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まず、テレワークの頻度を見ると、全てが完全テレワークを実現しているわけではないと分かります。
完全テレワークを実現している場合は「毎日」と回答することになりますが、その比率は全体の半分程度で、従業員数1,000人以上の大企業と中堅以下の企業を比較すると、大企業ほど完全テレワークを実現している傾向が見られます(図1)。
次に実施してみて分かったメリットを確認したところ、世代ごとに差があると判明しました。
特に顕著なのが生活面です。
図2を見ると、全体では「通勤時間をなくすことができる」が9割以上の支持を集めましたが、生活に関連するメリットを挙げる回答は相対的に少なく、「趣味に費やす時間や家族と過ごす時間が増えた」は26.2%に留まります。
興味深いのが「飲み会の回数が減った」を良かった点に挙げる意見が20代で最も多いことです。20代ほどではありませんが、30代も40代以上に比べて回答が多い傾向が見られます。ここでの飲み会とは仕事関係のものとは限りませんが、趣味や家族との時間を優先したいという世代特有の価値観の違いが反映されているようです。
一方、よい兆候ではないのが、「作業に集中しやすい」を挙げる回答が比較的少なく、かつ世代間の差もほとんど見られないことです。通勤時間がなくなった分、その時間を有効に使うことができればいいのですが、環境がそれを許さないのかもしれません。例えば、学校に行っているはずの子供が家にいて、その世話で仕事を中断しなくてはならないなど、特殊事情が影響している可能性があります。
続いて、テレワークで不便に感じている点を調べた結果を紹介しましょう。
今回の調査では、仕事と生活という2つの視点からどんなことを不便と感じているかを聞きました。
まず、仕事面で不便に感じている点です。
図3は、出勤のない「完全テレワーク」と出勤のある「限定テレワーク」のケースそれぞれで結果を比較したものになります。全体的に最も多くの回答を集めたのは、「同僚との何気ないコミュニケーションがとりづらい」ことです。雑談による気分転換を含め、対面でのコミュニケーションを全てオンラインで行わなくてはならないことにストレスを感じている可能性があります。次に回答が多かった「ネットワーク環境が悪い/回線速度が遅い」ことは、住宅事情に関係ありそうです。マンションのように複数世帯で設備を共有していたり、家族で設備を共有していたりで、普段以上に通信環境に負荷がかかっている可能性があります。
完全テレワークと比べて限定テレワークの場合に指摘が多い回答は、出勤せざるをえない理由と考えてよいでしょう。該当するものは、「領収書、請求書、稟議書などの処理、決済ができない」「紙の資料が見られない」などです。内部統制強化のためにも電子決済システムのメリットは大きいのですが、投資を先送りにしてきた企業にとって、完全テレワークの阻害要因になっている可能性があります。
次に、生活面で不便に感じていることを見てみましょう。ここでは年齢層別に不便に感じていることを比較しています(図4)。
最も回答が多かったのが「運動不足」についてで、「椅子やデスクなど作業環境が悪い」ことがこれに続きます。
運動不足の問題については全世代共通ですが、「椅子やデスクなど作業環境が悪い」「仕事に集中できるスペースがない」「子供の世話で作業が中断してしまう」は子育て世代の30代や40代に回答が多い傾向が見られます。日本の住宅事情では書斎スペースを用意することが難しく、生活空間と仕事のための環境を分けることに苦労していることが分かります。
面白いのは、「飲みに行くことができない」ことを不便とする回答の傾向でしょう。全体としては少ないものの、年齢が高くなるほど回答が増えています。図2のテレワークのメリットでは「飲み会の回数が減った」ことを挙げる意見は若い世代に多い傾向が見られましたが、全く対照的な結果です。
いわゆる「飲みニケーション」には賛否両論がありますが、「人との会話が減った」ことへの指摘が20代で突出していることを考慮しても、若い世代はあまり好意的に見ていない可能性がありそうです。
最後に、現在テレワークを実施している中で工夫していることを聞いた結果から、不便の解決策になっていることを紹介しましょう。
図5は自由記述における頻出用語同士の関係を示しており、解決の容易な生活面については積極的に対策を講じている傾向が見られます。例えば、運動不足については、「昼休みと夜間に、可能な限り、人通りの少ない場所に散歩に行く」や「1時間おきに休憩を取り、ストレッチをしている」などの紹介がありました。作業環境については、主にディスプレイの増設と椅子に投資しているようです。
「オンライン会議用と作業用の二画面で仕事をしている」という意見からもわかるように、マルチディスプレイにする背景にはオンライン会議の増加があります。ディスプレイを新しく購入したというケースに加え、テレビを流用しているケースもありました。「疲れにくい椅子を購入し、集中できる仕事用のスペースを用意した」「椅子に骨盤矯正マットなど、姿勢を正すアイテムを使うと腰痛によい」という意見は参考になります。
また、同居する家族がいる場合、「オンライン会議の時間をあらかじめ家族と共有し、その時間は配慮してもらっている」など、スケジュールを家族と共有することで、仕事に集中するための工夫をしているようです。オンライン会議ツールに関しては、会議だけでなく、飲み会やランチ、社内サークルのヨガにまで用途が広がっていることも分かりました。
さらに、できるだけオフィスで働いている状況に近づける努力をしていることも分かりました。特に、オンとオフの切り替えをスムーズに行うためのルーティン作りを勧める意見が印象的です。例えば、「仕事始めるときに着替えること、髭を剃ること、あるいは化粧するなど、気持ちを切り替えるためには何かルーティンを作るべきだと思う」「朝の起床時間など、出勤時のルーティンを極力崩さない。朝昼晩と気分転換のため運動をする」などの工夫は、自律的に仕事を進めることが求められるからこその工夫といえるでしょう。
調査結果から見えてきたのは、現在の日本の労働環境自体が抱えている問題でもあるという印象を受けました。「テレワークで良かった点」として多くが挙げられている通勤時間の短縮や、家事・子育てとの両立、あるいは自由な服装などはテレワークをするしない以前に、働き方そのものとして今後変えていく必要があるのではないでしょうか。
また「不便に感じる点」とされる、書類の決裁や処理ができない、仕事とプライベートの区別が難しい、紙の資料が見られない、といった点は、欧米のオフィスワークに比べて日本が立ち遅れている面として以前から指摘されてきたこと。したがって、テレワークをしやすい労働環境を整える方向に社会をシフトさせることは、とりもなおさず多くの人が暮らしやすい環境に向かっていくということでもあるかと思われます。