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―近年、ビジネス界だけでなく政府や自治体、教育、クリエイティブなどさまざまな分野で生成AIが注目されています。それだけ大きなインパクトを与える生成AIとはどのようなものか改めて教えていただけますか?
簡単に説明すると、生成AIとは大規模なデータを学習して新しい言葉や文章、画像などを新たに作り出すAIテクノロジーです。
これまでのAIが学習したデータを基に適切な回答パターンを提示していたのに対し、生成AIは膨大な学習データを基に新しいものを生成することができるのです。
—一部の自治体や企業で業務への生成AIの活用を表明していますが、実際にどれくらい利用されているのでしょうか。
生成AIに対する関心は高いのですが、企業での活用はまだ1割にも満たないと捉えています。生成AIが業務現場で活用されていくのはこれからでしょう。
ちなみにKDDIでは2023年5月から社員1万人を対象にした生成AIチャットサービス「KDDI AI-Chat」を実務で利用し始めました。生成AIに関する知見を蓄積し、その可能性とリスクを正しく評価するとともに、今後どのような現場で生成AIを活用できるのか検証していくという意図があります。KDDI AI-Chatの活用や、生成AI利用促進のための社内体制を部門横断で整備したり、安心・安全な環境を整えるなどさまざまな取り組みをKDDIでは実施しています。
—なかなか生成AIの企業活用が進まない理由として、どういうものが考えられますか?
KDDI AI-Chatの発表以降、お客さまからお問い合わせをいただくことが増えているのですが、その時によくお聞きするのは「どんな業務に利用できるかイメージが湧きにくい」という点です。それには実際に使ってみることが一番なのですが、やはり二の足を踏む企業の方も多いですね。よく言われるように、「業務現場で生成AIを使うと、AIが自社データを使って学習したり、情報が流出したりするのではないか」とセキュリティ上の懸念がなかなか払拭できないお客さまもいらっしゃいます。
本当に業務に活用できるかわからず、加えてセキュリティ上の懸念もあるとなると、やはりすぐ本格活用するというのは難しいでしょう。これが大きなポイントになると思います。
—KDDIは2023年9月にマイクロソフトの生成AIサービス「Azure OpenAI Service」の法人向けトータルサポート事業を開始しました。このサービスは、これまで触れた課題をどのように解決するのでしょうか。
簡単にお答えすると、セキュリティ面の懸念が払拭されている点、そしてスモールスタートで利用できるので、今後の業務活用に向けた検証として導入しやすいという利点があります。詳しく説明していきます。
Azure OpenAI ServiceはAzureプラットフォームのAIサービスの1つで、OpenAI社が開発した大規模言語処理モデルであるChatGPT3.5、GPT-4と画像生成モデル「DALL-E」(2023年9月時点) をAzureクラウドで動作できるものになります。Azure上で稼働するので、Azureのセキュリティ機能をそのまま利用できることがメリットです。また、トレーニングデータの2次利用はありませんし、プライバシーに関しても日本の法律に準拠しています。
Azureプラットフォームサービスであるメリットはもう1つあります。それは従量課金制であること。
Azure OpenAI Serviceも、利用量に応じて課金されるので、まずは使ってみて業務に適用できるかどうか判断するスモールスタートに最適です。
使い方によって環境の作り込みは必要ですが、クラウドサービスなのですぐに利用できるのもメリットです。
—セキュリティに優れ、小さくスピーディーに始められるのがAzure OpenAI Serviceの特長なんですね。このAzure OpenAI ServiceをKDDIが提供することによって、どのような付加価値が生まれるのでしょうか。
KDDIならではの付加価値は大きく分けて2つあります。
まず挙げられるのがセキュリティ面でのメリットです。KDDIの仮想ネットワークであるKDDI KDDI Wide Area Virtual Switch 2からAzureへ閉域網接続することで、セキュアで安定した帯域を確保し、安心・安全にAIを利用することができます。Azureだけではなく、AWSやGoogle Cloudにも対応しているので、将来的にはこれらのプラットフォーム上で稼働する業務システムを生成AIと連携させ、安全に利用することもできます。
そしてもう1つのメリットが、KDDI AI-Chatの開発・運用で蓄積したさまざまな知見を基に、環境整備はもちろん社内のルール作りのポイントなどをお伝えして、お客さまのAI活用を促進することです。
—生成AIを社内利用するうえで、どのような体制作りが必要になるのでしょうか。そのポイントを教えてください。
一例を挙げると、生成AIが作ったコンテンツの問題として、利用の仕方によっては著作権侵害に当たる可能性が指摘されています。生成されたコンテンツをそのまま商用利用するのはリスクがあるので、専門のチェックプロセスや体制を築かなくてはなりません。
また情報の正確性の問題もあります。Azure OpenAI Serviceは2021年9月までの情報をモデルとして学習しているので、最新情報が反映されない可能性があります。その部分はほかのサービスとうまく組み合わせる必要があります。
こうしたさまざまな課題に対処するため、KDDIの知見を活かして社内の利用ルールをまとめ、周知徹底を支援したり、現在、生成AIのガイドライン作りに取り組んでいます。これが終われば、その知見を反映してガイドラインの策定をサポートすることもできます。
—企業として生成AIをきちんと活用するためのノウハウを提供していくのですね。
そうですね。もちろん活用のルール作りだけでなく、生成AIを活用する環境作りも支援します。KDDI AI-Chatは社内の情報システム部門が内製で開発したので、その開発ノウハウもお客さまにお伝えできると考えています。
まとめると、Azure OpenAI Serviceの特長である高いセキュリティとスモールスタートに最適な従量課金制に加え、キャリアならではの閉域網構築による安全性の高い利用、環境整備や社内ガバナンスを含む知見の提供、こうしたことを通じて企業の生成AI活用を一層促進していきます。
—本サービスのユーザーはどのような企業が多いのでしょうか。また生成AIの活用方法に関し、どのようなトレンドがあるのか教えてください。
現状では、やはり「業務に活用できるかどうかの検証」でスタートするという企業が多いです。業種は本当に幅広いですね。本サービスは高度なセキュリティ環境下で生成AIを利用できるので、金融機関や自治体からのお問い合わせもあります。
KDDIが推奨しているのは、3ステップから成る生成AIの活用です。ステップ1はトライアルフェーズとし、まずは使ってみることから始めます。現状、お問い合わせの多くはこのフェーズです。
ステップ2は、AIを活用してさらなる業務効率を実現するため、既存の業務データや社内データと連携して最適な活用を検証していくことです。KDDIは、お客さまの社内データへのアクセスの仕組み作りやデータ活用に向けたクラウドへのデータ移行支援を実施します。
最後のステップ3は本格的に業務に生成AIを取り入れるフェーズです。この3ステップの実行にあたり必要なご支援は、社内活用での知見を積み重ねながらお客さまの声を聞き、KDDIそしてKDDIグループの力を結集し、最適な支援を提供ができるように準備を進めていきます。
—参考までに、5月から運用を始めているKDDI AI-Chatでどのような成果が出ているのか教えてください。
社内アンケートによると、最も多い利用が検索で、その次は文書の要約ですね。私自身、会議のためのアイデアの叩き台作りや要約などでKDDI AI-Chatを使っています。
例えば新サービスの名称を新しく考える場合、サービスの特徴や要件を記述し「名称案を30個作ってください」というプロンプトを書いて投げると、たちまち案を出してくるので非常に効率的に作業が進むようになりました。
また、実はKDDI AI-Chatの開発にも生成AIが貢献しています。開発期間は3週間でしたが、最初の1週間は実現性の検証、次の1週間で設計、最後の1週間で構築仕上げをしたのですが、コードの生成には生成AIを使ったので、かなり時間短縮ができました。
こうしたノウハウもご提供したいと考えています。
—最後に、生成AIを業務に取り入れたいと考えている企業の方にメッセージをお願いします。
生成AIは政府でも力を入れており、各省庁やAI戦略会議でガイダンス作りや活発な議論が進められています。今までは利用を不安視する声もありましたが、ある程度活用の指針が形成されてきたので、今こそ一歩踏み出すチャンスだと考えています。
AI有識者の方も「ディープラーニングやデータサイエンスの書籍はたくさんありますが、やはり実際に触って試してみることがAIの学習の近道」ということをおっしゃっていました。私も同感です。まずは使ってみることがAIの知識を深める最短の道なので、KDDIはそんな皆さまの挑戦を力一杯応援していきます。