務負担の軽減などに役立ちます。
4-2. IoT
スマートシティの実現において、AIと同様に大きな期待がかけられている技術がIoT (Internet of Things) です。
「モノのインターネット」とも呼ばれるIoTについて、総務省は次のように説明しています。
「自動車、家電、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出す」(注6)
例えば、スマートシティではセンサーを使って自動車の走行状況や位置情報を取得することで、遠隔制御が可能です。加えて、災害リスクのあるエリアにセンサーを設置すれば、危険な場所に人を立ち入らせずに地滑りや洪水などの予兆をすばやく把握できます。
4-3. データ連携基盤
スマートシティの運営においては、データ連携基盤も重要な役割を果たします。データ連携基盤は、IoTなどで収集される膨大なデータを効果的に連携するためのプラットフォームです。内閣府はそのメリットとして以下を挙げています。
サービスの連携 | 住民に対する各種サービスをデータで連携させることで、ワンストップのサービスを実現 |
---|---|
都市間の連携 | ほかの都市のデータとの連携・分析によって、地域独自のビジネスを創出 |
分野間の連携 | 分野の垣根を越えたデータ連携により、ハザードマップや交通データ、衛星画像、気象データなどを組み合わせて防災対策などを強化 |
また、データ連携基盤の活用によって、以下のような分野のサービスの高度化が期待できます。(注7)
日本のスマートシティ構想は、内閣府が掲げる「Society 5.0」の実現に向けた取り組みの一環として推進されています。「Society 5.0」とは、以下に挙げるSociety 1.0~4.0に続く日本の未来社会の姿として提唱されているものです。
具体的には、内閣府は「Society 5.0」を次のように定義しています。
スマートシティの取り組みは、日本と海外の間で特徴の違いが見られます。
6-1. 日本のスマートシティの取り組み
日本では内閣府が提唱する「Society 5.0」の取り組みの一環として、政府が主導する形でスマートシティの取り組みを推進しています。いわば国家戦略の位置づけであり、都市運営の効率化や生活の利便性向上を主な目的としています。
6-2. 欧州のスマートシティの取り組み
欧州では、環境への配慮を重視する傾向が強いことが大きな特徴です。例えば、英国ではスマートシティを「インテリジェントなテクノロジーを活用して、廃棄物の削減、エネルギー利用の最適化、渋滞の緩和など、都市環境における生活の質を向上させる」ものと定義しています。
また、スウェーデンでは政府がスマートシティに関する環境技術ソリューションの輸出を目的としたプラットフォーム「Smart City Sweden」を設立し、先進技術や事例の紹介を行っています。
6-3. 米国のスマートシティの取り組み
米国ではスマートシティの取り組みについて、「都市と市民の安全性、モビリティ、持続可能性、経済的活力、および気候変動に対処する」というビジョンを掲げています。
また、米国でも最大のスマートシティ業界団体である「The Smart Cities Council」は、スマートシティを「ICTの活用によって、居住性、作業性、および持続可能性を向上させるもの」と定義しています。(注10)
ここからは、日本国内におけるスマートシティの取り組み事例として、以下の3つを紹介していきます。
東京都港区
東京都港区で進められているスマートシティの取り組みとして「TAKANAWA GATEWAY CITY」(2025年3月開業予定) があります。「TAKANAWA GATEWAY CITY」は、最先端のテクノロジーを駆使して100年先の心豊かな暮らしを実現するために、JR東日本様が中心となって進めているプロジェクトです。
このプロジェクトにおいて、KDDIは共創パートナーとして「都市OS」の構築や次世代ビデオ会議サービス「空間自在ワークプレイス」など、新たなサービスの開発に携わっています。都市OSでは、都市をハードウェアとして捉え、共通の基盤 (OS) に人流データや交通データなどを蓄積し、それらを交通の混雑緩和や防犯対策に活用できます。
また、次世代ビデオ会議サービス「空間自在ワークプレイス」では、等身大の映像とステレオ音響設備によって、離れた空間同士でもまるで隣にいるかのような臨場感を体験できます。これにより、ビジネスシーンの会議においても、これまで以上に活発なコミュニケーションが促されると同時に、教育・エンターテインメントなど幅広い分野への応用も期待できます。
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茨城県つくば市
2019年に国土交通省の「スマートシティモデル事業」に選定された茨城県つくば市は、「つくばスマートシティ協議会」を設立して、つくば市や筑波大学、KDDIなど47機関の協業によって事業を推進しています。
つくば市は、周辺の市街地が分散し、自動車への依存度が高く、移動が困難な交通弱者の支援を課題としています。そこで、2021年2月下旬から自動運転車とパーソナルモビリティ (電動車いす) を連携させた実証実験を開始しました。この取り組みでは、例えば自宅から最終目的地である病院の入口や受付までのラストワンマイル移動を支援し、一貫したサービスの提供を目指しています。
実証実験で課題となった市内の交通実態の把握では、KDDIが提供する位置情報データが活用されています。数百万人規模のユーザーから集められたデータを利用することにより、大規模なアンケート調査を行わずに地域住民の移動実態を把握できた事例です。
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静岡県浜松市
静岡県浜松市は、2021年3月に「デジタル・スマートシティ構想」を掲げ、デジタルを活用した新たな街づくりを推進しています。この取り組みの背景には、人口減少や少子高齢化といった深刻化する地域の社会課題がありました。
そこで浜松市は「市民QOL (生活の質) の向上」と「都市の最適化」を目標に、さまざまな取り組みを推進しています。例えば、移動の問題の解決策として、地域のボランティアの住民が同じ地域の高齢者などを自家用車で病院やスーパーに送迎する「共助型交通」の導入を検討しています。
また、厚生労働省の研究班がまとめた「大都市別の健康寿命調査」で男女ともに3期連続で日本一 (2010年、2013年、2016年 (注11)) となった浜松市は、新たな都市像として「予防・健幸都市」を掲げ、官民連携プロジェクト「浜松ウエルネスプロジェクト」を推進しています。この取り組みでは企業と大学の協力のもと、認知症の早期発見を目指して、日常の運転と認知機能の関係性を調査する実証事業を2021年に開始しました。
実証事業で得られたデータは同市のプラットフォームに蓄積され、市の健康施策や民間企業各社のビジネスにも活用されています。
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続いて、海外のスマートシティ事例として、北米、欧州、アジアにおける取り組みを3つ紹介します。
北米
■ テキサス州オースティン (米国)
オースティン (米国) は、多発する交通事故、道路混雑、排気ガスなどの都市課題の解決に向けて「Smart Mobility Pilot Program」を推進しています。このプロジェクトでは、センサーによる交通情報の収集やデータ分析などの技術を用いて課題の解決を目指しています。(注12)
■ コロラド州デンバー
コロラド州のデンバーは「Peña Station NEXT」プロジェクトを立ち上げて、デンバー国際空港の近接地域における鉄道駅を中心とした公共交通指向型のスマートシティの開発を進めています。ここでは、スマートLED街灯や電気自動車の充電ステーションの整備、自動運転による輸送などの取り組みが行われています。(注13)
欧州
■ バルセロナ (スペイン)
スペインのバルセロナは、2016年に定めた「Barcelona Digital City Plan」に基づいて、市民生活の向上などを目的としてデジタル技術を活用したスマートシティの取り組みを進めています。同市では、人口密度が高く緑地面積が少ないことが課題として指摘されており、この課題を解決するために交通のあり方を変えていくことを目指しています。
具体的には、以下の3つの施策によってスマートシティ構想を推進しています。
アジア
■ 杭州市 (中国)
浙江省の省都である杭州市は、中国最大のeコマース企業であるアリババと協力して「ET City Brain (都市大脳)」プロジェクトを推進しています。クラウドとAIを組み合わせた都市管理システムである「ET City Brain」によって、さまざまな都市データをリアルタイムに活用して、都市機能の効率化や公共リソースの全体最適化を目指しています。
例えば、ビデオ映像で交通事故や渋滞の状況を迅速に把握し、リアルタイムで信号を制御すれば、渋滞の緩和や緊急車両の優先走行が可能になります。 (注15)
スマートシティの実現に向けては、現状において次のような課題があります。
9-1. プライバシーへの配慮とセキュリティ対策
スマートシティの実現に向けて収集するデータには、住民の行動履歴や通信履歴などの情報が含まれるため、住民のプライバシーに配慮した十分なセキュリティ対策が求められます。
例えば、ファイアウォールなどを導入してサイバー攻撃への対策を行ったり、サーバーのアクセス監視を行って内部不正を抑制したりといった対策が必要です。
また、ネットワーク障害などを想定して、迅速な復旧のための管理体制を整備しておくことも重要になります。
9-2. 住民の理解と協力
スマートシティの実現には、住民の理解と協力が不可欠です。そのためには住民の意見や要望などを幅広く集約したうえで、合意の形成を図らなければなりません。
例えば、個人の行動履歴などを収集する場合は、個人を特定するためではない点や、データ分析から得られるメリットを十分に説明し、住民の理解を得る必要があります。
また、最先端の技術に馴染みのない高齢者などは「新しい技術は怖い」といった印象を持つこともあるため、技術の細かい説明よりもスマートシティが実現する未来像を具体的に示すほうが効果的でしょう。
9-3. 導入や維持のコスト
スマートシティを実現するには、IoTなどの新技術の導入や公共交通のインフラなどの整備や、その導入・維持のための多額のコストが必要となります。
地方自治体だけですべての予算をまかなうことは現実的に難しいため、官公庁や企業、教育機関などと協力しながら、予算の確保や投資回収計画を検討することが重要です。
また、費用対効果を見極める際は個々の施策だけで考えるのではなく、複数の施策を総合的に考慮し、将来的な効果を算出する視点が重要となります。
スマートシティは、デジタル技術やデータを活用して生活の質の向上や都市機能の高度化、社会課題の解決を図っていく都市運営の新たなモデルです。少子高齢化などの社会課題がますます深刻化する中、スマートシティは私たちの未来に新たな可能性をもたらしてくれます。
AI・IoTなどのデジタル技術の革新により、公共交通の最適化や医療サービスの向上、都市管理の効率化など、生活のさまざまな場面で新たな価値創造が期待できます。
また、スマートシティの実現に向けて、住民、行政、企業、教育機関の協力のもと、実効性のある計画づくりが不可欠です。適切なセキュリティ対策とコスト管理を通じて、持続可能な未来の都市づくりを着実に進めていくことが求められています。
スマートシティの実現に向けて、KDDIは新たな未来の共創を支援するビジネスプラットフォーム「WAKONX (ワコンクロス)」を提供しています。「WAKONX (ワコンクロス)」における「WAKON」とは、日本の和の精神と強みを大事にしながら海外の優れた部分を取り入れ融合する「和魂洋才」から生まれたものであり、以下の3つの機能で日本のデジタル化を加速します。
KDDIは国内外で独自に築いてきた通信ネットワークや膨大なデータを活用することにより、モビリティや物流などさまざまな業界のパートナー企業との共創を通じて、スマートシティの取り組みを加速していきます。