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コンピテンシーとは?意味や活用例、評価における注意点を解説

コンピテンシーとは?
意味や活用例、評価における注意点を解説

2025 2/18
コンピテンシー (Competency) とは、ビジネスのさまざまなシーンで優れた成果を生み出す人に共通する行動特性を意味します。この評価手法では、スキルや資格といった目に見える能力だけでなく、価値観や思考といった目に見えない特性も重視されます。現在、コンピテンシーに基づく人事評価は、組織内での評価や採用面接、人材育成の場で広く導入されています。コンピテンシーを正しく理解して活用することで、業務の生産性やチームのパフォーマンスを高め、組織の成長につなげていくことができます。
本記事では、コンピテンシーの意味や活用例、評価における注意点などを分かりやすく解説します。

※ 記事制作時の情報です。

目次

  1. コンピテンシーの意味
  2. コンピテンシーと類語・関連語との意味の違い
  3. コンピテンシーの具体的な評価項目
  4. コンピテンシー評価の活用シーン
  5. コンピテンシー評価を導入するメリット
  6. コンピテンシー評価を導入するデメリット
  7. コンピテンシー評価の導入手順
  8. コンピテンシー評価を導入する際の注意点
  9. まとめ

1.コンピテンシーの意味

コンピテンシーとは、「ハイパフォーマー (優れた成果を生み出す人)」に共通してみられる行動特性です。この行動特性人事評価採用基準に取り入れることで、組織全体パフォーマンス向上期待できます。

一般的企業における人事評価では、その人が身につけている知識技能、そこから生まれる業務上成果が重んじられます。一方コンピテンシーに基づく評価では、目に見える能力だけでなく、優れた成果を生み出す原動力となる価値観思考評価対象です。コンピテンシーは、知識技能とは違い、個人先天的能力も含まれます。ゆえに、従来研修トレーニングでは身につけることができません。その結果企業人事評価においてコンピテンシー価値がますます注目を集めています。

Competence Skill Personal development Business concept on virtual screen

・コンピテンシーが注目されるようになった背景

コンピテンシーは、もともと「資格」や「能力」を意味する言葉ですが、人事評価におけるコンピテンシーという考え方の起源は、1970年代ハーバード大学心理学者デイビッド・C・マクレランド教授らが行った研究にあります。このグループは「外交官採用する際のテスト成績配属後業績一致しない」という国務省からの相談を受け、調査を行いました。結果としては、テスト成績学歴配属後業績には明確相関関係が認められなかった一方で、高い業績達成する人には共通した考え方や行動特性があることが明らかになり、これが「コンピテンシー」と呼ばれるようになりました。

その後、1980年代から1990年代にかけて米国企業中心コンピテンシーに基づく人事評価が取り入れられるようになり、採用人材育成指標役割を果たしながら浸透していきます。日本では年功序列制度見直しの一環で、バブル崩壊後の1990年代成果主義評価基準として、コンピテンシー導入する企業増加しました。

近年労働人口減少グローバル競争激化により、限られた人材で高い成果を上げることが求められています。
こうした状況を受けて、求職者潜在能力見落とさないための手法として、コンピテンシーが改めて注目を浴びているのです。

2.コンピテンシーと類語・関連語との意味の違い

2-1. スキルとの違い

スキルとは、特定分野業務遂行するために必要専門知識技能です。学習トレーニングなどを通じて習得することができ、プログラミング簿記外国語などがそれに該当します。スキル資格有無など、具体的指標測定できる点が特徴です。

一方コンピテンシーは、スキル資格そのものではなく、それをいかにして成果につなげていくかという行動特性重視され、その人の価値観思考も含めて、総合的評価されます。


2-2. アビリティとの違い

アビリティスキル意味が重なる部分がありますが、スキル特定分野専門知識技能を指すのに対して、アビリティ仕事に取り組む姿勢などを含めた総合的能力意味する言葉として用いられます。
例えば、分析能力・コミュニケーション能力などです。

コンピテンシーとの違いは、アビリティは「何ができるか」という能力焦点が当てられますが、コンピテンシー前述のとおり「能力を活かして、どのように成果につなげるか」という行動特性焦点が当てられる点が大きな違いです。


2-3. コア・コンピタンスとの違い

コア・コンピタンスとは、他社容易真似することのできない企業独自の強みや中核となる能力を指します。
例を挙げると、他社真似できない独自デザインを備えた製品開発し、市場で高く評価された場合、それがコア・コンピタンスとみなされます。企業コア・コンピタンスを高めながら競争力のある製品開発し、新たな市場積極的参入するなどして、持続的成長実現することができます。


2-4. ケイパビリティとの違い

ケイパビリティは、ビジネスの中で培われた組織的能力や強みを指します。
例としては、小売業界において独自物流ネットワーク構築し、効率的かつ正確商品配送実現する能力などがケイパビリティです。他社との差別化顧客満足度向上可能にするケイパビリティは、競争力維持するための土台となります。

3.コンピテンシーの具体的な評価項目

コンピテンシーに基づく評価では、具体的評価項目設定必要ですが、統一されたフォーマット存在しません。一般的に知られているモデルとして、さまざまな業種職種横断してコンピテンシー体系化した「コンピテンシー・ディクショナリー (注) があります。このモデルは、前述マクレランド教授弟子であるスペンサー夫妻が1993年に提唱したもので、コンピテンシー評価項目が6つの領域分類されています。これらは企業独自評価項目設定する際の参考となります。

コンピテンシー コンピテンシーの定義
達成・行動 達成思考/秩序・品質・正確性への関心/イニシアチブ/情報収集
援助・対人支援 対人理解/顧客支援志向
インパクト・対人影響力 インパクト・影響力/組織感覚/関係構築
管理領域 他者育成/指導/チームワークと協力/チームリーダーシップ
知的領域 分析的志向/概念的志向/技術的・専門職的・管理的専門性
個人の効果性 自己管理/自信/柔軟性/組織コミットメント

※ 出所: Spencer & Spencer (1993)

4. コンピテンシー評価の活用シーン

コンピテンシー社員行動特性客観的評価適切配置人材育成など、人事領域幅広導入されています。
主な活用シーンは、「人事評価」「採用活動」「人材育成」の3つです。


4-1. 人事評価

コンピテンシーは、人事評価精度を高めるために広く導入されるようになっています。業務上成果のみが重視されていた従来人事評価とは異なり、コンピテンシー評価では、成果に至るまでの考え方や価値観などの行動特性評価対象となります。

具体的には、営業職では「顧客ニーズ把握する力」「信頼関係構築するスキル」、エンジニア職では「技術的課題への対応力」「問題解決能力」などが評価基準として設定されます。このような基準明確に示すことで社員共通理解が生まれ、評価制度客観性公平性が保たれると同時に、組織全体成長も促されます。


4-2. 採用活動

コンピテンシーは、採用活動自社に適した人材見極めるための基準としても活用されています。自社ハイパフォーマー共通する行動特性に基づいて評価項目作成することで、応募者審査活用できます。

例えば、リーダーシップを求める場合は「どのようなチームをまとめたことがあるか」といった経験を問うほか、「チームをまとめる際に重視することは」などの質問を加えると効果的です。その人物潜在的能力に関する質問を加えることで、価値観倫理観などを判断する材料となり、より適切人材見極めが可能になります。


4-3. 人材育成

人材計画的育成においても、コンピテンシーは大きな意味を持っています。営業部門ハイパフォーマーインタビューを行い、コンピテンシー評価項目作成する場合、これを人材育成計画に組み込むことで、営業部門若手社員は「自分はどのような能力を伸ばすべきか」を具体的把握することができます。

また、コンピテンシー人材育成活用することで、組織内人材配置最適化され、組織力を高めていくことが可能です。

5.コンピテンシー評価を導入するメリット

人事評価基準としてコンピテンシー導入する主なメリットとしては、次の3つが挙げられます。

まず、業務効率生産性向上期待できます。コンピテンシーを掘り下げることによって、高い成果を上げるために必要行動特性明確になります。この基準全社浸透させると、業務効率化生産性向上が促されます。

また、人事評価透明性確保見込めます。コンピテンシーに基づいて評価基準統一することで、評価者主観による曖昧さが解消され、評価一貫性信頼性向上可能になります。これに伴い、社員納得感も高まり、評価結果前向きに捉えることができます。

さらに、組織成長貢献する優れた人材獲得が挙げられます。コンピテンシー採用基準導入すれば、新たな人材に求める行動特性具体化され、採用活動成果を高めていくことができます。

6.コンピテンシー評価を導入するデメリット

コンピテンシー評価導入する上で課題デメリットもあります。主に以下の2つです。

企業が求める人材行動特性業種職種によって異なるため、評価項目具体化は思ったよりも難しく、外部専門家協力必要になることがあります。そのため、コンピテンシーモデル策定には多くの時間コスト必要になることが珍しくありません。

また、行動特性評価定性的要素が多く、評価者主観バイアス影響することがあります。評価基準曖昧さで公平性が損なわれると、社員モチベーション低下不信感につながるリスクがあることもデメリットといえます。

7.コンピテンシー評価の導入手順

コンピテンシー評価導入する手順は、次のとおりです。

  1.  モデル人材へのヒアリングハイパフォーマーから行動特性抽出
  2.  コンピテンシーモデル策定必要行動特性モデル
  3.  評価項目設定評価基準となる項目設定
  4.  評価項目レベル設定各項目評価レベル設定

コンピテンシー評価適切手順導入することにより、評価プロセス明確になり、組織全体採用活動人材育成における方針一貫性を保つことができます。それぞれのステップについてみていきます。


7-1. モデル人材へのヒアリング

ハイパフォーマーから行動特性ヒアリングを行う前に「高業績」の定義づけが必要です。職種役割ごとに業務を行う現場理解しやすい明確定義づけを行いましょう。

その後のヒアリングでは、成果につながった行動だけでなく、「その行動をとった背景」や「どのような考え方や価値観に基づいて判断したのか」といった理由まで深く掘り下げます。


7-2. コンピテンシーモデルの策定

ハイパフォーマーからのヒアリング結果を基に、評価基準となるコンピテンシーモデル策定します。このモデルには、「理想型モデル」「実在型モデル」「ハイブリッドモデル」の3つのタイプがあります。

このように、コンピテンシーモデルにはそれぞれメリットデメリットがあるため、最終的目的成長段階に応じて適切モデル選択することが重要です。


7-3. 評価項目の設定

コンピテンシーモデル評価項目には、統一されたフォーマットはありません。企業経営方針ビジョン合致し、実際業務役立独自評価項目作成することが大切です。優れた社員からのヒアリング内容を基に、社員評価育成採用必要項目を絞り込みましょう。

具体例参考資料必要場合は、前述の「コンピテンシー・ディクショナリー」が役立ちます。作成時には、全社共通項目と、職種役割ごとの項目区別することで、現場実態に即したモデル作成できます。


7-4. 評価指標のレベル設定

評価項目が決まったら、項目ごとの評価レベル設定する必要があります。参考となるのが、以下の5段階レベル分けです。

レベル1 受動的な行動 上司の指示があれば、業務を行うことができる
あくまで受け身の段階であり、自発性は見られない
レベル2 通常の行動 決められた業務であれば、上司の指示がなくても行うことができる
ただし、決められた業務の範囲にとどまる
レベル3 能動的な行動 自ら考え、明確な理由に基づいて主体的に行動できる
レベル4 創造的な行動 現状の業務を改善するためのアイデアを提案することができる
レベル5 パラダイムを転換する行動 リーダーシップを発揮し、新たな発想とチームワークで現状の業務を改善することができる

この5段階評価で、社員成長プロセス正確把握し、適切育成評価仕組みを構築することができます。

8.コンピテンシー評価を導入する際の注意点

コンピテンシー評価導入する際は、「適切評価項目設定」「定期的見直しと改善」「過度依存に陥らない」の3点に注意必要です。


8-1. 適切な評価項目の設定

高すぎる理想再現できない行動特性などの評価項目を掲げても、適切人材採用育成にはつながりません。企業が求める理想人材像明確化することは重要ですが、理想が高すぎて現実的でない場合社員理解が得られず、行動にも移せなくなってしまいます。

社員行動を促すためには、職種役割ごとに現実的評価項目設定しましょう。これにより、社員自分が何をすべきかがイメージしやすくなり、具体的行動へつながっていきます。


8-2. 定期的な見直しと改善

ビジネスを取り巻く市場環境は常に変化しており、経営戦略にも柔軟対応が求められます。それに伴い、社員に求めるコンピテンシー変化します。自社コンピテンシーモデル市場ニーズ適合させるには、定期的見直しと改善必要です。
これによりモデル陳腐化を防ぎ、長期的実効性確保することができます。実際見直しに際しては、現場の声を反映させることも大切です。社員がしっかり納得すれば、さらなる効果期待できます。


8-3. 過度な依存に陥らない

コンピテンシーモデル過度依存すると、社員一人ひとりの強みや個性否定につながる可能性もあるため注意必要です。
職種役割に応じて評価項目焦点を絞り、柔軟運用しましょう。具体的達成可能目標設定することが、組織全体パフォーマンス向上に結びつきます。

まとめ

コンピテンシーは、ハイパフォーマー共通してみられる行動特性です。優秀人材へのヒアリングを基にコンピテンシーモデル作成することで、社員一人ひとりの強みや課題可視化でき、採用活動人材育成効果的指標として活用できます。

コンピテンシー評価活用で、個々の社員成長支援し、組織の中で適材適所配置を行うことにより、業務効率化生産性向上期待できます。社員一人ひとりの潜在能力最大限に引き出し、組織全体成果へとつなげていきましょう。


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