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リモートワークとは、従業員がオフィスに出社せず、自宅やコワーキングスペースなど離れた場所で業務を行う働き方を指します。インターネットやオンライン会議システムなどのICT (情報通信技術) を活用することで、場所を選ばず仕事を進められるのが特徴です。
従業員にとっては通勤の負担を減らし、生活と仕事の調和を図りやすくなるメリットがあります。また、企業にとっても人材確保や生産性向上につながる可能性があります。業種や職種によってはリモートワークの導入が難しいケースもありますが、情報共有や業務管理の仕組みを整えることで幅広い分野に対応可能です。
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リモートワークとテレワークはほぼ同義で使われますが、背景には微妙な違いがあります。テレワークは総務省が定義する公的な用語で、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィス勤務といった形態の総称です。政府や自治体の施策、労務管理の文脈では、一般的にテレワークが使われます。
一方、リモートワークは企業の実務やIT業界でよく使われ、より日常的でカジュアルな表現です。例えば、求人票や採用サイトでは「リモートワーク可」と表記されることが多く、働き方の柔軟性を示す言葉として浸透しています。つまり、公的制度や統計ではテレワーク、ビジネスの現場ではリモートワークといった使い分けがされています。
総務省が公表した「令和6年通信利用動向調査」(注1) によると、従業員がテレワークを利用できると回答した企業は55.6%となっています。実際にテレワークを行った人の割合は17.0%と、前年の14.8%から増加しました。
導入が進んだ背景には、働き方改革の推進や人材確保の必要性に加え、ICT環境の整備があります。特に都市部や大企業を中心に制度が定着しており、柔軟な働き方を求める人材への対応が不可欠となっていることがうかがえます。
今後は、オフィス勤務と組み合わせたハイブリッド型の勤務形態が広がり、リモートワークは企業の競争力維持に欠かせない仕組みとして需要が継続するでしょう。
企業にとってリモートワークは魅力と課題の両面を持ちます。主なポイントは以下のとおりです。
リモートワークを導入することで、勤務地を理由に採用を断念していた人材にもアプローチできるようになります。例えば、地方在住者や海外在住者でもオンラインで業務に参加でき、都市部に限定されない採用を実現可能です。
また、子育てや介護などでフル出社が難しい人材も戦力として活用でき、結果的に応募者の層が広がります。地理的制約を解消することは、優秀な人材を確保するうえで大きな強みとなり、企業の競争力向上につながります。
リモートワークを進めることで、従業員全員分の執務スペースを維持する必要がなくなり、オフィス賃料や光熱費を抑えられます。例えば、都心のオフィス賃料は1坪当たり年間数十万円に達するケースもあり、フロアを縮小すれば年間数百万円単位の削減も見込めます。
削減可能なコストの例は以下のとおりです。
こうした固定費の圧縮は、企業の財務体質を強化する効果があります。
一方でリモートワークでは、勤務時間の把握が難しく、業務開始や休憩のタイミングが曖昧になりがちです。その結果、長時間労働やサービス残業が発生するおそれがあります。さらに人事評価では、業務態度や協働の姿勢を直接確認できず、成果だけに偏った評価になりやすい点も課題です。
解決策としては、リモート対応の勤怠管理システムを導入し、作業開始や終了を自動記録する仕組みを整えることが有効です。また、評価制度では成果指標に加えて協働やコミュニケーションも加味し、公平性を保つことが求められます。
リモートワークでは、自宅やカフェなど多様な環境から社内システムへアクセスするため、情報漏えいのリスクが高まります。例えば、公衆の無料Wi-Fiを使った際に通信内容を盗み見られる、自宅PCに保存された業務データが流出するといった事例が代表的です。さらに、家族との共用端末や私物USBの利用も危険要因となります。
これらのリスクを低減するには、VPN (Virtual Private Network) を活用して通信を暗号化する、社外PCへのデータ保存を制限する、ウィルス対策ソフトを最新状態に保つといった基本対策が不可欠です。また、従業員へのセキュリティ教育を継続的に実施することで、ヒューマンエラーによる事故を減らせます。
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従業員にとってリモートワークは、働きやすさを高める一方で、新たな課題も生じさせます。主なメリットとデメリットは以下のとおりです。
リモートワークの大きな利点は、毎日の通勤が不要になることです。例えば、往復1時間の通勤を続けた場合、年間で約240時間を費やします。リモートワークに切替れば、この時間を自己研鑽や家族との時間、資格取得や趣味の活動などに充てることが可能です。
移動による疲労がなくなると集中力を保ちやすくなり、仕事のパフォーマンス向上にもつながります。時間のゆとりが生まれることで生活の質が高まり、ワークライフバランスの改善に直結するのが特徴です。
リモートワークは、子育てや介護を担う従業員にとって大きな助けとなります。保育園や学校への送迎、介護施設への通院付き添いなどを勤務の合間に行えるため、家庭と仕事の両立がしやすくなります。子どもの急な体調不良時でも、在宅で業務を継続できる点は大きな安心材料です。
両立を実現する工夫としては、業務時間を柔軟に調整できるフレックスタイム制・短時間勤務制度の導入や、オンライン会議を活用した情報共有体制などが有効です。無理のない働き方により、ワークライフバランスの向上につながります。
リモートワークでは同僚と顔を合わせる機会が減り、孤立感を覚えやすくなります。例えば、オフィスであれば自然に交わされる雑談やちょっとした相談がなくなることで、チームの一体感が薄れるおそれがあります。
実際に成果が認められにくいと感じたり、相談できる相手がいないことで孤独を感じたりする従業員は少なくありません。こうした状況はモチベーションの低下や離職リスクにつながります。
対策としては、定期的なオンライン面談やチームミーティングを設け、意識的に交流機会をつくることが重要です。雑談や情報共有の場を整えることで、従業員がやりがいを持って働き続けられる環境を維持できます。
自宅で業務を行うと、勤務時間外でもメールやチャットに対応してしまい、気づかぬうちに長時間労働につながることがあります。特に、生活空間と仕事環境が同じ場所にある場合、オンオフの切り替えが難しく、常に仕事に追われている感覚を抱きやすくなります。
解決策としては、仕事専用のスペースを設ける、出社・終業時間を明確に決めるといった工夫が効果的です。また、企業側も勤務時間外の連絡を控えるルールを設けることで、従業員が心身ともに健全な働き方を維持できます。
企業がリモートワークを定着させるためには、以下のポイントを押さえることが欠かせません。
リモートワークでは社外から社内システムに接続するため、強固なセキュリティ対策が欠かせません。VPNを利用すれば通信を暗号化でき、社内ネットワークを安全に利用できます。クラウドサービスを使う場合も、二要素認証やアクセス権限の細分化を設定します。
また、ウイルス対策ソフトやEDR (Endpoint Detection and Response) を導入し、不審な挙動を検知できる仕組みを整えましょう。さらに、パスワード管理の徹底や私用端末の利用制限といったルールを設けることで、ヒューマンエラーによるリスクも抑えられます。
セキュリティ環境を整える方法はこちら。
リモートワークでは、クラウド型の勤怠管理システムが有効です。例えば「ジョブカン」や「KING OF TIME」などを導入すれば、PCやスマホから出退勤を打刻でき、管理者もリアルタイムで勤務状況を把握できます。
また、労働基準法では労働時間の適切な把握が企業の義務とされており、過重労働を防ぐ仕組みが欠かせません。残業時間の上限規制や休憩時間の確保を踏まえたシステム運用を行うことで、法令遵守と従業員の健康維持を両立できます。
従来のように勤務態度や出社時間を基準とした評価が難しくなります。そのため、成果を中心に評価する制度へ移行することが重要です。例えば、業務の達成度や納期の遵守、提出物の品質などを明確な評価項目として設定すれば、評価の透明性が高まります。
加えて、プロジェクト内でのコミュニケーション量やチームへの貢献度といった行動面の指標も取り入れると、公平な評価につながります。定期的な面談やフィードバックを組み合わせれば、従業員の努力や成長過程も評価に反映でき、納得感のある人事制度を築くことが可能です。
円滑な連携のためにチャットツールやWeb会議システムが欠かせません。日常的な情報共有には「Slack」、社内外の会議や外部との打ち合わせには「Zoom」や「Teams」など、用途に応じて複数のツールを組み合わせると効果的です。
導入時は、操作性やセキュリティ水準、既存システムとの連携性を確認することが重要です。また、利用ルールを定め、会議の目的や時間を明確化することで効率的に運用できます。KDDIでは、お客さまの用途に合わせて活用できる「クラウド(SaaS)サービス」を提供しており、導入支援も行っています。
リモートワークは、働く場所にとらわれず柔軟な働き方を可能とする仕組みです。企業にとっては人材確保やコスト削減の効果があり、従業員にとっても通勤負担の軽減や家庭との両立といった利点があります。一方で、労務管理やセキュリティなど解決すべき課題も存在します。
リモートワークの導入を成功させるには、勤怠管理や人事評価制度の整備、セキュリティ対策、適切なツール活用が不可欠です。本記事で紹介したポイントを踏まえ、自社に合った仕組みを構築することが、持続的な働き方改革につながります。
KDDIは、企業の課題や業務環境に合わせて、安全性と効率性を両立したリモートワーク環境を実現します。セキュアなリモートワーク環境の構築から、保守・運用までを一気通貫でご支援します。リモートワークやDX推進の取り組みにも直結し、持続的な成長を推進します。