※ 記事制作時の情報です。
セキュリティインシデントとは、情報の「機密性 (外部に漏れないこと)」、「完全性 (改ざんされないこと)」、「可用性 (必要なときに利用できること)」のいずれかに悪影響が生じる、またはそのおそれがある状態を指します。IPA (情報処理推進機構) も、外部攻撃や内部の不正、設定不備などによって情報が漏えい・改ざんされたり、システムが停止したりする事象、さらにその兆候をインシデントとして定義しています。
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セキュリティインシデントは次の3種類に分類できます。
セキュリティインシデントが発生すると、企業は次のような重大なリスクに直面します。
これらは一度起こると回復に時間がかかり、経営全体に影響を及ぼすおそれがあります。セキュリティインシデント対策を経営課題として捉えることが欠かせません。
情報漏えいが発生すると、企業は大きな社会的ダメージを受けます。特に顧客情報が外部へ流出した場合、取引先や利用者からの信頼が大きく揺らぎ、サービス継続に不安を抱かせる結果につながります。漏えいの内容によっては損害賠償を求められる可能性もあり、その金額は数百万円から数億円規模に及ぶことも珍しくありません。また、対応に追われることで本来の業務に支障が出る点も大きな負担になります。一度失った信用を取り戻すには長い時間が必要になるため、情報漏えいは企業にとって避けたいインシデントのひとつといえます。
セキュリティインシデントが発生すると、システムが停止し業務が続けられなくなるケースがあります。ネットワークが使えなくなれば受注処理や決済が滞り、店舗やオンラインサービスは大幅な売上減に直面します。また、停止している間に失われる機会損失も見過ごせません。復旧には原因の調査や安全性の確認が必要となり、数時間から数日以上かかることもあります。システムが使えない時間が長くなるほどコストは膨らみ、事業全体の運営に影響がおよびます。こうした損失は経営面での大きなリスクとして捉える必要があります。
セキュリティインシデントが起きると、短期的な損失にとどまらず、企業の信用やブランド価値にも長く影響します。情報漏えいが公表されると、顧客はサービスの利用を控えるようになり、新規契約も減少しやすくなります。場合によっては株価が下落し、投資家からの評価が下がることもあります。一度失われた信用を回復するには、継続的な安全対策の強化や透明性の高い情報公開など、時間とコストをかけた取り組みが必要です。ブランドの信頼性は企業活動の基盤になるため、信用の失墜は長期にわたり影を落とす重大なリスクといえます。
個人情報が漏えいすると、企業は法律に基づく責任を負うことがあります。個人情報保護法では、重大な漏えいが起きた際に迅速な報告や公表が求められ、対応が遅れれば行政処分の対象になることもあります。顧客への通知や補償、再発防止策の実施には大きな負担が伴い、損害賠償請求を受ける可能性も否定できません。海外との取引がある企業では、GDPR (EU一般データ保護規則) など国際基準の規制にも注意が必要です。違反時の罰金は最大で2000万ユーロまたは全世界年間売上高の4%で、日本円にすると約25億円以上に達する可能性があります。法令順守を徹底することは、企業経営にとって欠かせない取り組みです。
出典: 個人情報保護委員会ウェブサイト (PDF)
セキュリティインシデントは外部からの攻撃だけでなく、社内のミスやシステムの不備、さらには環境要因も影響します。主な原因は次の4つです。
外部からの攻撃は、セキュリティインシデントの中でも発生頻度が高い要因です。代表例のランサムウェアはデータを暗号化し、復旧と引き換えに金銭を要求する手口で、業務停止の大きな原因になります。標的型攻撃では、取引先を装った巧妙なメールが送られ、添付ファイルを開いた瞬間に内部へ侵入されるケースが目立ちます。また、大量のアクセスでサービスを止めるDDoS攻撃や、修正前の弱点を突くゼロデイ攻撃も深刻な脅威です。攻撃方法は年々高度化しており、企業規模に関係なく被害が広がっています。不審なメールへの注意や、システム更新を怠らないことが防御につながります。
セキュリティインシデントは、社内での小さなミスがきっかけになることも少なくありません。例えば、メールを誤って別の相手に送ってしまったり、不適切なファイルを添付したりするケースは日常的に起こり得ます。さらに、パソコンやUSBメモリーを紛失した結果、情報が流出する事例も後を絶ちません。中には、従業員が意図的にデータを持ち出すなど、悪意を伴う内部不正が発生することもあります。こうしたリスクを減らすには、ルールを理解して正しく行動できるよう、継続的な教育が必須です。併せて、扱える情報を必要最小限の人に絞る権限管理を徹底することで、ミスや不正の影響を抑えられます。
システムの基本的な設定ミスが原因で情報が外部に漏れてしまうケースも少なくありません。例えば、アクセス権を必要以上に広げていたり、クラウドサービスの公開範囲を誤って設定していたりすると、意図しない相手にデータが見えてしまうことがあります。また、OSやソフトウェアの脆弱性を放置すると、修正されていない弱点を攻撃者に悪用されるおそれが高まります。本来は、アップデートを適切に適用することで防げる問題も多く、日ごろの管理が重要です。システム設定の定期的な見直しと、脆弱性情報の継続的な確認を行うことで、セキュリティインシデント発生のリスクを大きく減らせます。
セキュリティインシデントは、外部攻撃だけでなく環境の変化によっても発生するものです。地震や停電などの災害はシステムを停止させ、業務が続けられなくなるおそれがあります。また、自社が利用するクラウドサービスで障害が起きた場合、原因を自社でコントロールできず、復旧まで待つしかない状況に追い込まれることもあるでしょう。さらに、外部の事業者で発生したトラブルが自社の業務に影響が及ぶケースも考えられます。こうしたリスクに備えるには、データのバックアップを確実に行い、代替手段を事前に用意しておくことが重要です。
セキュリティインシデントが起きた際は、冷静に次の流れに沿って対応を進めていきましょう。
セキュリティインシデントの疑いがあれば、最初にすべきことは被害の広がりを止める対応です。異常が出ている端末やシステムを確認し、感染の可能性がある機器は速やかにネットワークから切り離します。ほかの端末への拡散を防ぐため、最優先で行うべき作業です。併せて、後の調査に必要となるログや関連データを保全し、誤って削除されないよう注意します。状況を把握しないまま操作を進めると、証拠が失われたり復旧が遅れたりすることがあります。初動の質はその後の調査や再発防止に大きく影響するため、手順を平時から共有しておくことが安心につながります。
セキュリティインシデントの原因を突き止めるには、まずログや通信履歴を確認し、不審な操作が行われた時点を洗い出していきましょう。
より詳細な分析が必要な場合にはフォレンジック調査を行い、端末に残った痕跡から侵入経路や攻撃者の行動を再現するのと並行して、どのデータやシステムが影響を受けた可能性があるのかを整理し、被害の範囲を丁寧に把握していく姿勢が求められます。
調査が長期化しそうな場合や、専門的な設備が必要な状況では、外部の専門機関に依頼する判断も視野に入れましょう。特に情報流出の懸念があるケースでは、早めに支援を仰ぐことで適切な対応につながります。
セキュリティインシデントが確認された場合は、まず監督官庁への報告が必要かどうかを判断します。個人情報が含まれるケースでは、法律に基づく手続きが発生するため、早めの意思決定が必要です。その後、影響範囲を整理し、利用者や取引先への公表方法を検討します。事実と今後の対応を正確に伝えることで、不安を最小限に抑えられます。復旧の見通しや再発防止策を提示する姿勢が信頼の回復につながります。
システムが安全に動作できる状況を確認したら、バックアップを使って攻撃前の状態へ戻す工程に移ります。復旧の途中では、データの破損や不自然な動作が残っていないかを丁寧に確かめていきましょう。
その後は再発を防ぐため、原因に応じて設定を改めたり、新しい防御策を追加したりする必要があります。監視体制を見直すことで、異常を早期に捉えやすくなる点も重要です。
被害内容が複雑な場合は、専門機関へ助言を求めるほうが確実な判断につながります。復旧と改善を並行して進めることが、安定した業務再開に不可欠です。
セキュリティインシデントを防ぐための主な対策は、次の4つに整理できます。
これらを総合的に実践することで、日常的な備えから万一の対応までを見据えた、より強固なセキュリティ体制を築くことができるでしょう。
セキュリティインシデントを防ぐには、一つの仕組みに頼らず複数の防御を重ねる多層防御が有効です。外部からの不正通信を遮断するファイアウォールに加え、PCやサーバーなどのエンドポイントへの侵入や攻撃の兆候を早期に検知し対処するEDR (Endpoint Detection and Response) を導入すると、早い段階で異変に気付きやすくなります。さらに、ソフトウェアを常に最新の状態へ保つことも重要です。脆弱性が残されると攻撃者の標的になりやすく、被害拡大の要因になります。不要なアクセス権を整理し、利用者ごとの権限を適切に設定する取り組みも効果的です。攻撃を完全に防ぐことは難しいため、侵入を前提に備える姿勢が企業の防御力を底上げします。
セキュリティ強化を高めるうえで、従業員教育は重要な役割を担います。攻撃メールや偽装リンクの特徴を理解しておくことで、早い段階で異変に気づけます。
特に有効なのが、標的型攻撃を模したメール訓練です。実際に疑似メールを受け取る体験を通じ、危険な要素を自分の目で確認でき、判断の精度が上がります。訓練後にフィードバックを行えば、行動の改善点が明確になります。
加えて、情報の扱い方に関する社内規定を明確にし、全員が共通のルールで業務にあたることが重要です。教育とルール整備を並行して進めることで、組織全体のリスクを大きく減らせます。
脆弱性管理を適切に行うには、まず定期的な診断でシステムに潜む弱点を把握することが不可欠です。診断で見つかった問題は、アップデートを計画的に適用しながら解消していきます。更新を後回しにすると攻撃者に悪用されるおそれがあるため、優先順位をつけて進める姿勢が求められます。
併せて、端末やソフトウェアを整理し、社内にある資産を把握しておくことも大切です。どこにどのバージョンが使われているかが分かれば、更新漏れを防げます。
さらに、IPAなどが公開する脆弱性情報を定期的に確認し、新たなリスクを早めに把握することで、より安全な運用につながります。
セキュリティインシデントが発生した際に混乱を避けるためには、平常時から対応計画を整えておきましょう。代表的な仕組みが、組織内で役割と手順をまとめたCSIRT (シーサート) の設置です。誰が判断し、誰が外部へ連絡し、どの順序で復旧に取り組むのかを明確にしておくことで、緊急時でも行動がぶれにくくなります。
さらに、事業を継続するためのBCP (事業継続計画) を準備しておけば、システム停止が長引いた場合でも業務への影響を抑えやすくなります。計画を作るだけでなく、定期的に訓練を行い、実際に動けるかどうかを確認することも大切です。こうした取り組みを重ねることで、セキュリティインシデントに強い組織づくりにつながります。
セキュリティインシデントは一度発生すると、業務の停止や信用の低下など多方面に影響を与えます。そのため、早い段階から弱点を洗い出し、実効性のある対策を積み重ねることが重要です。技術的な仕組みを整えるだけでなく、従業員が正しい判断を取れるよう教育を行っておく必要があります。また、対応計画を準備しておけば、緊急時でも迷いなく動けるようになります。日常的な取り組みを継続し、セキュリティインシデントに強い組織づくりを実現しましょう。
高度化するサイバー攻撃に備えるためには、予防から監視、そしてインシデント発生後の対応まで、一貫した仕組みが求められます。KDDIの「マネージド ゼロトラスト」サービスなら、ネットワークや端末を多層的に守り、攻撃を受けても被害を最小限に抑える体制づくりを支援できます。専門チームによる運用サポートも受けられるため、セキュリティの強化を実現しやすくなります。自社にどのような対策が必要か悩んでいる場合は、ぜひKDDIにご相談ください。