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人流とは、人の動きを表す言葉です。具体的には「人々がいつ、どの移動手段 (交通機関) で、どこからどこまで行き、どのくらい滞在したのか」といったような、移動した日時・手段・エリアや滞在時間などを指します。
また、こうした人の動きに関する情報を統計的にまとめたものを「人流データ」といいます。
人流データはリアルタイムな人の動きを把握したい場合だけでなく、過去の人流データから、今後の人流を予測したい場合にも活用されています。過去の人流データを基にした通行量予測や需要予測に関するデータは、都市計画や交通インフラの整備、防災計画などに役立てられています。また、人流データはビジネスにおいても役に立ちます。
例えば、天候や曜日別のサービス利用状況・利用者数など複数のデータを組み合わせることで、ユーザーの行動傾向の可視化といった精度の高い分析ができるようになります。
さらに、分析結果を活用して既存顧客から潜在顧客まで、一人ひとりのニーズの把握とそれに合わせたマーケティング施策を実現したり、競合の利用状況や利用者情報から対策を立てたりすることも可能です。
人流データが注目されている理由として、主に以下の3つが挙げられます。
近年、コンピューターの高性能化やAIの実用化など、デジタル技術が著しく進歩しています。それによってデータ分析の技術も向上し、膨大なデータの取得や高精度なデータ分析が可能になりました。また、取得した膨大なデータを適切に管理するためのサービスも登場してきており、以前よりも利活用のハードルが低くなっています。
このように多くの企業が人流データを利活用しやすくなってきたことが、注目を集める理由の一つに挙げられます。
モバイル端末の普及により、現代ではほとんどの人がスマートフォンやタブレット端末を保有しています。
実際に、総務省が報告した「令和5年版 情報通信白書」※ では、2022年現在90.1%の人がスマートフォンを保有していると回答し、モバイル端末全体では97.5%の人が保有していると回答しています。
このように、スマートフォンなどの端末を持って移動する人が増えたことで、人々の位置情報をより高い精度でより簡単に取得しやすくなったことも、人流データが注目されるようになった理由の一つです。
人流データが注目されはじめた背景には、新型コロナウイルス感染症の流行も関係しています。2019年に新型コロナウイルス感染症が発生した際、人流データは人々の行動から感染経路を把握して感染拡大を防止するために活用されました。新型コロナウイルス感染症の流行は、人流や人流データの重要性を再認識するきっかけになったと考えられています。
人流データを取得する方法をご紹介します。人流データは、主に以下の位置情報データから取得します。
データは匿名のため、個人の特定は不可能です。
それぞれ「どのように情報・データを取得しているのか」「どのような人の情報が取得できるのか」などを解説します。
携帯電話の基地局に蓄積されている接続情報から、位置情報を取得することができます。基地局は全国にあり、電波がつながっている限り24時間365日データの取得が可能です。また、携帯電話契約者の属性データと紐づけることで属性分析もできます。
ただし、データの測定精度は基地局の設置間隔によるため、基地局から得られる人流データは空間粒度が粗くなりがちです。そのため、大まかな位置情報しか得られず、各ユーザーの詳細な移動経路までは取得することができません。こうした特徴から、主にインフラ設計や都市開発に利用されています。
例えば、携帯電話の基地局情報と人口密度や交通の混雑状況に関するデータを組み合わせて、交通機関の路線見直しを行っているケースがあります。
店舗や施設に設置されたWi-Fiへの接続情報から、滞在状況に関する人流データを取得することができます。基地局情報やGPS機能では難しい「来店数の計測」や「滞在時間の把握」が可能です。
ただし、店舗や施設側がWi-Fi機器を設置する必要があるほか、来訪者がWi-Fiに接続しなかったり、Wi-Fiの接続圏外へ移動してしまった場合はデータの取得ができません。取得できるデータは、Wi-Fi接続時から接続が切れるまでの情報という点には注意しましょう。
GPSの位置情報から、精度の高い人流データを取得することができます。
GPSは、人工衛星からの電波を受信した位置データを基に現在地を特定するシステムです。緯度経度単位で位置情報を把握できるため、空間粒度の細かい人流データを取得することができます。
ただし、ユーザーがスマートフォンのGPS機能をOFFにしていたり、データソースとなる特定のアプリを利用していなかったりする場合は、位置情報を取得できません。また、GPS機能をONにしていても地下や建物内では電波を受信できない可能性があるなど、取得できるデータには偏りが生じてしまいます。
街中や施設内に設置された監視カメラの映像から、混雑状況や属性、人数などを把握する方法もあります。スマートフォンなどのモバイル端末を持っていない人の計測も可能です。
ただし、データの取得にはカメラの設置が必要となり、撮影範囲内の情報に限られてしまうなどのデメリットがあります。
電車やバスなどの公共交通機関で使う交通系ICカードからは、乗車履歴が取得できます。ODデータ (origin/出発地点 ー destination/目的地) のほか、ICカードに紐づけられた年齢や性別などの情報も取得できるため、「どのような人が、いつ、何に乗って、どこからどこまで移動したのか」を把握することができます。
ただし、ICカードを利用していない場合や、エリア外のデータは取得できません。
BLE (Bluetooth Low Energy) とは、近距離無線通信技術の一つで、低電力でBluetoothを利用した近距離の通信を行う方法です。ビーコン端末と呼ばれる発信機から発信された電波を、Bluetooth機能をONにしているモバイル端末が受信することで位置情報が得られます。ビーコン端末から半径10m以内であれば、地下や建物内でもデータ取得が可能です。
ただし、データを取得するにはビーコン端末の設置や、モバイル端末所有者が特定のアプリをインストールしていることが前提となります。また、Bluetooth機能がOFFの場合や範囲外のデータは取得することはできません。
PT (パーソントリップ) 調査は、国土交通省と全国各地の都市圏が協力し、都市における人流データの取得を目的とした調査です。
都市圏に住む世帯のうち2〜10%を無作為に抽出し、個人の属性や一日の移動情報を尋ねる調査票を送り、回答してもらうことでデータを取得します。移動における明確な目的や、徒歩や自転車など公共機関以外の交通手段を把握できるため、人流データのなかでも細かい情報を取得することができます。
ただし、調査周期は10年に一度であり、情報の鮮度が低いというデメリットがあります。
人流データは、官民を問わずさまざまな分野での活動に役立てることができます。
今回は、以下4つの人流データ活用例をご紹介します。
エリアや時間帯を指定して取得できる人流データは、コロナ禍での感染対策やスマートシティ推進に活用されています。
例えば、神戸市役所様では、「KDDI IoTクラウド Data Market ~Location Analyzer~」を導入して人流データの収集を行っています。このサービスは、お客さまが所有しているデータと「KDDI IoTクラウド Data Market」が提供している統計データやスマートフォンデータなど約30種類のデータを基に、分析からソリューション提案までワンストップで提供するサービスです。
具体的には、コロナ禍における行動自粛の実態を把握するために主要駅や観光地の通行人口の推移や、夜の繁華街の滞在人口のデータを取得し、取得したデータを市民にも共有することで、さらなる活動自粛を促しました。
また、スマートシティ推進事業の一環として駅の再整備を行う際には、計画立案にあたって駅の利用者情報や駅周辺の交通量などのデータを活用しました。
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イベント開催時に、会場周辺のリアルタイムな人流データを取得することで、イベント実施後の効果検証として役立てているケースもあります。例えば、三井不動産株式会社様では、大規模複合施設の開発と地域活性化の一環として、街づくりに関するさまざまなイベントを開催しています。
これまではイベント後の効果検証として携帯電話の基地局情報に基づく調査データを活用していましたが、情報の粒度が粗く訪問者の変化を細かく分析することが難しいという課題を抱えていました。KLAを活用したデータ分析を行った結果、特定エリアへの来訪者情報 (性別・年齢層) や時間帯別の滞在情報、歩行者通行量などがわかるようになり、次回イベントの企画立案にも役立てているとのことです。
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観光客数の増減の把握や観光動態調査など、新型コロナウイルスの影響で減少した観光客の実態調査に人流データを役立てているところもあります。例えば、栃木県庁様では、人流データを活用した実態調査や行政施策の効果検証を実施しています。
具体的には、人流データで取得した来訪者の属性、居住地、観光施設の併用状況、宿泊先といった細かな情報を基に観光客の変化を分析し、観光振興施策の立案に活用しています。
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取得した利用者の年齢・性別や利用者数といった情報を、土地の高度利用や居住環境の改善、都市基盤の再整備などに活用することで、合理的に都市開発を進めることができます。
三井物産株式会社様とKDDIが共同で設立した株式会社GEOTRAは、人流データを活用してまちづくりに活かせる「人流シミュレーター」を提供しています。
人流シミュレーターとは、秘匿化されたさまざまな位置情報データとAIの予測分析から “架空の人”をつくり上げ、人流をリアルに再現 / シミュレートするものです。実際に、三菱地所株式会社様や渋谷区様が導入・活用されており、ほかにも多くの企業や自治体から注目を集めています。
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人流データは人々の社会活動・経済活動の最適化や活性化に役立つとして、大きな可能性を秘めています。
しかし、個人情報規制の強化や急速なDX化が進む近年において、人流データの活用には以下のような課題や注意点もあります。
人流データの取得方法によっては、顔を認識できるデータや個人を特定できる情報が多く含まれているので、取り扱いには注意が必要です。
万が一それらのデータが外部に流出してしまった場合、刑事上・民事上の責任が課せられ、顧客・取引先からの信頼を失うだけでなく、社会的信用の失墜も懸念されます。
人流データを取り扱うには専門的な知識と技術が必要です。
著しい成長をみせるデジタル技術の需要が高まる反面、IT業界の人材不足が課題となっています。
実際に、2019年4月に経済産業省が公表した「IT人材需給に関する調査」 では、IT人材の需給ギャップの計算結果が以下のように示されており、2025年には36万人、2030年には45万人の人材不足が見込まれています。
このように人流データの収集・分析技術の開発がすすむ一方で、それを使いこなせる人材が不足しており、人流データの活用を検討しているものの社内で対応できる人員がいないという企業も多いでしょう。
そのため、人流データの分析・解析は社外の専門家へ委託するというのも手段の一つです。
ここまで、人流データの重要性や取得・活用方法についてまとめてきました。
人流データは複数の手段から取得でき、取得方法によって得られる情報の種類や粒度は異なります。活用する目的に合わせて選択することで、効果的な対策立案が期待できます。
KDDIでは、「KDDI Location Analyzer」「Location Trends」「KDDI Location Data」の3つの位置情報サービスを提供しています。auスマートフォンユーザー数百万人のビッグデータはもちろんのこと、複数のデータバンクの情報を提供可能です。
また、人流データの取得からデータの活用・分析・コンサルティングまで、お客さまの課題に合わせて最適なサービスをお選びいただけます。人流データの活用を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。