※ 記事制作時の情報です。
Power Automateは、Microsoftが提供するクラウドベースの自動化ツールです。以前は「Microsoft Flow」という名称で提供されていました。日々の業務で繰り返し発生する定型的な処理を自動化し、作業時間の削減や生産性を高められます。
例えば、メール添付ファイルの自動保存やアプリ間のデータ連携など、これまで手作業で行っていた作業を効率よく処理できます。複雑なプログラミング知識がなくても直感的な操作で設定できる点が大きな特徴です。Microsoft 365やTeamsなどのMicrosoft製品とシームレスに連携できることも強みで、幅広い業務に応用可能です。
Power Automateを活用すると、以下のような自動化が行えます。
Power Automateの代表的な機能が、ワークフローの自動化です。これまで紙やメールで行っていた手続き・申請業務をデジタル化し、プロセス全体を効率化できます。例えば、休暇申請や稟議書が提出された際、自動で承認者に通知を送り、承認されれば人事や関連部署へ情報を連携させるといった一連の流れを構築可能です。
これにより、手作業による入力ミスや確認漏れといった人的ミスを削減し、承認までの待ち時間も大幅に短縮されます。従業員はこうした利益に直結しないノンコア業務から解放され、売上向上につながるコア業務により多くの時間を充てられるようになります。
タスクの自動実行はPower Automateの強みです。スケジュールトリガーを使えば、決まった時刻や間隔で処理を自動起動できます。例えば、毎週月曜日に最新の売上データをシステムから取得してレポートを作成する、毎日定時に顧客情報をバックアップするなどのタスクを指定した日時に自動実行できます。
また、重要な期限が近づいた際にSlackで関係者に自動通知を送る仕組みも構築できます。タイムゾーンやタイムスタンプの扱いに留意すれば、正確性とスピードを両立できます。失敗時の再試行や実行ログの蓄積も自動で行えます。
Power Automateは、異なるアプリ間のデータ連携を得意とします。500種以上のコネクタに対応し、Microsoft 365やDynamics 365に加え、GitHubやBox、Xなどとも接続可能です。例えば、ECサイトの注文データを即時登録し、在庫を更新、SharePointの台帳とTeamsへ同報通知するフローを構築できます。
また、発注承認が完了したら、Plannerにタスクを起票し、Outlook予定とカレンダーを自動更新するなどの連携も可能です。分断を解消し、入力重複や転記ミスを抑え、処理速度を高めます。
Power Automateを導入すると、次のようなメリットがあります。
これらの利点により、幅広い部門で活用できる基盤が整います。
人が手作業で処理を行うと、どんなに注意しても入力漏れや転記ミスといった人的エラーが発生しやすいものです。Power Automateを使えば、あらかじめ定義したルールに従って処理が進むため、人為的なミスの発生を大幅に減らすことができます。
例えば、請求データを複数システムに登録する作業を自動化すれば、誤入力の心配がほぼなくなります。正確性が高まることで、顧客との信頼関係の維持にもつながり、業務全体の安定性を高められる点が大きな魅力です。
Power Automateは、手作業で行っていた定型業務を自動化し、作業時間を大幅に短縮します。例えば、Excelリストの情報を基幹システムへ一件ずつ転記するようなデータ入力作業を自動化できます。これまで数時間かかっていた作業が、自動実行によりわずか数分で完了します。これにより担当者は単純作業から解放され、入力ミスも防げます。短縮された時間は、データ分析や改善提案といった付加価値の高い業務にあてることができ、組織全体の生産性アップに貢献します。
従来、業務システムの自動化には専門的なプログラミングスキルが必要でした。しかしPower Automateは、ドラッグ&ドロップ操作を中心とした直感的な画面設計により、非エンジニアでも簡単にワークフローを作成できます。例えば、人事部門の担当者が自分で採用プロセスの承認フローを設計し、必要に応じて修正することも可能です。これにより、システム部門に依頼する時間やコストを削減でき、現場の要望に柔軟かつ迅速に対応できるようになります。結果として、業務改善のスピードが加速し、組織全体の俊敏性を高められます。
Power Automateは便利なツールですが、万能ではありません。まず、数十万件規模のデータ集計や複雑な数式計算、機械学習を伴う分析には不向きで、データの収集や分析などに特化したPower BIなど専門的なシステムとの併用が効果的です。加えて、社内システムや特殊なサービスと連携させたい場合、専門知識が必要になるケースも少なくありません。
また、契約書の最終チェックやイレギュラーな問い合わせ対応のように、人の判断や現場での微調整が求められるタスクについては、完全な自動化は困難です。このため、Power Automateは定型的な業務の効率化に特化して活用し、人による判断が必要な業務とは適切に切り分けて使うことが重要です。
大手損害保険会社では、全社員が主体的に業務効率化に取り組める「市民開発型DX」を推進するため、Power Automate (クラウドフロー) とPower Automate for desktopを全社展開しています。現場の社員が自分の業務に合わせてノーコードで自動化フローを作成し、有給申請やミーティング調整、各種フォームの運用など日常業務を効率化しています。コストを抑えつつ分かりやすい操作性も評価され、導入後わずか数週間で300人以上が市民開発を始めました。社内コミュニティや教育プログラムも活用し、社員一人ひとりの業務改善と生産性向上に大きく貢献しています。
教育機関においてもPower Automateを活用した業務自動化が広がっており、財務処理の電子化や紙運用の削減、業務効率化に大きな成果を上げています。ある大学ではAcrobat Sign・Forms・SharePointと連携し、銀行口座振込依頼書の受付~財務システム登録までを電子化しています。転記や紙運用を廃し、処理時間を最短1週間→20~30分、工数を5~6割削減しました。2022年度は220業務で活用し、現在は400超に拡大しています。PADやAVD連携でスケール運用も実現しています。Teamsのコミュニティとトレーニングで現場開発を支援し、電子契約の自動保管などハイパーオートメーションも段階的に推進しています。
国内の総合化学メーカーでは、全社的なDX推進の一環としてPower Automateを積極的に活用しています。工場内の「ヒヤリ・ハット」事例の登録・集約・共有をPower AutomateとTeamsで自動化し、安全情報の即時共有と業務効率の大幅な向上を実現しました。従業員自らがPower Automateを使って現場業務の自動化を進め、年間1,400時間以上の削減効果が生まれています。これにより、全従業員がデジタル活用人財となる「デジタルノーマル期」に向けて、現場主導の業務改善とデジタルスキルの底上げが進んでいます。
日用品や生活消耗品を扱うあるメーカーでは、DX推進の中核としてPower Automateを活用し、社内の業務効率化とイノベーションを実現しています。社員自らがPower Automateを使い、健康状態や出社回数の報告、業務プロセスの自動化、情報共有アプリの開発など、現場発信の業務改善を積極的に行っています。特に、アプリ操作やRPAの作成は専門知識がなくても実践できるため、多くの社員が市民開発者として活躍し始めています。この取り組みにより、業務の大幅な時間削減やデータの一元管理、現場のモチベーション向上に繋がっています。
大手飲料メーカーの製造工場では、品質管理や業務効率化のためにPower Automateを積極的に活用しています。工場独自の品質管理チェックシートや健康管理アプリ、暑さ指数管理アプリの開発にPower AppsとPower Automateを組み合わせることで、紙ベースだった手作業をデジタル化し、情報の自動通知や承認業務の効率化を実現しました。特に暑さ指数管理アプリでは、IoT機器によるデータ取得をPower Automateで自動連携し、Teamsに熱中症警戒アラートをリアルタイムで配信しています。これにより年間約700時間の業務削減効果が得られ、人材育成や他拠点への展開も進んでいます。
Power Automateには、用途に応じて複数の料金プランが設定されています。主なものとして、「ユーザー単位プラン」と「フロー単位プラン」があります。ユーザー単位プランは、1人のユーザーが自身で複数のフローを自由に作成し、幅広い自動化を個別に行いたい場合に最適です。
一方、フロー単位プランは、特定の業務プロセスを組織全体で共有して運用したいケースに適しています。なお、いずれのプランにもAPIリクエスト数の上限が設けられており、プランごとにその制限値が異なる点に注意が必要です。導入時には、業務内容や利用頻度を踏まえて最適なプランを検討することが大切です。
また、料金体系は変更されることもあるため、常に最新の公式情報を確認しながら選定してください。
Power Automateを利用するには、まずアプリをインストールします。PCやスマートフォンのアプリストアから簡単に入手可能です。Office 365のアカウントを持っていれば、追加設定なしで利用を始められます。導入の第一歩として、自分の環境に合わせてアプリを準備しましょう。
初めて利用する方は、サンプルフローを開いて仕組みを理解するのがおすすめです。Microsoftが提供するテンプレートには、メールの自動保存や通知送信など実用的なものが揃っています。実際に動かすことで、どのように自動化が進むのかを体験できます。
慣れてきたら、自分の業務に合わせたオリジナルフローを作成しましょう。直感的な画面操作で条件やアクションを設定でき、専門的な知識がなくても実現可能です。例えば、特定のメールを受信したら自動的にファイルを保存する、といったフローを作成できます。
作成したフローは、条件が満たされたタイミングで自動的に実行されます。実行状況は管理画面で確認でき、問題があれば修正も簡単に行えます。実際にフローを動かすことで、業務が自動化されていることを実感できます。
Power Automateは、業務の自動化と効率化を実現する強力なクラウドツールです。直感的な操作性で非エンジニアでも活用でき、ミス削減や作業時間の短縮、業務プロセスの最適化に大きく貢献します。多種多様なシステムとの連携や豊富な事例を参考に、さまざまな業界・部門で導入が進んでいます。
しかし、すべてを自動化できるわけではないという限界もあります。そのため、導入にあたっては目的を明確にし、適材適所で活用することが重要です。
KDDIでは、「Microsoft 365 with KDDI」をはじめとした多彩なクラウドサービスを提供し、お客さまのDX推進を支援します。
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また、KDDIサービスと組み合わせることで、お客さまのさまざまな課題を解決します。